日本を代表する作家・村上春樹。その独特の世界観と比喩表現で、国内外に多くのファンがいます。 しかし作品数が多く、どれから読めばいいか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、小説ヨミタイ編集部が厳選した村上春樹のおすすめ小説30作品をランキング形式でご紹介します。 初心者向けの読みやすい作品から、ハルキストも唸る名作まで、あなたにぴったりの一冊がきっと見つかるはずです。
村上春樹とは?
村上春樹は、1949年1月12日、京都府生まれの小説家・翻訳家です。 早稲田大学在学中にジャズ喫茶を開業し、1979年に『風の歌を聴け』で第22回群像新人文学賞を受賞しデビューしました。
デビュー以来、数多くの長編小説、短編小説、エッセイ、翻訳作品を発表し、その作品は50か国以上で翻訳されています。 日本国内だけでなく、世界中に熱心な読者を持つ、現代日本を代表する作家の一人です。
村上春樹作品の特徴や人気の理由
村上春樹作品の最大の魅力は、日常と非日常が巧みに交錯する独特の世界観にあります。 何気ない日常の風景から、井戸の底や不思議なホテル、ふたつの月が浮かぶ世界など、現実離れした場所へと読者を誘います。
また、ウィットに富んだ会話や、心に響く比喩表現が散りばめられた軽快でリズミカルな文体も大きな特徴です。 ジャズやクラシック、ロックといった音楽や、古今東西の映画や小説が効果的に引用され、物語に深い奥行きを与えています。
その功績は世界的に高く評価されており、谷崎潤一郎賞や読売文学賞といった国内の文学賞はもちろん、フランツ・カフカ賞(2006年)やエルサレム賞(2009年)など、国際的な文学賞も多数受賞しています。 毎年ノーベル文学賞の有力候補として名前が挙がることも、彼の世界的な影響力を物語っています。
2021年には、母校である早稲田大学に「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)」がオープンし、村上春樹文学の研究と発信の拠点として、新たなファンを増やし続けています。
村上春樹の小説の選び方
初心者は読みやすい代表作や映像化作品から
初めて村上春樹作品に触れる方は、不思議な要素が比較的少なく、現実的なストーリーラインを持つ作品から始めるのがおすすめです。 特に、恋愛小説の金字塔『ノルウェイの森』や、喪失からの再生を描いた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、読みやすく感動的な物語として多くの方に支持されています。
また、アカデミー賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」の原作が収録された短編集『女のいない男たち』など、映像化作品から入るのも、物語の世界観を掴みやすいため良いでしょう。
村上春樹の世界観に浸るなら長編小説
村上春樹の真骨頂ともいえる、日常と非日常が入り混じる壮大な物語を堪能したいなら、長編小説に挑戦してみましょう。 15歳の少年の家出と不思議な老人ナカタさんの旅が交差する『海辺のカフカ』、ふたつの月が浮かぶ世界を描いた『1Q84』、妻と猫の失踪をきっかけに奇妙な冒険が始まる『ねじまき鳥クロニクル』などが代表的です。
どの作品もボリュームがありますが、一度その世界に引き込まれたら、最後までページをめくる手が止まらなくなるはずです。
気軽に楽しみたいなら短編集
「長編を読む時間がない」「まずは気軽に村上作品を味わいたい」という方には、短編集がぴったりです。 一話完結で読みやすく、それでいて村上春樹らしいエッセンスが凝縮されています。
近年発表された『一人称単数』や、阪神・淡路大震災をテーマにした『神の子どもたちはみな踊る』など、テーマ性の高い短編集も多く、あなたの興味に合った一冊が見つかるでしょう。
村上春樹の原点を知るなら「鼠三部作」
村上春樹の初期の作風や、作家としての原点に触れたいなら、「僕」と友人「鼠(ねずみ)」の青春を描いた初期三部作を読むのがおすすめです。 デビュー作の『風の歌を聴け』、続く『1973年のピンボール』、そして北海道への冒険譚『羊をめぐる冒険』の三作品がこれにあたります。
軽妙な会話と、どこか物悲しい青春の空気感が魅力的なシリーズです。 さらに続編である『ダンス・ダンス・ダンス』を読むことで、より深く主人公たちの旅路を追体験できます。
村上春樹おすすめ小説ランキング
第1位 『ノルウェイの森』 – 誰もが知る不朽の恋愛小説
刊行年 | 1987年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | 累計1000万部以上 |
受賞歴 | – |
メディア化 | 映画(2010年) |
村上春樹の名前を世界に知らしめた、言わずと知れた代表作。 1960年代後半を舞台に、主人公ワタナベが、繊細で傷つきやすい直子と、生命力あふれる緑という二人の女性の間で揺れ動く様を描いた、切なくも美しい青春恋愛小説です。
村上作品特有の超現実的な要素は控えめで、登場人物たちの心の機微が丁寧に描かれているため、初心者でも非常に読みやすい一冊。 累計発行部数は1000万部を突破しており、多くの読者の心を掴んで離さない不朽の名作です。



