皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
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皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
莫言(ばく げん/モー・イエン)は、1955年生まれの中華人民共和国の作家です。本名は管謨業(かん ぼぎょう)といい、「莫言」というペンネームは「言う莫(なか)れ」という意味を持っています。おしゃべりだった彼を心配した母親の忠告から、自戒を込めてこの名を付けたと言われています。2012年には、「幻覚的なリアリズムによって民話、歴史、現代を融合させた」として、中国籍の作家として初めてノーベル文学賞を受賞しました。
彼の作品の多くは、自身の故郷である山東省高密市を舞台にしています。文化大革命による小学校中退や、その後の工場勤務、軍隊生活といった経験が、彼の創作の礎となっています。中国の伝統的な語り口と西洋の現代文学の手法を融合させ、土の匂いがするような力強い筆致で、中国の農村に生きる人々の現実や激動の歴史を描き出すのが特徴です。その作風は「尋根文学」や「魔術的リアリズム」と評され、世界中の読者を魅了し続けています。
ここからは、現代中国文学の巨匠・莫言のおすすめ小説をランキング形式でご紹介します。
デビュー作にして代表作のあの名作から、中国の激動の歴史を描いた大作、そしてユニークな設定が光る作品まで、彼の多彩な魅力に触れられるラインナップです。ぜひ、あなたのお気に入りの一冊を見つけてみてください。
『赤い高粱』は、1986年に発表され、彼の名を世界に知らしめた代表作です。1920年代から30年代の中国山東省高密県を舞台に、抗日戦争の時代を背景として、ある一族の愛と闘争の歴史が力強く描かれています。
この作品の大きな特徴は、生命力に満ち溢れた土着的で荒々しい世界観です。語り手である「私」の祖父と祖母を中心とした物語は、血と硝煙の匂いが立ち込めるような激しい描写と、どこか神話的な雰囲気が融合しています。1987年には張芸謀(チャン・イーモウ)監督によって映画化され、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したことでも有名です。
これぞ莫言文学の原点だね!物語のエネルギーに圧倒されて、一気にファンになっちゃったよ。
『豊乳肥臀』は、1996年に発表された長編小説で、莫言の代表作の一つに数えられる壮大な物語です。物語は、多くの子供を産んだ偉大な母・上官魯氏と、その末っ子で乳房に異常な執着を持つ金童を中心に、20世紀の中国が経験した激動の歴史を描き出します。
この作品は、その赤裸々な性描写や政治的な内容から、中国では一時期発禁処分を受けたことでも知られています。しかし、それは同時に、戦争や革命に翻弄されながらもたくましく生きる人々の生命力を称える、力強い人間賛歌でもあります。母親の愛と苦難を通して中国の百年史を語るという、圧倒的なスケールを持った作品です。
お母さんの偉大さと生命力にただただ圧倒されたよ…。歴史の重みを感じて、涙が出ちゃった。
『白檀の刑』は、2001年に発表された長編小説で、その衝撃的な内容と独特の語り口で高い評価を得ています。物語の舞台は清朝末期の中国。ドイツの鉄道敷設に反対して蜂起した民衆と、それを取り締まる役人、そして伝説的な処刑人である主人公の運命が、残酷で美しい「白檀の刑」を軸に描かれます。
この小説の最大の特徴は、地方劇「猫腔」の歌い手や処刑人など、複数の視点から物語が語られる点です。特に、音や匂いといった感覚的な描写が際立っており、読者はまるで芝居を観ているかのような臨場感とともに、官能と残酷さが入り混じる世界に引き込まれます。凄惨な処刑の描写がありながらも、芸術的な高みへと昇華された傑作です。
