皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
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皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
ジョン・アップダイク(1932-2009)は、20世紀後半のアメリカ文学を代表する小説家であり、詩人でもあります。ペンシルベニア州出身の彼は、ハーバード大学を卒業後、雑誌『ニューヨーカー』のライターとしてキャリアをスタートさせました。
彼の作品は、主にアメリカの中産階級の日常や家庭生活をテーマにしており、その鋭い観察眼と写実的な文体で、登場人物たちの心理を巧みに描き出しました。特に有名なのが、主人公ハリー・”ラビット”・アングストロームの生涯を追った「ウサギ」四部作です。このシリーズのうち『金持ちになったウサギ』と『さようならウサギ』で、ピュリッツァー賞を2度受賞するという快挙を成し遂げています。全米図書賞や全米批評家協会賞など数々の文学賞に輝き、現代アメリカ文学における巨匠としての地位を不動のものにしました。
ここからは、数あるジョン・アップダイクの作品の中から、特におすすめの小説をランキング形式で14作品ご紹介します。
彼の代表作である「ウサギ」シリーズはもちろん、男女の複雑な関係を描いたもの、歴史や神話を下敷きにしたものまで、その多彩な作風に触れることができるラインナップです。この記事を参考に、ぜひあなただけの一冊を見つけてみてください。
『走れウサギ』は1960年に発表された、アップダイクの代表作「ウサギ」四部作の記念すべき第1作目です。物語の主人公は、26歳のハリー・”ラビット”・アングストローム。彼はかつて高校バスケットボール界の花形選手でしたが、現在は退屈なセールスマンとして、妊娠中の妻との息苦しい生活を送っています。
ある日、衝動的に家を飛び出したウサギは、自由を求めてあてのないドライブに出ます。この作品は、1950年代のアメリカ社会に漂う閉塞感の中で、現状から逃れたいと願う一人の青年の焦燥感や葛藤をリアルに描き出し、大きな反響を呼びました。アップダイクの作家としての評価を決定的にした、戦後アメリカ文学の重要作です。
主人公のウサギには共感できないんだけど、なぜか目が離せないんだ。彼のダメなところが、逆に人間臭くて魅力的なのかな。
1963年に発表された『ケンタウロス』は、同年に全米図書賞を受賞したアップダイク初期の傑作です。この小説は、ペンシルベニア州の田舎町を舞台に、高校の理科教師である父ジョージと、15歳の息子ピーターの3日間の出来事を描いています。
作品の大きな特徴は、ギリシャ神話の物語が下敷きになっている点です。父は生徒のために自らを犠牲にするケンタウロスのケイローン、息子は父を盗み見るプロメテウスとして描かれ、現実と神話が交錯する独特の世界観が繰り広げられます。父と子の愛情や思春期の葛藤といった普遍的なテーマを、実験的な手法で描き出した意欲作です。
神話と現実が混ざり合う不思議な読書体験だったよ。父と子の関係っていう普遍的なテーマが、より深みを増している感じがしたな。
『メイプル夫妻の物語』は、一組の夫婦の出会いから離婚まで、20年以上にわたる軌跡を17の短編で綴った連作短編集です。個々の短編は1956年から発表されていましたが、一冊にまとめられたのは1979年です。
主人公はリチャードとジョーンのメイプル夫妻。彼らの結婚生活における喜び、愛情、すれ違い、裏切り、そして避けられない別れまでが、時間の経過とともに繊細かつ克明に描かれています。アップダイク自身の結婚生活が色濃く反映されているとも言われ、結婚という制度の複雑さと、男女の心の機微を鋭く描き出した傑作として高く評価されています。
夫婦の関係の変化がリアルすぎて、胸が苦しくなっちゃった…。でも、だからこそ心に残る物語なんだよね。
『帰ってきたウサギ』は、「ウサギ」シリーズの第2作で、前作『走れウサギ』から10年後の世界が描かれています。主人公のハリーは36歳になり、印刷工として働いていますが、彼の家庭もまた問題を抱えています。
この作品の背景にあるのは、ベトナム戦争や公民権運動、ヒッピー文化といった1960年代末のアメリカ社会の激動です。妻の不倫や家出してきた少女との同居など、混乱する社会情勢と自身の家庭問題に翻弄される中年男性の姿が描かれます。個人の物語を通して、時代そのものの肖像を映し出した作品です。