生と死のテーマが重いけど、ワタナベ君の不器用さがリアルで共感しちゃう。直子と緑、私だったらどっちを選ぶかなって考えちゃった。
第2位 『海辺のカフカ』 – 15歳の少年の壮大な成長物語
刊行年 | 2002年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | 世界幻想文学大賞(2006年) |
メディア化 | 舞台(2012年ほか) |
「君は世界で最もタフな15歳にならなくてはならない」という父の呪いを背負い家出する少年「田村カフカ」と、猫と話せる不思議な老人「ナカタさん」。 全く異なる二つの物語が、やがて四国の小さな私設図書館で交錯していく、壮大なスケールの長編小説です。
現実と幻想が複雑に絡み合い、ギリシャ悲劇や古典文学のモチーフもちりばめられた、まさに村上ワールドの真骨頂ともいえる作品。 謎が謎を呼ぶ展開に、夢中になって読み進めてしまうこと間違いなしです。



カフカ君の家出、ドキドキした!ナカタさんとホシノさんのコンビが大好き。猫と話せるの、ちょっとうらやましいかも。
第3位 『1Q84』 – ふたつの月が浮かぶ世界の物語
刊行年 | 2009年-2010年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | 第63回毎日出版文化賞 |
メディア化 | – |
ふと気づくと、空には月が二つ浮かんでいた。 スポーツインストラクターであり暗殺者の「青豆」と、小説家志望の予備校講師「天吾」の物語が交互に語られながら、1984年とは少しだけ違う「1Q84年」の世界の謎に迫っていきます。
BOOK1からBOOK3まで、文庫本にして全6冊という圧倒的なボリュームを誇る大長編。 「リトル・ピープル」や「空気さなぎ」といった謎めいた存在が登場し、読者を不思議な物語世界へと引き込みます。腰を据えてじっくりと傑作に浸りたい方におすすめです。



青豆と天吾がなかなか出会えないのがもどかしい!でも、だからこそ最後のシーンが感動的なんだよね。
第4位 『風の歌を聴け』 – すべてはここから始まったデビュー作
刊行年 | 1979年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | 第22回群像新人文学賞 |
メディア化 | 映画(1981年) |
1970年の夏、海辺の街での18日間。 大学生の「僕」と友人「鼠」が、ビールを飲み、レコードを聴き、名もなき少女と出会い、そして別れる。そんな、とりとめのない日々を乾いた文体で描いた、村上春樹の記念すべきデビュー作です。
断片的なエピソードとクールな会話で構成された独特のスタイルは、当時の日本文学に衝撃を与えました。 ジャズ喫茶経営の経験が色濃く反映されており、村上春樹の原点を知る上で欠かせない一冊です。



短いけど、夏の終わりの切ない空気感がたまらない!この頃からもう文体がおしゃれすぎるんだよなあ。
第5位 『ねじまき鳥クロニクル』 – 壮大な探索の物語
刊行年 | 1994年-1995年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | 227万部以上(2002年時点) |
受賞歴 | 第47回読売文学賞 |
メディア化 | 舞台(2020年、2023年) |
ある日、飼っていた猫が消え、そして妻も姿を消した。 主人公の岡田亨が、奇妙な隣人や謎の姉妹との出会いを経て、近所の空き家の庭にある涸れ井戸の底へと降りていく。そこから、東京と、かつての満州(ノモンハン)を結ぶ、時空を超えた壮大な物語が始まります。
歴史の暗部と個人の物語が交錯する、村上春樹の最も野心的な作品の一つ。 全3部からなる長大な物語ですが、その圧倒的な世界観と深いテーマ性は、多くの読者を魅了し続けています。



