皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
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皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
柳美里(ゆう みり)さんは、1968年生まれの在日韓国人の劇作家・小説家です。自身の壮絶な人生経験を投影したかのような、魂を揺さぶる物語を数多く発表し、国内外で高く評価されています。
高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に最年少で入団。役者として活動後、演劇ユニット「青春五月党」を旗揚げし、1993年に『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を最年少受賞します。1994年に小説家デビューを果たすと、『家族シネマ』で芥川賞を受賞するなど、文学界で確固たる地位を築きました。
東日本大震災を機に、2015年から福島県南相馬市へ移住。現在も書店「フルハウス」を営みながら、精力的に活動を続けています。2020年には『JR上野駅公園口』で全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞し、その名は世界に轟いています。
柳美里さんの作品の大きな特徴は、「家族」や「死」、そして社会の片隅で生きる人々の姿を、痛々しいほどのリアリティで描き出す点にあります。自身の経験を色濃く反映した「私小説」的な作品が多く、読者はその剥き出しの感情に心を鷲掴みにされます。
華やかな光だけでなく、社会が見て見ぬふりをしてきた「闇」の部分に鋭く切り込むのも柳作品の魅力です。貧困、差別、孤独といったテーマを扱いながらも、そこにある生命の輝きや人間の複雑な内面を丁寧に描き出します。
例えば、全米図書賞を受賞した『JR上野駅公園口』では、出稼ぎ労働者からホームレスとなった男性の生涯を通し、日本の高度経済成長がもたらした光と、その陰で忘れ去られた人々の存在を浮き彫りにしました。このように、柳美里さんは常に社会における弱者の視点に立ち、その声なき声を物語として紡ぎ続けているのです。
柳美里さんは、劇作家としてキャリアをスタートさせた当初からその才能を高く評価されていました。1993年には、戯曲『魚の祭』で演劇界の芥川賞ともいわれる岸田國士戯曲賞を史上最年少で受賞し、大きな注目を集めました。
小説家デビュー後もその勢いは止まらず、次々と重要な文学賞に輝きます。1996年に『フルハウス』で泉鏡花文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞。そして翌1997年、『家族シネマ』で第116回芥川龍之介賞を受賞し、日本を代表する作家の一人としての地位を不動のものとしました。近年では、2020年に『JR上野駅公園口』が全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞するなど、その評価は国境を越えて広がっています。
受賞年 | 作品名 | 受賞した文学賞 |
---|---|---|
1993年 | 魚の祭 | 第37回岸田國士戯曲賞 |
1996年 | フルハウス | 第24回泉鏡花文学賞 |
1996年 | フルハウス | 第18回野間文芸新人賞 |
1997年 | 家族シネマ | 第116回芥川龍之介賞 |
1999年 | ゴールドラッシュ | 第3回木山捷平文学賞 |
2020年 | JR上eno駅公園口 | 全米図書賞(翻訳文学部門) |
数々の名作を生み出してきた柳美里さん。その壮絶な人生から紡ぎ出される物語は、読む者の心を強く掴んで離しません。ここからは、小説ヨミタイ編集部が厳選した、柳美里さんのおすすめ小説をランキング形式でご紹介します。
芥川賞や全米図書賞に輝いた代表作から、知る人ぞ知る名作まで幅広くピックアップしました。どの作品から読もうか迷っている方は、ぜひこのランキングを参考に、柳美里さんの奥深い文学の世界に触れてみてください。
