皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
【2025年最新】ハロルド・ピンターのおすすめ作品ランキングTOP10
PR
目次
ハロルド・ピンターとは？「不条理演劇」で知られるノーベル文学賞作家
ハロルド・ピンター（1930〜2008年）は、イギリスを代表する劇作家の一人です。日常的な会話の中に潜む人間の不安や、見えない脅威を巧みに描き出す作風で知られています。
彼の作品は「不条理演劇」というジャンルに分類されることが多く、サミュエル・ベケットやウジェーヌ・イヨネスコと並び称される存在です。2005年にはノーベル文学賞を受賞し、その功績は世界的に高く評価されています。
2005年にノーベル文学賞を受賞したイギリスの劇作家
ハロルド・ピンターは、1930年にロンドンの労働者階級の家庭に生まれました。第二次世界大戦中には空襲を避けて疎開を経験するなど、のちの作品に影響を与える出来事を体験しています。
もともとは俳優としてキャリアをスタートさせましたが、1957年に戯曲『部屋』で劇作家に転身。その後、『管理人』や『帰郷』といった作品で劇作家としての地位を確立しました。2005年、スウェーデン・アカデミーは彼にノーベル文学賞を授与すると発表し、「日常の対話の中に潜在する危機を晒し出し、抑圧された密室に突破口を開いた」とその功績を称えました。
ピンターに小説はほぼなく、主戦場は「戯曲」
「ハロルド・ピンターの小説を読んでみたい」と思う方もいるかもしれませんが、実は彼が残した作品のほとんどは戯曲（演劇の脚本）です。詩やエッセイ、映画脚本なども手掛けていますが、小説作品はほとんどありません。
そのため、この記事ではピンターの真骨頂である戯曲に焦点を当て、その魅力を存分に味わえるおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。彼の独特な世界観に触れることで、演劇の新たな面白さを発見できるでしょう。
ハロルド・ピンターのおすすめ戯曲ランキングTOP10
ここからは、ハロルド・ピンターのおすすめ戯曲をランキング形式でご紹介します。どの作品も、彼の特徴である不穏な空気感や、登場人物たちの心理的な駆け引きが光る名作ばかりです。
一見すると難解に思えるかもしれませんが、日常に潜む狂気や滑稽さを描いた彼の作品は、現代を生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれます。ぜひ、気になる作品から手に取ってみてください。
1位『背信』
『背信』は、ある男女の7年間にわたる不倫関係を、時間を遡りながら描くという斬新な構成で描かれた作品です。物語は関係の終わりから始まり、二人が初めて出会った頃へと遡っていきます。
普通の恋愛劇とは異なり、結末がわかっているからこそ、登場人物たちの何気ない会話や嘘、隠された感情がより一層際立ちます。人間の記憶の曖昧さや、関係性の脆さを見事に描き出した、ピンターの後期の代表作の一つです。
ふくちい時間を遡る構成が面白いよね。結末を知ってるから、セリフの重みが全然違って聞こえるんだ。
2位『管理人』
『管理人』は、ピンターの出世作であり、初期の代表作として知られています。物語は、ガラクタだらけの部屋に住む兄弟と、そこに転がり込んできた謎の老人を中心に展開されます。
親切に迎え入れられたはずの老人が、次第に兄弟の関係をかき乱し、立場が危うくなっていく様子が描かれます。登場人物たちの間で繰り広げられる縄張り争いや力関係の変化が、観る者に緊張感と滑稽さを与えます。日常空間に潜む脅威を描いた、まさにピンターらしい一作です。
ふくちい狭い部屋でのやり取りが息苦しいよ…。誰が味方で誰が敵なのか、最後までハラハラしちゃった。
3位『帰郷』
『帰郷』は、アメリカで成功した大学教授が、妻を連れてロンドンの実家に帰省するところから始まります。しかし、父と弟たちが暮らすその家は、異様な緊張感に包まれていました。
男ばかりの家庭に現れた妻の存在が、家族の中に渦巻く欲望や権力関係を剥き出しにしていきます。家庭という閉鎖的な空間で繰り広げられる激しい心理戦は圧巻で、ピンターの名声を不動のものにした作品です。
ふくちい家族って何だろうって考えさせられる作品だよ。奥さんの最後の決断には、本当にびっくりしたな…。
4位『誕生日パーティー』
海辺の下宿屋で静かに暮らす男のもとに、ある日突然、謎の二人組の男が現れます。彼らは、なぜか男の誕生日を祝うと言い出し、不気味で滑稽なパーティーが始まります。
『誕生日パーティー』は、平和な日常が、外部からの侵入者によって脅かされていく恐怖を描いた作品です。登場人物たちの会話は噛み合わず、観客は理由のわからない不安に引きずり込まれていきます。ピンターの初期の傑作であり、彼の作風を理解する上で欠かせない一作です。
ふくちいわけがわからないまま怖くなっていくのがたまらない！不条理演劇の入門におすすめだよ。
5位『料理昇降機』
地下の一室で、二人の殺し屋が仕事の指示を待っています。部屋にはベッドと、壁には「料理昇降機（ダム・ウェイター）」と呼ばれる小さな昇降機があるだけ。静寂の中、突如として昇降機が動き出し、奇妙な料理の注文が次々と舞い込んできます。
『料理昇降機』は、二人芝居というミニマルな設定の中で、見えない誰かからの不条理な指示に翻弄される男たちの姿を描いています。閉鎖された空間で高まっていく緊張感と、ユーモラスでありながらも不気味な展開が魅力の作品です。
