【2025年最新】ダフニ・デュ・モーリアのおすすめ小説ランキングTOP10

サスペンスの女王、ダフニ・デュ・モーリアの小説の魅力とは？おすすめ作品をランキングで紹介

「サスペンスの女王」と称されるイギリスの女性作家、ダフニ・デュ・モーリア（1907-1989）。彼女の作品は、アルフレッド・ヒッチコック監督によって映画化された『レベッカ』や『鳥』の原作としても世界的に有名です。祖父が画家兼作家、父が舞台俳優という芸術一家に生まれ、その才能を受け継いだデュ・モーリアは、数多くの傑作を世に送り出しました。

デュ・モーリア作品の最大の魅力は、巧みな心理描写から生まれる「スリルとサスペンスと切迫感」にあります。不安と恐怖に苛まれ、神経が張り詰めるような極限状態の人間の内面を鋭く描き出す手腕は、多くの読者を惹きつけてやみません。ゴシック・ロマンスの雰囲気が漂う長編から、人間の皮肉な心理を突く短編まで、その作風は多岐にわたります。決してハッピーエンドだけではない、人間の心の奥底を覗き込むような物語は、一度読んだら忘れられない強烈な印象を残すでしょう。

ダフニ・デュ・モーリアのおすすめ小説ランキングTOP10

ここからは、ダフニ・デュ・モーリアの数ある名作の中から、特におすすめしたい小説をランキング形式で10作品ご紹介します。

サスペンス、ゴシック・ロマンス、人間ドラマなど、多彩なジャンルの作品がランクインしました。まだデュ・モーリア作品を読んだことがない方も、次の一冊を探しているファンの方も、このランキングを参考に、ぜひ彼女の魅惑的な物語の世界に足を踏み入れてみてください。

1位『レベッカ』

ダフニ・デュ・モーリアの代名詞ともいえる不朽の名作『レベッカ』は、ゴシック・ロマンの金字塔として今なお多くの読者を魅了し続けています。1938年に発表され、巧みな心理描写と詩的な情景描写が高く評価されている作品です。

物語の主人公は、孤児で内気な若い女性「わたし」。彼女は、妻を亡くした裕福な英国貴族マキシムと出会い、彼の後妻として雄大な屋敷「マンダレイ」の女主人となります。しかし、そこは一年前に謎の死を遂げた、才色兼備の先妻レベッカの影が色濃く残る場所でした。屋敷のすべてを知る家政婦頭からの冷たい仕打ちや、見えないレベッカの存在に、「わたし」は次第に精神的に追い詰められていきます。

アルフレッド・ヒッチコック監督による映画版も世界的に有名ですが、原作ならではの息詰まるようなサスペンスと衝撃の結末は、ぜひ小説で味わってみてください。

2位『鳥 ―デュ・モーリア傑作集―』

アルフレッド・ヒッチコック監督による同名映画の原作としてあまりにも有名な表題作「鳥」を収録した傑作短編集です。この一冊で、デュ・モーリアの多彩な才能に触れることができます。

表題作「鳥」は、ある日突然、鳥たちが人間を襲い始めるという衝撃的なパニック・ホラー。主人公の農夫ナットは、家に立てこもり家族を守るために奮闘します。なぜ鳥たちが豹変したのか、その理由は一切語られず、じわじわと日常が崩壊していく恐怖が巧みに描かれています。映画版とは異なる、原作ならではの静かで不気味な恐怖をぜひ体験してください。

その他にも、哀切なラブストーリー「恋人」や奇妙な怪談「林檎の木」など、人間の心の闇や不可解な出来事を描いた珠玉の物語が収められています。

3位『いま見てはいけない』

デュ・モーリア後期の傑作5編を収めた短編集で、表題作はニコラス・ローグ監督の映画『赤い影』の原作としても知られています。日常が静かに狂っていく不条理な恐怖と、あっと驚く結末が魅力の一冊です。