2020年に全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞し、世界的な評価を得た柳美里さんの代表作です。物語は、福島県出身の男性の視点から語られます。彼は1964年の東京オリンピックを前に出稼ぎで上京し、やがて上野公園でホームレスとして暮らすことになります。
この作品の巧みな点は、主人公の男性が「天皇」と同じ日に生まれたという設定です。彼の壮絶な人生と、日本の象徴である天皇の人生を対比させることで、高度経済成長期の光と、その影で社会からこぼれ落ちていった人々の存在を鮮烈に描き出しています。居場所を失った人々の声なき声に耳を傾け、現代社会が抱える問題を鋭く問いかける傑作です。
主人公の人生が過酷すぎて、胸が張り裂けそうだったよ。社会の片隅にある声なき声に、耳を澄ませたくなるんだ。
1997年に第116回芥川賞を受賞した、柳美里さんの名を世に知らしめた初期の代表作です。物語は、長年離散状態にあった家族が、自分たちを題材にした映画を撮影するために再集結するところから始まります。
それぞれが問題を抱え、バラバラになった家族がカメラの前で「幸せな家族」を演じるという、皮肉な状況設定が秀逸です。映画という虚構の世界を通して、かえって現実の家族が抱える問題や、その本質が浮き彫りになっていきます。「家族とは何か」という普遍的なテーマに、斬新な切り口で迫った作品であり、芥川賞の選考会でもその才能が高く評価されました。
「家族」を演じるって、どういうことなんだろう…。本当の家族って何なのか、ぐるぐる考えちゃったよ。
柳美里さん自身の壮絶な体験を基に描かれた、私小説の傑作です。この作品は、妻のいる男性との恋愛、妊娠、そしてかつての恋人であり師でもあった東由多加さんの末期がんとの闘病生活が、赤裸々なまでに綴られています。
新しく生まれようとしている「命」と、まさに消えようとしている「命」。その二つの命の間で揺れ動く著者の感情が、痛々しいほどの筆致で描かれています。生と死、愛と孤独といった根源的なテーマに正面から向き合った本作は、多くの読者に衝撃と感動を与え、後に『魂』『生』『声』と続く4部作となりました。
あまりにも壮絶で言葉が出なかった…。生きることの重みを突きつけられて、涙が止まらなかったよ。
1996年に泉鏡花文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した、柳美里さんの初期の傑作です。「家を建てる」が口癖だった父親が、家族が誰も住みたがらない立派な家を建てるところから物語は始まります。やがて父は、その家にホームレスの家族を住まわせ、奇妙な共同生活が展開されます。
血の繋がった家族と、血の繋がらない「偽物」の家族。その二つの家族の姿を通して、「家族」という制度の脆さや曖昧さを鋭く描き出しています。日常の中に潜む狂気や不穏な空気を描き出す、柳美里さんならではの世界観が存分に味わえる一作です。
血の繋がらない家族との奇妙な生活、ちょっと不気味だけどすごく惹かれるよ。本当の家族ってなんだろうね。
1999年に木山捷平文学賞を受賞した、衝撃的な長編小説です。物語の舞台は、横浜の歓楽街・黄金町。パチンコ店のオーナーを父に持つ14歳の少年が主人公です。彼は家庭崩壊の中でドラッグに溺れ、やがて父親への殺意を募らせていきます。
「なぜ人を殺してはいけないのか?」という根源的な問いを、思春期の少年の危うい視点を通して読者に突きつけます。お金が全ての価値基準となってしまった現代社会の歪みと、そこに生きる人々の孤独や渇望を描ききった、社会派エンターテイメントの傑作です。
「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いが、冷徹な筆致で描かれている。社会の歪みが産んだ少年の狂気には戦慄を禁じ得ない。
東日本大震災後、福島県南相馬市に移住した柳美里さんが、現地での経験を基に描いた感動作です。物語は、公園に捨てられた母猫と、その子どもたち、そして彼らを取り巻く人々との交流を描いています。
被災地の厳しい現実の中で、懸命に生きる猫たちの姿と、様々な事情を抱えながらも彼らを見守る人々の優しさが胸を打ちます。生きることの哀しみと、それでも失われない希望のきらめきが、静かな筆致で丁寧に紡がれていく物語です。猫好きの方はもちろん、心温まる物語を読みたい方におすすめの一冊です。