井戸の底のシーンは息を飲んだよ。歴史の暴力と向き合うって、こういうことなのかなって考えさせられた。
第6位 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 – 二つの世界が交わる傑作
刊行年 | 1985年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | 第21回谷崎潤一郎賞 |
メディア化 | – |
高い壁に囲まれ、一角獣たちが棲む静謐な「世界の終り」。 一方で、老科学者のためにデータの計算を行う「計算士」の「私」が、ヤミクロと呼ばれる謎の存在に追われる、スリリングな「ハードボイルド・ワンダーランド」。
全く異なる二つの物語が、章ごとに交互に語られていきます。 一見無関係に見える二つの世界が、やがて一つに収束していく構成の見事さは圧巻。SF的な冒険活劇と、幻想的な世界の融合を楽しめる、初期の代表作です。



二つの話がどう繋がるのか、ワクワクしながら読んだ!影をなくすって、自分の心をなくすみたいでちょっと怖いかも。
第7位 『羊をめぐる冒険』 – 「鼠三部作」完結編
刊行年 | 1982年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | 第4回野間文芸新人賞 |
メディア化 | – |
妻と別れ、広告会社を辞めた「僕」のもとに、ある日一枚の写真が送られてくる。 そこに写っていた、背中に星形の斑点を持つ一頭の羊をめぐって、「僕」は謎の黒服の男の依頼で、北海道の奥地へと旅立つことになります。
『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』から続く「鼠三部作」の完結編。 ミステリータッチの冒険譚の中に、友人「鼠」の行方や、得体のしれない「羊」の謎が絡み合い、シリーズの集大成にふさわしい物語が展開します。



北海道の雄大な景色が目に浮かぶようだった!羊男のキャラクターが強烈で忘れられないよ。
第8位 『ダンス・ダンス・ダンス』 – 高度資本主義社会を踊り続けろ
刊行年 | 1988年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
『羊をめぐる冒険』の続編にあたる長編小説。 前作の冒険から4年後、フリーライターとして虚しい日々を送っていた「僕」は、かつて恋人と過ごした札幌の「いるかホテル」を再び訪れます。そこで彼は、羊男と再会し、新たな事件へと巻き込まれていきます。
高度資本主義社会の中で、様々なものと「つながり」、自分自身を取り戻そうとする主人公の姿が描かれます。 「踊るんだよ。音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ」という羊男の言葉が、強く心に残る作品です。



『羊をめぐる冒険』の続きが読めて嬉しかった!ユキっていう少女がすごく魅力的で、僕との関係性がいいんだよね。
第9位 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 – 過去と向き合う再生の物語
刊行年 | 2013年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | 100万部以上 |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
鉄道の駅を設計する技師、多崎つくる、36歳。 彼には、高校時代に「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」という色の名を持つ4人の親友がいたが、ある日突然、彼らから理由も告げられずに絶交されてしまいます。
16年後、恋人の沙羅に促され、つくるは心の奥にしまい込んできた過去と向き合うため、かつての友人たちを訪ねる「巡礼」の旅に出ることを決意します。 喪失感からの再生という、村上作品に共通するテーマを扱いながらも、物語は非常に現実的で読みやすく、多くの読者の共感を呼びました。



つくる君の心の傷を思うと、胸がぎゅっとなる…。過去の謎が少しずつ解けていく展開から目が離せなかったよ。
第10位 『国境の南、太陽の西』 – 失われたものへの思慕
刊行年 | 1992年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
青山で二軒のジャズバーを経営し、妻と二人の子供に恵まれ、何不自由ない生活を送る主人公「ハジメ」。 しかし彼の心には、常に埋めがたい欠落感がありました。そんなある日、彼の店のカウンターに、小学校時代の初恋の相手「島本さん」が姿を現します。
彼女との再会をきっかけに、ハジメの心は過去と現在との間で激しく揺れ動きます。 『ノルウェイの森』と並び称されることの多い、大人のためのほろ苦い恋愛小説です。人生の虚無感や、失われたものへの思慕を描いた、静かで美しい物語。