ふくちい殺し屋2人の会話が面白いんだけど、だんだん怖くなってくるんだよね。あのラストは忘れられないな。
6位『温室』
『温室』の舞台は、国が運営する謎の療養施設です。ある日、患者の一人が死亡し、別の患者が出産するという事件が起こります。施設の責任者は職員たちを問い詰めますが、事態は奇妙な方向へと進んでいきます。
この作品は、権力構造の中で人々が人間性を失っていく様子を、ブラックユーモアを交えて描いています。官僚的な組織の不条理さや、そこで行われる暴力性を風刺した、ピンターの社会的な側面が垣間見える一作です。
ふくちい組織の怖さを感じる作品だったな。笑えるのに、よく考えるとすごく恐ろしいことをしてるんだよね。
7位『灰から灰へ』
一人の男と一人の女が室内で会話をしています。女は、過去に体験した恐ろしい出来事を断片的に語り始めますが、男にはその話がうまく掴めません。
『灰から灰へ』は、個人の記憶と、ホロコーストのような歴史的な惨劇の記憶が交錯する、非常に詩的で難解な作品です。直接的な描写を避けながらも、暴力の記憶が個人の精神に深く刻み込まれていることを描き出しています。ピンター後期の代表作の一つです。
ふくちい本作における登場人物の対話は、歴史の暗部と個人の内面世界が複雑に絡み合う構造を浮き彫りにする。その語りの断片性からは、トラウマの不可視性と伝達不可能性という主題が冷徹に提示されている。
8位『山の言葉』
舞台は、ある国の刑務所。そこでは、囚人たちが自分たちの母語である「山の言葉」を話すことを禁じられています。女たちは、収監されている夫や息子に会うために面会に訪れますが、看守たちに厳しい監視下に置かれます。
『山の言葉』は、言語の剥奪というテーマを通じて、国家による抑圧や権力の非人間性を鋭く告発した作品です。短い戯曲ながら、非常に強い政治的なメッセージが込められており、人権活動家としての一面も持つピンターの姿勢が色濃く反映されています。
ふくちい言葉を奪われることが、どれだけ人の尊厳を傷つけるか突きつけられるよ。短いけど、すごく心に残る作品だな。
9位『景気づけに一杯』
ある部屋で、ニコラスという男が反体制派の人物を尋問しています。彼はウィスキーを飲みながら、饒舌に、そして執拗に相手をいたぶります。
『景気づけに一杯』は、国家による拷問というテーマを扱いながらも、その暴力的な場面を直接的には描きません。拷問者であるニコラスの饒舌な語りや、彼自身が抱える怯えを通して、権力がいかに人間を歪ませるかを暗示しています。ピンターの政治色の強い作品の一つです。
ふくちい直接的な暴力がないのに、すごく怖いんだよね。言葉だけでじわじわ追い詰められる感じがたまらないよ。
10位『誰もいない国』
裕福な文学者ハーストの屋敷に、彼が偶然出会ったみすぼらしい男スプーナーが訪れます。二人は酒を酌み交わしながら、過去の記憶や文学について語り合いますが、その話はどこか噛み合いません。
『誰もいない国』は、記憶の不確かさや老い、孤独といったテーマを扱った作品です。登場人物たちの会話は、現実と幻想の間をさまようようで、観る者を不思議な感覚に誘います。ピンターの代表作の一つとして、高く評価されています。
ふくちい夢の中を見ているような気分になる作品だったな。おじいさん2人の会話が、切なくてちょっと面白いんだよね。
ハロルド・ピンターの作風を読み解く2つのキーワード
ハロルド・ピンターの作品は、一見すると不親切で分かりにくいと感じるかもしれません。しかし、彼の作風を特徴づけるいくつかのキーワードを知ることで、その世界の奥深さをより楽しむことができます。
ここでは、ピンターの戯曲を読み解く上で特に重要な「脅威のコメディ」と「ピンタレスク」という2つの言葉について解説します。
日常に潜む恐怖を描く「脅威のコメディ」
ピンターの初期の作品は、しばしば「脅威のコメディ（Comedy of Menace）」と呼ばれます。これは、ごく普通の日常的な状況や会話の中に、突如として不穏な空気が流れ込み、登場人物や観客が潜在的な脅威を感じる、というスタイルのことです。
例えば、『誕生日パーティー』のように、見知らぬ訪問者によって平和な日常が破壊されたり、『管理人』のように、善意で招き入れた人物が脅威に変わったりします。笑えるのにどこか怖い、怖いのにどこか滑稽。そんな独特の感覚が、ピンター作品の大きな魅力の一つです。
沈黙と間が雄弁に語る「ピンタレスク」
ピンターの作風は非常に個性的であるため、「ピンタレスク（Pinteresque）」という言葉まで生まれました。この言葉が示す特徴の一つが、セリフの合間に頻繁に現れる「沈黙」や「間」の巧みな使い方です。
彼の戯曲では、登場人物が語らない時間、つまり沈黙が、言葉以上に雄弁な意味を持つことがあります。気まずさ、隠された敵意、言外の駆け引きといった、言葉にならない感情や関係性が「間」によって表現されるのです。この独特のリズムが、ピンター作品に特有の緊張感と深みを与えています。
まとめ：ハロルド・ピンターの戯曲で不条理演劇の世界に触れてみよう
この記事では、2005年にノーベル文学賞を受賞したイギリスの劇作家、ハロルド・ピンターのおすすめ作品をランキング形式でご紹介しました。
彼の作品は、小説ではなく戯曲が中心ですが、そのテキストは読むだけでも十分に楽しめます。日常に潜む不条理や、言葉にならない人間の心理を巧みに描き出すピンターの世界は、一度ハマると癖になる魅力を持っています。
今回ご紹介した作品をきっかけに、ぜひ「不条理演劇」の奥深い世界に足を踏み入れてみてください。きっと、これまでにない新しい読書体験があなたを待っているはずです。