10年経ってもウサギは相変わらずだね。でも時代が彼をそうさせているのかもって思うと、すごく面白いよ。
「ウサギ」シリーズ第3作の『金持ちになったウサギ』は、1982年にピュリッツァー賞、1981年に全米図書賞と全米批評家協会賞を受賞し、主要な文学賞を制覇した傑作です。物語はさらに10年後の1979年、46歳になったハリーが主人公です。
義父の自動車販売店を継いで裕福な生活を手に入れたハリーでしたが、その心は満たされません。大学生の息子ネルソンとの世代間の対立や、妻との関係、そして忍び寄る老いの影。第2次オイルショックに揺れるアメリカ社会を背景に、社会的成功の裏に潜む空虚さや家族との新たな問題を抱える中年男性の悲哀が描かれています。
お金持ちになっても悩みは尽きないんだね。息子との対立は、どこの家庭にもありそうで考えさせられちゃったな。
1990年に発表された『さようならウサギ』は、ハリー・”ラビット”・アングストロームの人生を追った四部作の感動的な完結編です。この作品でアップダイクは、『金持ちになったウサギ』に続き、自身2度目となるピュリッツァー賞を受賞しました。
舞台はさらに10年後。56歳になったハリーは、フロリダで引退生活を送っていますが、心臓病を患い、自らの「死」と向き合うことになります。過去への後悔、息子との根深い確執、そして人生の終焉を前にした男の心境が、静かな筆致で深く描かれています。一人の男の人生を通して戦後アメリカの半世紀を描き切った、壮大な物語の終着点です。
ウサギの人生の終わり、シリーズを読んできたからすごく感慨深いよ。彼の人生って何だったんだろうって考えちゃうね。
『結婚しよう』は、1976年に発表された恋愛小説です。アメリカ東海岸の美しい町を舞台に、それぞれ家庭を持つ男女、ジェリーとサリーの不倫関係を描いています。
二人は互いのパートナーと別れて結ばれることを決意しますが、事態はそう簡単には進みません。この作品は、単なる不倫物語ではなく、結婚という制度や愛、貞節といったテーマを深く問い直す物語です。登場人物たちの心理的な駆け引きや会話劇が巧みで、男女関係の複雑さやもろさをリアルに描き出しています。
タイトルからは想像できない、結構ヘビーな不倫の話だったよ。登場人物たちの優柔不断さには、ちょっとイライラしちゃうかも。
『イーストウィックの魔女たち』は、1984年に発表されたファンタジー小説で、アップダイクの作品の中でも特に広く知られています。その知名度の高さは、1987年にジャック・ニコルソン主演で映画化されたことによるところが大きいでしょう。
物語の舞台は、ニューイングランドの小さな村イーストウィック。夫と離別・死別した3人の女性、アレクサンドラ、ジェーン、スーキーは、実は不思議な力を持つ魔女でした。ある嵐の夜、彼女たちが理想の男性を願うと、ダリル・ヴァン・ホーンと名乗る謎の男が現れます。彼の出現によって、3人の力は解放され、村中を巻き込むスキャンダルへと発展していきます。
魔女と悪魔が出てくるなんて、アップダイクの作品としては意外で楽しい!映画も有名だから、そっちから入るのもアリだね。
『クーデタ』は、1978年に発表された、アップダイク作品の中では異色の政治風刺小説です。舞台はサハラ砂漠の南に位置する架空のアフリカのイスラム国家「クシャーン」。
主人公は、アメリカへの留学経験を持つ独裁者のエレルー大統領です。物語は、冷戦下でアメリカとソ連という二大国に翻弄されながら、自国のアイデンティティを模索する国家と、その指導者の姿をコミカルかつシニカルに描いています。アメリカという国を外部の視点から描くことで、その文化や政治を相対化して見せる、知的な遊び心に満ちた一作です。
いつものアメリカ中産階級の話と全然違ってびっくりしたよ!アフリカの架空の国が舞台なんて、アップダイクの引き出しの多さを感じるな。
ジョン・アップダイクは長編小説だけでなく、「20世紀最高の短編作家」とも称されるほどの短編の名手でもあります。この『アップダイク自選短編集』は、その名の通り、作家自身が日本の読者のために14の短編を選んだ、特別な一冊です。
スーパーマーケットでの何気ない出来事を描いた「A&P」や、離婚した父と娘の旅を描く「ネヴァダ」など、彼のキャリアの中から選りすぐりの作品が収録されています。日常に潜む人間の心の機微を鮮やかに切り取るアップダイクの手腕を堪能できる、入門書としても最適な短編集です。