ミステリアスな島本さんにドキドキしちゃう。ハジメくんの気持ちもわかるけど、今の幸せも大事にしてほしいなあって思ったり…。
第11位 『騎士団長殺し』 – イデアとメタファーの物語
刊行年 | 2017年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | 初版130万部 |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
妻から離婚を切り出され、家を出た36歳の肖像画家「私」。 友人の父親である著名な日本画家、雨田具彦のアトリエに仮住まいすることになった彼は、屋根裏で『騎士団長殺し』というタイトルの奇妙な絵を発見します。そして、夜中に聞こえる鈴の音に導かれ、庭の塚を掘り起こすと…。
目に見えない「イデア」や「メタファー」といった哲学的な概念が、物語の重要な鍵を握る、知的好奇心を刺激される長編小説です。 謎の隣人・免色渉や、絵の中から現れた「騎士団長」など、個性的なキャラクターたちとの対話を通じて、物語は思わぬ方向へと展開していきます。



騎士団長がちっちゃいおじさんとして出てくるのが面白い!免色さんって一体何者なんだろうって、最後まで気になったよ。
第12位 『街とその不確かな壁』 – 高い壁に囲まれた街の謎
刊行年 | 2023年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
『騎士団長殺し』以来6年ぶりとなる、待望の最新長編小説。 主人公の「私」が、10代の頃に思いを寄せた少女から聞かされた「高い壁に囲まれた街」を追い求め、現実と夢の世界を行き来する物語です。
実はこの作品の原型は、デビュー間もない頃に文芸誌に発表されたものの、書籍化されなかった同名の中編小説。 40年以上の時を経て、コロナ禍の中で全面的に書き直され、全く新しい物語として生まれ変わりました。村上春樹の集大成ともいえる一冊です。



昔の作品がこうやって生まれ変わるのってすごいよね。夢読みって仕事、私もやってみたいかも!
第13位 『スプートニクの恋人』 – 三角関係を描く不思議な恋愛小説
刊行年 | 1999年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
小説家を夢見る活発な女性「すみれ」。 彼女が恋をしたのは、17歳年上の既婚女性「ミュウ」でした。そして、そんなすみれに長年片思いをしているのが、語り手である「ぼく」。
ある日、ギリシャの小島を旅行中だったすみれが、忽然と姿を消してしまいます。 残されたパソコンには、「スプートニクの恋人」と題された文章が。報われない想いが交錯する、奇妙で切ない三角関係の物語。村上春樹らしい幻想的な消失譚が魅力です。



すみれがミュウさんを思う気持ち、すごく切ない…。BL好きとしては、こういう一方通行の恋に弱いんです。
第14位 『アフターダーク』 – 深夜から夜明けまでの物語
刊行年 | 2004年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
物語の舞台は、深夜の都会。 時刻が0時をまわる少し前から、朝日が昇るまでの数時間に起こる出来事を、まるで監視カメラのように三人称の視点で描いていく実験的な小説です。
深夜のデニーズで本を読む少女マリ、その姉で眠り続ける美少女エリ、ラブホテルで暴行事件に巻き込まれる中国人娼婦、マリに声をかける青年タカハシ。 彼らの夜が、リアルタイムで交錯していきます。一晩で読み切れるボリュームも魅力的な、緊張感あふれる一冊。



映画を観てるみたいな感覚で読めるのが新しい!深夜のファミレスって、なんだか特別なことが起こりそうな気がするよね。
第15位 『1973年のピンボール』 – 「鼠三部作」第2弾
刊行年 | 1980年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
『風の歌を聴け』の3年後を描いた、「鼠三部作」の2作目。 東京で翻訳の仕事をしながら、名前のない双子の女の子と奇妙な共同生活を送る「僕」。一方、故郷の街に残った友人「鼠」は、虚無感を抱えながら日々を送っています。
二人の物語が交互に語られる中、かつて「僕」が熱中した幻のピンボール台「スペースシップ」が、物語の重要な鍵を握っていきます。 喪失と再生の予感が漂う、青春時代の終わりを描いた作品です。