表題作「いま見てはいけない」の舞台は、水の都ヴェネチア。幼い娘を事故で亡くし、悲しみに暮れる夫婦が、不思議な力を持つという老姉妹と出会ったことから物語は始まります。姉妹から「亡き娘が、夫の身に危険が迫っていると警告している」と告げられた夫婦。その予言をきっかけに、二人は幻想と現実が入り混じる悪夢のような出来事に巻き込まれていきます。

ヴェネチアの美しい風景とは裏腹に、全編にわたって不穏な空気が漂う心理サスペンスの傑作です。読み終えた後、タイトルの本当の意味に気づき、きっと鳥肌が立つことでしょう。

4位『レイチェル』

「もうひとつの『レベッカ』」とも称される、デュ・モーリアの傑作ゴシック・サスペンスです。謎に満ちた女性「ファム・ファタール（運命の女）」に翻弄される青年の物語で、その巧みな心理描写と息の詰まるような展開が高く評価されています。

主人公は、両親代わりだった従兄のアンブローズを深く敬愛する青年フィリップ。ある日、療養先のイタリアで結婚したはずのアンブローズが急死したとの報せが届きます。死の直前に受け取った手紙から、フィリップは従兄の妻レイチェルが彼を殺したのだと確信し、復讐を誓います。しかし、彼の前に現れたレイチェルは、知的で妖艶な魅力にあふれた女性でした。フィリップは憎むべき相手であるはずの彼女に、抗いがたく惹かれていきます。

果たしてレイチェルは、愛する人を死に追いやった悪女なのか、それとも無垢な未亡人なのか。最後のページまで読者の心を揺さぶり続ける、恋と疑惑の物語です。

5位『原野の館』

1936年に発表された、デュ・モーリア初期の傑作長編サスペンスです。物語の舞台は19世紀初頭、イギリス・コーンウォールの荒涼とした原野（ムーア）。作者自身がこの地にある実在の宿「ジャマイカ・イン」に滞在した経験からインスピレーションを得て執筆されました。

主人公は、母親を亡くし、たった一人の身内である叔母を頼って「ジャマイカ館」にやってきた若き女性メアリー。しかし、彼女を待っていたのは、荒くれ者の叔父におびえて暮らす叔母の痛ましい姿と、館に渦巻く邪悪な秘密でした。夜な夜な集まる怪しげな男たち、閉ざされた部屋から聞こえる物音……。メアリーは自らの危険を顧みず、館の謎を解き明かそうと決意します。

ゴシック小説の雰囲気あふれる不気味な館で、孤独なヒロインが陰謀に立ち向かう姿を描いた、手に汗握る冒険ロマンです。アルフレッド・ヒッチコック監督も『巌窟の野獣』のタイトルで映画化しています。

6位『スケープゴート』

「もし自分と瓜二つの人間に出会ったら？」という、古典的なテーマ「ドッペルゲンガー」を扱った傑作サスペンスです。デュ・モーリアならではの巧みな心理描写で、予測不能な物語が展開されます。

人生に虚しさを感じていたイギリス人の大学講師ジョンは、旅先のフランスで自分と寸分違わぬ姿をしたフランス人伯爵ジャンに出会います。意気投合し酒を酌み交わした翌朝、ジョンが目覚めるとジャンの姿はなく、身分を証明するものがすべて入れ替えられていました。なすすべもなく、ジョンは伯爵ジャンとして、彼の城で生活を始めることになります。

しかし、彼を待ち受けていたのは、経営難の工場と、不和と秘密に満ちた複雑な家族関係でした。孤独だったジョンは、偽りの家族に愛情を感じ始め、彼らのために奔走しますが、事態は思わぬ方向へと転がっていきます。他人の人生を生きることになった男の葛藤と運命を、スリリングに描いた一作です。

7位『人形 ―デュ・モーリア傑作集―』

デュ・モーリアが作家としてデビューする前の、若き日の才能がきらめく初期短編集です。表題作「人形」を含む14編が収録されており、平凡な日常に潜む人間の狂気や心の闇を鋭くえぐり出しています。

