皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
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皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
ジョン・チーヴァー(1912-1982)は、アメリカ文学を代表する小説家の一人です。特に、アメリカ東部の郊外を舞台に、中流階級の人々の生活やその裏に潜む人間模様を描いた短編小説で高い評価を得ています。その鋭い人間観察と洗練された文体から、「郊外のチェーホフ」と称されることもあります。
J・D・サリンジャーと同時代に雑誌『ザ・ニューヨーカー』などで活躍し、都会的で洗練された作風で人気を博しました。彼の作品は、一見すると平穏な日常の中に、人間の二面性や失われゆくものへの郷愁といった普遍的なテーマを織り込んでいます。1957年に発表した長編『ワップショット家の人びと』は、翌1958年に全米図書賞を受賞し、1979年にはピュリッツァー賞を受賞するなど、数々の文学賞に輝いています。
今回は、そんな「郊外のチェーホフ」、ジョン・チーヴァーの数ある名作の中から、特におすすめしたい小説をランキング形式で5作品ご紹介します。
短編集から重厚な長編まで、チーヴァーの魅力が詰まったラインナップとなりました。彼の描く、ユーモアと哀愁に満ちた世界を存分に楽しんでください。
ジョン・チーヴァー入門の決定版としてまずおすすめしたいのが、村上春樹氏が自ら選んで翻訳した傑作短編集『巨大なラジオ/泳ぐ人』です。チーヴァーのキャリアを代表する珠玉の短編が収められており、彼の世界観を手軽に、かつ深く味わうことができます。
表題作の一つ「巨大なラジオ」は、購入した新しいラジオがアパートの隣人たちの会話を拾ってしまう、という奇妙な設定の物語です。平凡な夫婦の日常が、他人の秘密を覗き見ることで少しずつ歪んでいく様は、まさにチーヴァーの真骨頂と言えるでしょう。もう一つの表題作「泳ぐ人」は、近所のプールを泳いで家に帰ろうとする男の、ひと夏の冒険を描いた物語。爽やかな始まりから一転、彼の人生のほろ苦い真実が明らかになっていく展開が見事です。
日常に潜む狂気がゾクゾクするほど面白いんだ。チーヴァーの魅力がぎゅっと詰まった一冊だよ!
チーヴァー初の長編小説にして、1958年の全米図書賞に輝いた不朽の名作が『ワップショット家の人びと』です。この作品でチーヴァーは、短編の名手としてだけでなく、偉大な長編作家としての地位も確立しました。
物語の舞台は、マサチューセッツ州の古びた港町セント・ボトルフス。そこで暮らすワップショット家という風変わりな一族の年代記が、ユーモアとペーソスたっぷりに描かれます。船長の父リアンダー、しっかり者の母サラ、そして個性的な二人の息子たちが織りなす家族の物語は、どこか懐かしく、そして深く胸に響きます。時代の流れと共に変わりゆくアメリカの姿と、それでも変わらない家族の絆を描いた、心温まる大河小説です。
家族って色々あるけど、やっぱりいいなって思わせてくれる作品だね。お父さんの遺言には、思わず泣いちゃった…。
1977年に発表された『ファルコナー』は、チーヴァーの作品群の中でも異彩を放つ長編小説です。これまでの郊外や古き良き町を舞台にした作品とは打って変わって、物語のほとんどが刑務所の中で展開します。
主人公は、兄殺しの罪でファルコナー刑務所に収監された大学教授ファラガット。彼は薬物中毒者でもあります。絶望的な状況の中で、彼がどのように自己と向き合い、人間の尊厳を取り戻そうとするのかが、力強い筆致で描かれます。チーヴァー自身のアルコール依存症などの経験も反映されていると言われ、そのリアリティは圧巻の一言。人間の魂の再生を描いた、重厚で感動的な傑作です。
本作における極限状況下での人間性の探求は、読者の倫理観を鋭く揺さぶる。その筆致は冷徹でありながら、一条の光をも感じさせる。
『ワップショット家の人びと』の続編として1964年に発表されたのが、この『ワップショット家の醜聞』です。前作から数年後、それぞれの道を歩み始めたワップショット家の兄弟、カヴァリーとモーゼスが直面する人生の試練と家族の崩壊を描いています。
前作のノスタルジックで温かい雰囲気とは異なり、本作はよりダークで風刺的な色合いが濃いのが特徴です。兄弟それぞれの結婚生活の危機や、一家の長老であるオノーラ叔母さんが引き起こす脱税騒動などを通して、変わりゆくアメリカ社会の歪みや人々の孤独が痛烈に描き出されます。2つの作品を続けて読むことで、チーヴァーの描く世界の奥行きをより深く感じることができるでしょう。
幸せだった一家が壊れていくのが切ないな…。前作が好きだからこそ、読んでいて動揺しちゃうよ。
1969年に発表された『ブリット・パーク』は、チーヴァーが得意とする郊外を舞台にした長編小説です。一見すると平和で裕福なこの町に、ポール・ハマーと名乗る謎の男が越してくるところから物語は始まります。
もう一人の主人公であるエリオット・ネイルズは、ごく普通の家庭人ですが、息子との関係に悩んでいます。この二人の男の運命が交錯するとき、郊外の日常に隠されていた狂気が牙をむきます。物語は、ハマーがネイルズの息子を殺害しようと計画する、という衝撃的な展開を迎えます。アメリカ郊外の生活に潜む空虚さや偽善を、サスペンスフルに描き出した問題作です。
平和な町に潜む悪意って、一番怖いテーマかもしれないね。人間の心の闇を覗きたい時にぴったりの一冊だよ。
ジョン・チーヴァーの小説は、アメリカの郊外に住む人々の、ありふれた日常を切り取っています。しかし、その中には、誰もが共感できる喜びや悲しみ、そして目を背けたくなるような人間の本質が、鮮やかに描き出されています。
彼の洗練された文章は、読む者を物語の世界に引き込み、登場人物たちの心の機微を鋭く伝えてくれます。今回ご紹介した5作品は、そんなチーヴァーの魅力を知るための素晴らしい入り口となるはずです。ぜひ、あなたのお気に入りの一冊を見つけて、その奥深い文学の世界に浸ってみてください。