双子の女の子との生活、なんだか不思議でかわいい。鼠くんのやるせない気持ちが伝わってきて、ちょっと切なくなっちゃうな。
第16位 『女のいない男たち』 – アカデミー賞受賞作の原作を収録
刊行年 | 2014年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | 映画「ドライブ・マイ・カー」(2021年)※第94回アカデミー賞国際長編映画賞受賞 |
2021年に公開され、カンヌ国際映画祭やゴールデングローブ賞、そして米国アカデミー賞国際長編映画賞など、数々の栄誉に輝いた映画「ドライブ・マイ・カー」。 その原作となった表題作を含む、6つの短編が収められた作品集です。
タイトルが示す通り、様々な理由で「女」を失った男たちの喪失と、その先の人生が描かれています。 一編一編は短くとも、心に深い余韻を残す物語ばかり。映画を観た方はもちろん、観ていない方でも楽しめる、珠玉の短編集です。



映画も最高だったけど、原作を読むと家福さんの心情がもっと深く理解できる感じ。渡利さんの運転するサーブに乗ってみたい!
第17位 『一人称単数』 – 「私」が語る8つの物語
刊行年 | 2020年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
『女のいない男たち』から6年ぶりに発表された短編集。 収録された8編の物語は、タイトル通りすべて「私」という一人称で語られます。
それは小説なのか、エッセイなのか、それとも夢の話なのか。 その境界が曖昧になるような不思議な感覚を味わえるのが、この作品集の大きな魅力です。ヤクルト・スワローズのファンブックを自作する話など、くすりと笑えるユニークな作品も収録されています。



これって村上さん自身のことなのかな?って想像しながら読むのが楽しい。チャーリー・パーカーがボサノヴァをやるアルバム、本当に聴いてみたい!
第18位 『神の子どもたちはみな踊る』 – 大震災後の世界を描く
刊行年 | 2000年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | 映画「ハナレイ・ベイ」(2018年)※収録作「ハナレイ・ベイ」原作 |
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災と、同年3月の地下鉄サリン事件。 日本社会を震撼させた二つの大きな出来事を背景に、人々の心に生じた変化や喪失感、そして再生への希望を描いた6編からなる短編集です。
「かえるくん、東京を救う」のようにファンタジックな物語から、タイを舞台にした「タイランド」まで、作風は多彩。 社会的な出来事と個人の物語を接続させる、作家・村上春樹の真摯な眼差しが感じられる重要な作品集です。



かえるくんが巨大なみみずくんと戦う話、すごく好き!コミカルだけど、実は深いテーマが隠されているんだよね。
第19位 『東京奇譚集』 – 都会に潜む不思議な物語
刊行年 | 2005年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
「奇譚」という言葉の通り、東京という大都市で起こる、少し不思議で説明のつかない5つの出来事を集めた短編集。 ハワイで母親を亡くしたサーファー、自分の名前を忘れてしまった女性、そして人の名前を盗む「品川猿」…。
日常にぽっかりと空いた穴を覗き込むような、奇妙な味わいの物語が揃っています。 どの作品も「喪失」という共通のテーマで緩やかにつながっており、短編集でありながら一冊の長編のような読後感を残します。



品川猿に名前を盗まれちゃう話、ちょっと怖いけど面白い!自分の名前を忘れちゃうって、どんな感じなんだろう。
第20位 『めくらやなぎと眠る女』 – 24の物語を巡る旅
刊行年 | 2009年(単行本)、1996年(文庫『レキシントンの幽霊』) |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | アニメ映画(2024年) |
村上春樹自身が「個人的な思い入れの深い」と語る短編「めくらやなぎと、眠る女」を表題作とし、デビュー初期から2005年までに書かれた24の短編を収録した、ボリュームたっぷりの作品集。 2024年には、本書収録の複数作品を原作としたアニメーション映画が公開され、話題となりました。
「バースデイ・ガール」や「かえるくん、東京を救う」といった代表的な短編も含まれており、まさに村上春樹の短編世界の集大成ともいえる一冊。 様々な時代の、様々なスタイルの物語を一度に楽しむことができます。



一冊でいろんな時代の村上作品が読めるなんてお得だね!アニメ映画も幻想的で素敵だったなあ。
第21位 『螢・納屋を焼く・その他の短篇』 – 長編の萌芽が見える初期短編集
刊行年 | 1984年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | 映画「バーニング 劇場版」(2019年)※「納屋を焼く」原作 |
後の長編小説『ノルウェイの森』の原型となった「螢」や、韓国のイ・チャンドン監督によって映画化され世界的な評価を得た「納屋を焼く」など、重要な5つの短編を収録。 初期の作品集でありながら、その後の村上文学の展開を予感させる、象徴的で密度の濃い物語が詰まっています。
特に「螢」で描かれる、闇の中に消えていく螢の光と、それに伴う喪失感のイメージは、多くの読者の心に深く刻まれています。 村上春樹の創作の源泉に触れたい方におすすめの一冊です。



