皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
石沢麻依(いしざわ まい)さんは、1980年生まれ、宮城県仙台市出身の小説家です。 東北大学大学院で西洋美術史を専攻し、現在はドイツの大学院でルネサンス美術を研究しています。
2021年に発表したデビュー作『貝に続く場所にて』で、第64回群像新人文学賞と第165回芥川龍之介賞をダブル受賞するという鮮烈なデビューを飾りました。 東日本大震災の経験をベースに、記憶や時間、空間といったテーマを扱い、静かで知的な文体で物語を紡ぐ、今注目の作家です。
石沢麻依さんの小説は、2025年現在、単行本として刊行されている作品は多くありません。しかし、その一作一作が非常に濃密で、読む人の心に深く刻まれるような魅力を持っています。
今回は、そんな石沢さんの作品の中から、まず読んでほしい代表的な2作品をランキング形式でご紹介します。どちらも、彼女の作家性を知る上で欠かせない重要な作品です。
堂々の1位は、石沢麻依さんのデビュー作にして第165回芥川賞受賞作の『貝に続く場所にて』です。 この一作で、石沢さんは文壇に鮮烈な印象を与えました。
物語の舞台は、コロナ禍で都市封鎖が解除されたばかりのドイツの大学町。 主人公である「私」のもとに、9年前の東日本大震災で行方不明になったはずの後輩・野宮がふらりと現れるところから物語は始まります。
死者である野宮との静かな交流を通して、震災で生き残った者の罪悪感や遠い故郷への想い、そして記憶の在り方が、静謐で美しい文章で描かれています。 現実と幻想が入り混じる不思議な読書体験は、きっとあなたの心にも深く残るはずです。
静かな物語だけど、心にずしんと響くんだ。失われたものとどう向き合うか、わたしも考えさせられたよ。
芥川賞受賞後第一作として発表されたのが、こちらの『月の三相』です。 前作とはまた異なる、幻想的で深い思索に満ちた世界が広がっています。
舞台は、旧東ドイツにある架空の街。 そこには、自分の顔をかたどった「肖像面(ポートレートマスク)」を作り保管するという不思議な風習がありました。 物語は、ある女性の肖像面が失踪したことをきっかけに、街が抱える過去や人々の記憶が浮かび上がってきます。
東西ドイツ分断という歴史の記憶や、コロナ禍における差別問題などを背景に、「顔」やアイデンティティとは何かを問いかける壮大な物語です。 石沢さんならではの、美術史への深い造詣が感じられる知的な一冊です。
「肖像面」っていう設定がすごく面白いよね!自分の顔のマスクがなくなるなんて、考えただけで不思議な気持ちになるよ。
石沢麻依さんの小説は、ただ物語を追うだけでなく、その背景にあるテーマを知ることで、より一層深く味わうことができます。
ここでは、彼女の作品世界を読み解く上で欠かせない3つのキーワードをご紹介します。これらを知れば、物語に隠されたメッセージや作家の想いをより強く感じられるはずです。
石沢麻依さんは宮城県仙台市の出身で、東日本大震災を経験しています。 その経験は彼女の創作の根幹をなす重要なテーマとなっており、特にデビュー作『貝に続く場所にて』では色濃く反映されています。
この作品では、震災の悲劇そのものを描くというよりは、残された人々の記憶や、亡くなった人々への想い、そして時間の経過と共に変わっていくもの・変わらないものが静かに描かれます。 忘れてはいけないという気持ちと、風化していく記憶との間で揺れ動く登場人物たちの姿は、私たちに「記憶をどう受け継いでいくか」という普遍的な問いを投げかけます。
石沢麻依さんは現在ドイツに在住しており、その生活経験が作品に大きな影響を与えています。 デビュー作『貝に続く場所にて』や第二作『月の三相』も、主な舞台はドイツです。
物語はドイツの街を舞台に進みますが、登場人物たちの意識は常に遠い故郷・日本、そして震災の記憶へと繋がっています。物理的に離れた場所から故郷を見つめることで、記憶や歴史がより客観的かつ多層的に浮かび上がってくるのです。
このように、国境や文化を越えて物語を紡ぐ「越境文学」としての魅力も、石沢作品の大きな特徴と言えるでしょう。
石沢麻依さんは、大学院で西洋美術史を専攻した研究者でもあります。 そのアカデミックな知識は彼女の作品の大きな魅力の一つとなっており、物語の随所に美術に関する深い知見が散りばめられています。
例えば、作中に登場する絵画のモチーフが物語のテーマとリンクしていたり、美術史上の概念が物語の構造に応用されていたりと、知的好奇心をくすぐる仕掛けが満載です。
また、『饒舌な名画たち 西洋絵画を読み解く11の視点』といった専門書も執筆しており、その造詣の深さがうかがえます。 美術の知識を持って読むと、さらに多層的な物語の世界が立ち現れてくるでしょう。
石沢麻依さんは2021年にデビューしたばかりの新しい作家ですが、その才能はすでに多くの読者を魅了しています。ここでは、現在刊行されている単行本と、雑誌などに掲載された作品をご紹介します。
タイトル | 発売日 | ジャンル |
---|---|---|
貝に続く場所にて | 2021年7月 | 小説 |
月の三相 | 2022年8月 | 小説 |
かりそめの星巡り | 2024年11月 | エッセイ |
饒舌な名画たち 西洋絵画を読み解く11の視点 | 2025年4月 | 美術解説 |
※上記は2025年9月時点での情報です。
このほかにも、文芸誌『群像』『文學界』『すばる』『新潮』などで数多くの短編小説を発表しています。 これらの作品がまとめられ、新たな作品集として刊行される日が待たれますね。
今回は、作家・石沢麻依さんのおすすめ小説と、その作品世界の魅力についてご紹介しました。
東日本大震災の記憶を、ドイツという場所から静かに見つめ、西洋美術史の深い知識を織り交ぜながら紡がれる物語は、他に類を見ない独特の読書体験をもたらしてくれます。
まだ著作は多くありませんが、一作一作に込められた知性と情熱は計り知れません。まずは代表作である『貝に続く場所にて』『月の三相』から、その深く静謐な世界に触れてみてはいかがでしょうか。