本作における残酷な刑罰の克明な描写は、人間の尊厳というテーマを浮き彫りにするための必然的な手法と言わざるを得ない。
『蛙鳴(あめい)』は、2009年に発表され、2011年に中国で最も権威のある文学賞の一つである茅盾文学賞を受賞した長編小説です。この作品は、中国が長年実施してきた「一人っ子政策」という非常にデリケートなテーマに正面から向き合っています。
物語は、主人公の劇作家が、産婦人科医として多くの生命を取り上げ、同時に政策のために中絶手術も行ってきた叔母の生涯を振り返る形で進みます。新しい生命の誕生を喜びながらも、国の政策との間で引き裂かれる人々の苦悩や葛藤が、リアルかつ深く描かれています。生命倫理という重いテーマを扱いながらも、莫言ならではのユーモアと人間味あふれる筆致で、読者を引き込む力を持った社会派小説です。
一人っ子政策の光と影がリアルだったな。生命の重さについて、すごく考えさせられちゃったよ。
1993年に発表された『酒国』は、莫言作品の中でも特に実験的な作風で知られる長編小説です。物語は、高級料理として「嬰児の丸焼き」が食べられているという噂を調査するために、「酒国」と呼ばれる都市に派遣された特捜検事の視点で進みます。
この小説のユニークな点は、検事の捜査報告、酒国の大学院生と莫言自身との書簡、そしてその大学院生が書いた小説という、3つの異なるテクストが入れ子構造になっていることです。現実と虚構が入り混じり、読者は迷宮のような物語世界に迷い込みます。腐敗した官僚社会への痛烈な風刺と、ブラックユーモアに満ちた、他に類を見ない作品です。
現実と小説が混ざり合う感覚がたまらないんだ。ちょっと頭を使うけど、それがまたクセになるよ。
『転生夢現』(原題:生死疲労)は、2006年に発表された長編小説です。物語は、土地改革運動の中で無実の罪で銃殺された地主・西門鬧(せいもんなお)が、閻魔大王に訴え、ロバ、牛、豚、犬、猿、そして人間へと何度も生まれ変わりながら、20世紀後半の中国農村の変遷を見つめ続けるという奇想天外な設定です。
動物の視点から描かれることで、人間の愚かさや社会の矛盾がユーモラスかつ痛烈に描き出されます。仏教の輪廻転生の思想をベースに、中国の50年以上にわたる歴史を壮大なスケールで語りきったこの作品は、莫言の豊かな想像力と語りの巧みさが存分に発揮された傑作と言えるでしょう。
動物に生まれ変わって歴史を見るなんて、発想がすごすぎる!壮大なのにユーモラスで、一気に読んじゃったよ。
『白い犬とブランコ』は、莫言自身が選んだ10編の短編を収めた傑作選です。初期の作品から円熟期の作品まで、彼の作風の変遷と幅広さを一度に味わうことができる一冊となっています。
表題作の「白い犬とブランコ」をはじめ、収録されている作品はどれも、故郷・高密県東北郷を舞台に、そこに生きる人々の喜怒哀楽を鮮やかに描き出しています。莫言文学の根底に流れる、土着的な力強さや、人間のどうしようもない可笑しみと哀しみが凝縮されています。長編小説は少しハードルが高いと感じる方にも、莫言入門としておすすめの短編集です。
どの話も個性的で面白いんだ。莫言の世界観を手軽に味わえるから、入門にぴったりだよ。
『透明な人参』は、1985年に発表された中編小説で、莫言が作家としての地位を確立した初期の代表作です。この作品は、孤独な少年「黒孩子」の視点を通して、彼の研ぎ澄まされた感覚の世界を描き出しています。
物語は、ダム建設の現場で働く少年が経験する出来事を追いますが、現実の出来事と少年の内面世界や幻想が入り混じった、幻想的なリアリズムが特徴です。特に、音や色、匂いといった感覚的な描写が非常に豊かで、読者は少年の鋭敏な感性を追体験することになります。莫言の文体の独創性が際立つ、詩的で美しい一編です。