『ノルウェイの森』の元になった話が読めるなんて!「納屋を焼く」の不穏な空気感も、ぞくぞくして好きだなあ。
第22位 『パン屋を再襲撃』 – 空腹が引き起こす奇妙な出来事
刊行年 | 1986年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
表題作「パン屋を再襲撃」は、深夜に耐えがたい空腹に襲われた新婚夫婦が、なぜかマクドナルドを襲撃する羽目になるという、ユーモラスで奇妙な物語。 この作品集には、ほかにも「象の消滅」や「ファミリー・アフェア」など、初期の村上春樹らしいウィットと不思議な感覚に満ちた6つの短編が収められています。
日常に潜む非日常を軽やかに描き出す、村上春樹の才能が存分に発揮された一冊。 どの作品も読みやすく、思わずくすりと笑ってしまうような魅力にあふれています。



お腹が空きすぎてマックを襲うって発想が面白すぎる!ワーグナーを聴きながらパンを食べるシーンがシュールで好き。
第23位 『中国行きのスロウ・ボート』 – デビュー後初の短編集
刊行年 | 1983年 |
出版社 | 中央公論新社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
村上春樹がデビュー後、初めて刊行した記念すべき短編集。 表題作「中国行きのスロウ・ボート」をはじめ、神戸や芦屋といった自らのルーツを背景に、青春時代の記憶や喪失感をテーマにした7つの物語が収められています。
後の長編作品に見られるようなファンタジー要素は少ないですが、クールな文体と独特の浮遊感は、この頃からすでに健在。 作家・村上春樹の出発点を知ることができる、ファン必読の一冊です。



初期の作品は、なんだか瑞々しい感じがするなあ。「貧乏な叔母さんの話」が、不思議で印象に残ったよ。
第24位 『カンガルー日和』 – 日常の断片を切り取ったショートショート集
刊行年 | 1983年 |
出版社 | 平凡社(単行本)、講談社(文庫) |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
ショートショートに近い、ごく短い18の物語を集めた短編集。 カンガルーの赤ちゃんを見に行くカップル、4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会う話、スパゲッティーに執念を燃やす男など、何気ない日常のスケッチが、村上春樹ならではの軽妙なタッチで描かれています。
一編が数ページで終わるため、隙間時間に少しずつ読み進めるのに最適。 村上春樹作品の入門編としても、気軽にその世界観に触れたい方におすすめです。



「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」が大好き!運命の出会いって本当にあるのかなって思っちゃう。
第25位 『TVピープル』 – 日常を侵食する小さな恐怖
刊行年 | 1990年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
ある日曜の夕方、僕の部屋にテレビを運んでくる小さな「TVピープル」。 彼らの出現をきっかけに、僕の日常は少しずつ、しかし確実に歪んでいく…。表題作「TVピープル」は、得体の知れないものが日常を侵食してくる恐怖を描いた、世にも奇妙な物語風の一編です。
ほかにも、主人公が1ヶ月間眠れなくなる「眠り」など、人間の内なる孤独や不安をテーマにした作品が多く収録されています。 『ノルウェイの森』の大ヒット後、スランプを経て執筆されたという、作家としての転換点に位置する短編集です。



TVピープル、うちにも来たらどうしようって想像しちゃった。ちょっと不気味だけど、引き込まれる世界観だよね。
第26位 『レキシントンの幽霊』 – アメリカを舞台にした不思議な物語
刊行年 | 1996年 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
村上春樹がプリンストン大学で教鞭をとっていた時期の経験を基に、アメリカを舞台にした作品が多く収められている短編集。 真夜中に現れる幽霊たちとポーカーをする表題作「レキシントンの幽霊」をはじめ、7つの不思議な物語が収録されています。
この作品集には、著者が「ひとつの到達点」と語る重要な短編「めくらやなぎと、眠る女」も収録されており、初期の断片的なスタイルから、より物語性の強い作風へと変化していく過渡期の作品として楽しむことができます。