猫たちの視点で描かれる世界が、優しくて切なくて…。小さな命の尊さに、心が温かくなったよ。
実際に起きた「コインロッカー嬰児置き去り事件」を題材にした、社会派ミステリーです。物語は、コインロッカーで発見された赤ん坊の母親を追う新聞記者の視点で進みます。
なぜ彼女は、我が子を捨てなければならなかったのか。取材を進めるうちに、女性が置かれていた過酷な状況や、社会の無関心といった問題が次々と明らかになっていきます。事件の真相に迫るスリリングな展開と、現代社会が抱える闇を鋭く告発するメッセージ性を兼ね備えた作品です。人間の心の奥深くに潜む孤独や絶望を描ききった、柳美里さんの筆力が光ります。
事件の背景にある社会の歪みが、これでもかと抉り出されている。見過ごされてきた個人の絶望に、ただ沈黙するしかない。
自身のルーツである韓国と、亡き祖父の人生をテーマにした大河小説です。物語は、日本統治下の朝鮮半島でマラソンランナーとしてオリンピックを目指した祖父の生涯と、現代を生きる作家自身の姿を重ね合わせながら進行します。
植民地支配、戦争、そして分断という激動の歴史の中で翻弄された人々の魂の叫びが、時空を超えて響き渡ります。日本と朝鮮半島の間に横たわる複雑な歴史と、そこに生きた無数の人々の記憶を掘り起こした、壮大なスケールの作品です。自身のアイデンティティを問う、柳美里さんの作家としての覚悟が感じられる一冊です。
歴史の大きなうねりに翻弄された人々の物語に圧倒されたよ。自分のルーツについても考えさせられるんだ。
蝶の撮影旅行に出かけたまま行方不明になっていた父が、12歳の娘・雨のもとに帰ってきます。しかし、再会を喜ぶ雨の周りでは、次々と奇怪な出来事が起こり始めます。
死んでしまった父が、娘を想うあまり幽霊となって帰ってくるという切ない物語が主軸となっています。父と娘の深い愛情を描きながらも、随所に散りばめられたホラー要素が物語に不穏な緊張感を与えます。家族とは何か、愛とは何かを問いかける、美しくも哀しい怪談です。
ちょっと怖いけど、お父さんの娘への愛に涙が止まらなかったな。切なくて美しい、大好きなお話だよ。
1994年に発表された、柳美里さんの記念すべき小説家デビュー作です。主人公は、在日韓国人の新人劇作家。崩壊した家族との関係や、複雑な恋愛模様の中で、自身のアイデンティティを模索する姿が描かれます。
この作品は、実在の人物をモデルにしたことからプライバシー侵害で訴訟となり、出版が差し止められたことでも知られています。その後、改訂が加えられて文庫化されました。作家の「表現の自由」と個人の「プライバシー」をめぐる議論を巻き起こした、いわくつきの一作。柳美里文学の原点ともいえる、初期衝動に満ちた作品です。
出版が差し止められたなんて、衝撃的すぎるよ…。作家の初期衝動と覚悟に、ただただ圧倒されちゃうな。
ある夫婦と、彼らが「飼う」ことになった一人の少年との奇妙な関係を描いた物語です。少年は言葉を話さず、ただ黙々と食事をし、眠るだけ。夫婦はそんな彼をペットのように扱いながらも、次第に彼なしではいられない歪んだ愛情を抱くようになります。
「飼う」「飼われる」という関係性を通して、現代社会における人間関係の希薄さや、コミュニケーションの不全を鋭く描き出しています。人間の心の奥底に潜む孤独や支配欲が、静かな筆致でじわじわと炙り出されていく様は圧巻です。読後に不穏な余韻を残す、柳美里さんならではの世界観が凝縮された一冊です。
静謐な筆致で描かれる関係性の歪みが、人間の深層心理に潜む孤独と狂気を炙り出す。読後感は決して良いとは言えない。
今回は、小説家・柳美里さんのおすすめ小説をランキング形式でご紹介しました。気になる作品は見つかりましたか?
柳美里さんの作品は、家族、死、貧困、差別といった重いテーマを扱いながらも、常に人間の生の輝きや尊厳を描き出そうとしています。その壮絶な人生から紡ぎ出される物語は、時に私たちの胸を抉り、時に温かい光で包み込んでくれます。
この記事をきっかけに、柳美里さんの奥深い文学の世界に足を踏み入れていただければ幸いです。どの作品も、きっとあなたの心に深く刻まれる一冊となるでしょう。