主人公の少年の感覚がすごく鋭敏で、不思議な世界に引き込まれたな。切ないけど、とても美しい物語だよ。
『変』は、ノーベル文学賞受賞後に発表された、莫言の自伝的要素が色濃い中編小説です。物語は、主人公が子供時代から現代に至るまで、故郷の友人や学校、そして彼自身が経験した中国社会の劇的な「変化」を、淡々とした筆致で描いていきます。
トラクターが高級車に変わり、質素だった食事が豪華な宴会になるなど、具体的なエピソードを通して、改革開放以降の中国が遂げた急激な経済発展とその光と影を映し出します。個人的な思い出を語りながら、同時に一つの時代の証言ともなっている、味わい深い作品です。
昔と今の違いにびっくりしちゃった。中国の急激な変化が、個人の視点からわかってすごく面白いよ。
『牛 築路』は、表題作の「牛」と「築路」という二つの中編小説を収録した作品集です。どちらの作品も、莫言の故郷である山東省高密県を舞台にしており、彼の文学の原点ともいえる世界が広がっています。
「牛」では、文化大革命の時代を背景に、牛と少年の交流を通して、当時の農村の過酷な現実と、その中で失われない純粋な心が描かれます。「築路」は、道路建設に情熱を燃やす男の姿を通して、近代化へと向かう中国の姿とその裏にある人間の欲望を映し出します。どちらも、莫言らしい土の匂いと生命力に満ちた物語です。
昔の中国の農村って、こんな感じだったのかな。力強く生きる人々の姿が、すごく印象に残ったよ。
『至福のとき』は、表題作を含む3つの中短編を収めた作品集です。この表題作は、映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)によって『至福のとき』(原題:幸福時光)として映画化されたことでも知られています。
物語は、定年退職した男が、金持ちのふりをして婚活をし、その過程で盲目の少女と出会うという人情喜劇です。嘘から始まった関係が、やがて本物の愛情へと変わっていく様子が、ペーソスとユーモアたっぷりに描かれています。莫言作品に特徴的な荒々しさとは一味違った、温かい読後感を味わえる一冊です。
切ないけど、すごく心温まる物語だったな。嘘から生まれた優しさに、じんわり感動しちゃったよ。
『続 赤い高粱』は、その名の通り、莫言の代表作『赤い高粱』の続編にあたる作品群を収めた一冊です。前作に続き、日中戦争下の壮絶な物語が描かれています。日本軍への奇襲の報復により村が壊滅し、生き残った一族が共産党軍、国民党軍、傀儡軍などが入り乱れる中で生き抜く姿が描かれています。
前作の持つ神話的な力強さとは少し趣が異なり、より現実的な政治の波に翻弄される人々の姿が印象的です。しかし、どんな困難な状況でも失われない生命力や、家族の絆といったテーマは健在です。『赤い高粱』を読んで魅了された方は、ぜひ続けて手に取ってほしい作品です。
あの家族のその後が読めてよかった!時代の波に立ち向かう姿に、また心を掴まれちゃったよ。
『四十一炮』は、2003年に発表された長編小説です。物語は、肉屋の息子である主人公の少年が、村のしきたりや大人たちの世界に反発しながら成長していく姿を、彼の一人称の語りを通してエネルギッシュに描いていきます。
この作品は、子供の視点から見た世界の不思議さや、改革開放初期の農村における新旧の価値観の衝突、そして人間の飽くなき食欲や欲望が、莫言ならではのユーモアと誇張に満ちた筆致で語られます。残念ながら2025年現在、日本語訳は刊行されていませんが、莫言のパワフルな語りの魅力を存分に味わえる一作として知られています。
子供の目から見た大人の世界って、本当に滑稽だよね。日本語で読める日が待ち遠しいな!