アメリカの乾いた空気感が伝わってくるみたい。幽霊とポーカーする話、おしゃれで好きだなあ。
第27位 『回転木馬のデッド・ヒート』 – 80年代の空気感を切り取る
刊行年 | 1985年 |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
1980年代前半の日本を舞台に、どこにでもいそうな(しかし、どこか変わっている)人々の日常を、エッセイのような軽やかな筆致で描いた8編の短編集。 村上春樹自身が「リアリズム」と呼ぶスタイルで書かれており、超現実的な要素はほとんどありません。
プールサイドで男を品定めする女性、屋根の上でひたすら誰かを待ち続ける男、レザー・ジャケットに異常なこだわりを持つ男など、個性的な登場人物たちが生き生きと描かれています。 80年代の空気感を感じながら、気軽に読める一冊です。



なんだか懐かしい感じがする物語ばっかり。登場人物たちのちょっとしたこだわりが、人間らしくて愛おしいな。
第28位 『象の消滅 短篇選集 1980-1991』 – 海外読者に向けて編まれた一冊
刊行年 | 2005年 |
出版社 | 新潮社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
もともとは、海外の読者に向けて編纂された英訳版短編集『The Elephant Vanishes』の日本語版。 「パン屋を再襲撃」や「納屋を焼く」「眠り」など、1980年代に書かれた村上春樹の代表的な短編17編が、執筆年代順に収録されています。
「象の消滅」というタイトル通り、何かが「消える」物語が多く、村上作品の大きなテーマである「喪失」を色濃く感じることができます。 80年代の村上春樹の仕事を概観できる、ベスト盤のような短編集です。



ベスト盤みたいで、どれから読もうか迷っちゃうね!「象の消滅」は、静かだけどすごくインパクトのある話だったよ。
第29位 『バースデイ・ガール』 – あなたなら何を願う?
刊行年 | 2002年(初出)、2017年(絵本) |
出版社 | 中央公論新社(初出)、新潮社(絵本) |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
二十歳の誕生日にアルバイトをしていた「彼女」は、店のオーナーの老人から「ひとつだけ願い事をかなえてあげよう」と持ちかけられます。 彼女が願ったこととは?そしてその願いは叶ったのか?
もともとは、村上春樹が編訳したアンソロジー『バースデイ・ストーリーズ』に書き下ろされた短編ですが、ドイツの画家カット・メンシックのイラストと共に、美しい絵本としても出版されています。 人生について考えさせられる、大人へのプレゼントにも最適な一冊です。



もし私が願い事をひとつ叶えてもらえるなら、何をお願いするかな…。彼女の願い事の答えが気になって仕方ない!
第30位 『ふしぎな図書館』 – 図書館に囚われた少年の冒険
刊行年 | 2005年(初出)、2014年(絵本) |
出版社 | 講談社 |
発行部数 | – |
受賞歴 | – |
メディア化 | – |
学校の図書館に本を返しにきた僕は、地下の閲覧室へと案内される。 そこで待っていたのは、奇妙な老人と、羊男、そして言葉を話せない美しい少女でした。僕は脳みそを吸われないように、羊男と共に脱出を試みます。
こちらも、佐々木マキのイラストと共に、ポップで美しい絵本として刊行されている作品。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『羊をめぐる冒険』を彷彿とさせるモチーフが登場し、ハルキストならニヤリとしてしまうこと間違いなしです。



羊男が出てくると、なんだか安心しちゃう。絵本だからすぐ読めるけど、村上ワールドがぎゅっと詰まってて満足感が高いよ。
まとめ
村上春樹のおすすめ小説ランキング30選、いかがでしたか? 恋愛小説から壮大なファンタジー、不思議な短編集まで、その作品世界は非常に多彩です。
もし難解に感じられる部分があっても、「なぜ?」と深く考えすぎず、まずは物語の不思議な雰囲気に身を委ねてみてください。 作中に登場する音楽を聴いたり、映画を観たりしながら読むのも、村上作品をより深く楽しむためのコツです。
このランキングを参考に、ぜひあなたにとっての特別な一冊を見つけて、村上春樹の奥深い物語の世界を旅してみてくださいね。