アップダイクは短編もすごく上手なんだね。一つ一つが短くても、読後感がしっかりあって満足度が高いよ。
1959年に発表された『同じ一つのドア』は、ジョン・アップダイクの記念すべき第一短編集です。収録された16の物語は、主に若いカップルや夫婦の日常に焦点を当てています。
何気ない会話やふとした出来事から生まれる心の揺れ動きや、関係性の微妙な変化を捉える観察眼は、この初期の作品ですでに確立されています。後の円熟した作風とはまた違う、若々しく瑞々しい感性が光る一冊。アップダイク文学の原点を知る上で欠かせない短編集と言えるでしょう。
デビュー短編集だけあって、すごくフレッシュな感じがしたよ。ここからあの「ウサギ」シリーズが生まれると思うと感慨深いな。
1994年に発表された『ブラジル』は、中世ヨーロッパの有名な悲恋物語『トリスタンとイゾルデ』の伝説を、現代のブラジルを舞台に大胆に翻案した長編小説です。
リオデジャネイロのコパカバーナ海岸で出会った、スラム街出身で黒人の青年トリスタンと、裕福な白人の娘イゾルデ。二人は人種や階級の壁を越えて、情熱的な恋に落ちます。運命に翻弄される恋人たちの姿を、ブラジルの躍動的な社会を背景に壮大なスケールで描いた、ロマンティックな一作です。
有名な悲恋物語が現代のブラジルで蘇るなんて、設定が面白いよね!情熱的な恋愛小説が読みたい人におすすめだよ。
『ガートルードとクローディアス』は、2000年に発表された、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『ハムレット』の前日譚を描いた小説です。物語は、ハムレットの母である王妃ガートルードと、叔父クローディアスの視点から語られます。
原作では悪役として描かれる二人が、いかにして惹かれ合い、不義の関係を結び、そして国王殺害へと至ったのか。その動機や人間的な葛藤に焦点を当て、『ハムレット』の物語に新たな深みと解釈を与えています。アップダイクの深い文学的教養が光る、知的なスピンオフ作品です。
『ハムレット』の悪役二人にこんな過去があったなんて!原作を知っていると、もっと楽しめること間違いなしだよ。
1959年に発表された『プアハウス・フェア』は、ジョン・アップダイクの長編デビュー作です。物語の舞台は、近未来のとある老人ホーム。年に一度開かれる慈善市「プアハウス・フェア」の日に、入居している老人たちと、理想主義的な若い施設長との間で対立が生まれます。
この作品では、世代間の価値観の相違や、管理社会への抵抗、そして老いと人間の尊厳といった、普遍的で重いテーマが扱われています。デビュー作ながら、その後のアップダイク作品に通じるテーマ性がすでに現れており、彼の作家としての出発点を知ることができる重要な一冊です。
デビュー作で老人ホームを舞台にするなんて、ちょっと意外だったな。でも描かれているテーマは、今の時代にも通じると思うよ。
もし、どの作品からジョン・アップダイクを読めばいいか迷ったら、まずは彼の代表作である「ウサギ」シリーズから手に取ることを強くおすすめします。このシリーズは、『走れウサギ』から始まり、『帰ってきたウサギ』、『金持ちになったウサギ』、そして『さようならウサギ』へと続く四部作です。
主人公ハリー・”ラビット”・アングストロームの26歳から56歳までの30年以上にわたる人生を追体験することで、読者は一人の男の生き様だけでなく、その背景にある戦後アメリカ社会の大きな移り変わりをも感じ取ることができます。ピュリッツァー賞を2度受賞したことからもわかるように、文学的評価も極めて高く、アップダイクの写実的な文体と深い人間洞察を最も堪能できるシリーズと言えるでしょう。
ここまで、ジョン・アップダイクのおすすめ小説をランキング形式でご紹介してきました。彼の作品は、アメリカのありふれた日常の中に、人間の普遍的な喜びや悲しみ、葛藤を巧みに描き出しています。
「ウサギ」シリーズで一人の男の人生とアメリカ社会の変遷を追体験するもよし、珠玉の短編で彼の繊細な観察眼に触れるもよし、あるいは歴史や神話を題材にした物語で彼の知性に驚かされるもよし。どの作品も、あなたをアメリカ文学の奥深い世界へと誘ってくれるはずです。ぜひこのランキングを参考に、気になる一冊を手に取ってみてください。