表題作「人形」は、デュ・モーリアが21歳の時に執筆した、ある男の異常な愛の物語。ここに登場する謎めいたヒロインの名前が、後の代表作と同じ「レベッカ」であることも興味深い点です。ほかにも、孤島を舞台にした「東風」や、俗物的な牧師を描きブラックユーモアが光る「いざ、父なる神に」など、多彩な物語が楽しめます。

人間の偽善や独善性をシニカルな視点で描き出す、デュ・モーリアの真骨頂ともいえる魅力が詰まった一冊。若き日の彼女が描く「魅力的な絶望」の世界に、ぜひ触れてみてください。

8位『破局』

人間の精神が限界点を迎え、崩壊していく瞬間を冷徹な筆致で描いた短編集です。原題は「The Breaking Point（限界点）」で、その名の通り、収録された物語の登場人物たちは、じわじわと精神的な「破局」へと追い詰められていきます。

例えば、退屈な日常から逃れるために殺人を計画する男を描いた「アリバイ」。目の手術後、他人が動物の顔に見えるようになってしまう女性の恐怖を描いた「青いレンズ」など、心理サスペンスや幻想小説のような味わいの作品が揃っています。

人間の心の脆さや狂気を描き出すデュ・モーリアの手腕が光る一冊で、どの物語も読後に重い余韻を残します。彼女の描くシビアな人間観察と、ぞっとするような結末を堪能したい方におすすめです。

9位『フランス人の入り江の家』

原題は『Frenchman’s Creek』（フランス人の入り江）で、日本では『情炎の海』などのタイトルでも知られています。

物語の主人公は、ロンドンの華やかだが空虚な社交界にうんざりしている貴族夫人のドナ。ある日、彼女は都会の喧騒を離れ、自然豊かなコーンウォールの別荘で過ごすことにします。そこで彼女は、知的で紳士的ながら、実は大胆不敵なフランス人の海賊と運命的な恋に落ちます。

退屈な日常を捨て、愛する人と共に海賊船で冒険の旅に出るという、情熱的でスリリングな物語は、多くの読者の心を掴みました。自由を求め、自らの意志で人生を切り開いていくヒロインの姿は、現代の私たちにも大きな魅力を感じさせます。

10位『埋もれた青春』

デュ・モーリアの初期の名作の一つで、スリルとサスペンスに満ちた物語です。邦題は『埋もれた青春』ですが、『原野の館』の原題と同じ「ジャマイカ・イン」というタイトルで紹介されることもあり、両作の関連性がうかがえます。

物語は、荒野にぽつんと建つ不気味な宿「ジャマイカ館」を舞台に、母親を亡くした若きヒロインが、館に隠された恐ろしい秘密と陰謀に巻き込まれていく姿を追います。霧深い不毛の湿地帯を背景に、愛する人への疑念に揺れ動きながらも、困難に立ち向かう彼女の強い意志が凛々しく描かれています。

デュ・モーリア作品特有のゴシックな雰囲気と、先の読めないハラハラする展開が魅力の一作です。ヒロインが最後にどのような選択をするのか、ぜひ見届けてください。

ダフニ・デュ・モーリアのおすすめ小説を読んで、ゴシック・ロマンスの世界に浸ろう

ここまで、ダフニ・デュ・モーリアのおすすめ小説をランキング形式でご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

彼女の作品は、単なる恋愛小説やミステリー小説という枠には収まりきらない、人間の心理の奥深くまで鋭く切り込む魅力を持っています。息をのむようなサスペンス、美しくもどこか不穏なゴシック・ロマンスの世界観、そして一度読んだら忘れられない強烈な余韻。これらすべてが、デュ・モーリアが「サスペンスの女王」と呼ばれる所以でしょう。

今回ご紹介した作品は、どれも彼女の世界観を存分に味わえる傑作ばかりです。秋の夜長に、ぜひ一冊手に取って、ダフニ・デュ・モーリアが紡ぎ出す魅惑の物語に浸ってみてください。