『天堂狂想歌』(原題:天堂蒜薹之歌)は、1988年に発表された長編小説です。この作品は、実際に起きたニンニクの価格暴落をきっかけとする農民の暴動事件を題材にしています。役人の腐敗や理不尽な社会システムに追い詰められた農民たちの怒りや絶望が、圧倒的なリアリティで描かれています。
物語は、暴動に関わった人々の視点が交錯しながら進み、彼らがなぜ蜂起せざるを得なかったのかを浮き彫りにしていきます。社会の矛盾を鋭く告発する力強いメッセージ性と、民謡を取り入れたリズミカルな文体が特徴的な、社会派エンターテイメント作品です。
農民たちの怒りの爆発には、胸が締め付けられたよ。社会の理不尽さについて、深く考えさせられる作品だね。
『疫病神』は、莫言の多彩な魅力を堪能できる中短編集です。収録された作品は、時代もテーマも様々で、彼の作家としての引き出しの多さを感じさせます。
表題作「疫病神」では、ある村にやってきた謎の男をめぐる騒動がユーモラスに描かれます。他にも、歴史的な出来事を背景にした重厚な物語から、日常に潜む不思議な出来事を描いた軽妙な話まで、バラエティ豊かなラインナップが揃っています。どの作品からも、人間という存在への温かくも鋭い眼差しが感じられる、読み応えのある一冊です。
一冊で色々な莫言が楽しめるのが良いね。次に読む長編を選ぶためのお試しにもぴったりだよ。
『遅咲きの男』(原題:晩熟的人)は、莫言がノーベル文学賞を受賞した後に発表された中短編集です。この作品集の大きな特徴は、「莫言」というノーベル賞作家本人が、各作品の中に登場人物として現れることです。
故郷に帰った「莫言」のもとに、彼の名声にあやかろうとする人々が次々と現れます。彼らとの交流を通して、現代中国社会が抱える虚栄心や拝金主義、そして変わらない人間の業が、皮肉とユーモアを交えて描かれます。大作家となった自身を客観的に、そしてコミカルに描くセルフパロディの精神に満ちた、ユニークな作品集です。
作者本人が登場するなんてユニークだよね!有名になるのも大変なんだなって、思わず笑っちゃったよ。
『犬について、三篇』は、その名の通り、「犬」をテーマにした3つの短編を収録した作品集です。莫言の作品には、牛やロバなど様々な動物が登場しますが、この本では犬が重要な役割を果たします。
収録されているのは、犬の視点から人間社会を眺める物語や、人間と犬の深い絆を描いた物語などです。動物を通して人間の本質を映し出すという、莫言の得意な手法が光ります。犬好きの方はもちろん、動物と人間の関係性に興味がある方にもおすすめできる、心温まる一冊です。
犬の目から見ると、人間ってどう映るんだろう?そんなことを考えながら読むのが楽しかったよ。
『花束を抱く女』は、莫言の初期から中期にかけての短編を集めた作品集です。収録作品の多くは、彼の故郷である高密県の農村を舞台にしており、そこに生きる人々の日常や、少し不思議な出来事が描かれています。
表題作「花束を抱く女」は、毎日花束を抱いてバス停に立つ謎の老女をめぐる物語です。素朴な筆致の中に、人間の孤独や記憶、そして優しさが滲み出るような、味わい深い作品が揃っています。莫言文学の根底に流れる、人間への温かい眼差しを感じることができる短編集です。
派手さはないけど、心に残る話ばかりだったな。読んだ後、じんわり温かい気持ちになれるよ。
『中国の村から』は、1991年に日本で出版された、莫言の初期短編を集めた作品集です。
文化大革命の記憶や、近代化の波が押し寄せる農村の姿など、80年代の中国が抱えていた空気感が色濃く反映されています。荒削りながらも、後の大作家の才能のきらめきを随所に感じることができる一冊です。莫言の創作のルーツを探る上で、非常に興味深い作品集と言えるでしょう。
若い頃の作品を読むと、作家の原点が見える気がするね。ここからあの壮大な物語が生まれたんだなあって感慨深いよ。
ここまで、ノーベル文学賞作家・莫言のおすすめ小説をランキング形式でご紹介してきました。彼の作品は、故郷の風土に根ざしながら、中国の激動の歴史と、そこで生きる人々のたくましい生命力を鮮やかに描き出しています。
「幻覚的リアリズム」と評される独特の作風は、時に荒々しく、時にユーモラスで、私たち読者を圧倒的な物語の世界へと引き込んでくれます。この記事を参考に、ぜひ現代中国文学の巨匠が紡ぎ出す、力強く豊かな物語の世界に触れてみてください。