皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。

皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
佐藤得二(さとう とくじ)は、仏教学者でありながら、64歳で作家デビューし直木賞を受賞した異色の経歴を持つ小説家です。1899年に岩手県で生まれ、東京帝国大学哲学科を卒業後、学者としての道を歩みました。
学者としては、京城帝国大学予科や第一高等学校で教授を務め、文部省の督学官や社会教育局長といった要職も歴任。その後、結核を患い苦しい生活を送りますが、病を乗り越え、1963年に初の小説『女のいくさ』を刊行しました。
佐藤得二は、もともと仏教研究の分野で知られた学者でした。1936年(昭和11年)には、彼の最初の著作であり名著としても知られる『仏教の日本的展開』を刊行しています。学者として確固たる地位を築いていた彼が、小説の世界に足を踏み入れたのは晩年になってからでした。
1963年(昭和38年)、親戚の女性の話を基にした初の小説『女のいくさ』で第49回直木賞を受賞します。当時64歳5ヶ月での受賞は、最高齢記録として大きな話題を呼びました。このことから、彼は「老新人」として文壇に鮮烈なデビューを果たしたのです。
佐藤得二の才能を早くから認めていたのが、第一高等学校時代の同級生であり、のちにノーベル文学賞作家となる川端康成です。川端は、『女のいくさ』が刊行された際に推薦文を寄せています。旧友からの力強い後押しもあり、この作品は多くの読者の心をつかみました。
直木賞の選考会では、選考委員たちから圧倒的な支持を受けます。川口松太郎が「委員全部が賛成し、満点であった事は近年に珍しい」と述べたのをはじめ、多くの委員がその完成度を絶賛しました。まさに、同級生の川端康成も認めた「老新人」が、その実力を見せつけた瞬間でした。
仏教学者としての深い知見と、波乱万丈の人生経験から生み出される佐藤得二の作品は、今なお多くの読者を魅了しています。デビュー作にして直木賞を受賞した小説から、学者としての彼の思想に触れられる専門書まで、その著作は多岐にわたります。
ここでは、佐藤得二の作品世界を知る上で欠かせない代表的な著作を3作品、ランキング形式でご紹介します。彼の異色のキャリアがどのように作品に結実しているのか、ぜひ確かめてみてください。
佐藤得二の作家としての名を世に知らしめた、記念すべきデビュー作です。親戚の女性から聞いた話を基に、明治から昭和にかけての激動の時代を、髪結いとして生き抜いた女性の生涯を描いた一代記。1963年に刊行されると、同年の第49回直木賞を受賞しました。
この作品は、直木賞受賞作として初めてベストセラーのトップ10に入るなど、商業的にも大きな成功を収めました。その壮絶な物語は多くの人々の共感を呼び、佐藤得二を知る上で、まず手に取るべき一冊と言えるでしょう。
ふくちい一人の女性の人生を通して、時代の大きなうねりを感じられる作品だよ。わたしもその力強さに圧倒されちゃった!
『仏教の日本的展開』は、佐藤得二が小説家としてデビューする以前の1936年(昭和11年)に刊行した、仏教学者としての彼の代表作です。この著作は、日本における仏教がどのように受容され、独自の発展を遂げてきたかを論じたもので、名著として高く評価されています。
小説家・佐藤得二の背景にある、深い思索や人間観の源流に触れることができる一冊です。彼の作品世界をより深く理解したい読者にとって、避けては通れない重要な著作と言えるでしょう。



小説じゃないけど、作者の考え方の根っこがわかる一冊だよ。これを読むと『女のいくさ』も違って見えるかもしれないね。
この著作は、1936年に『日本的教養の根拠 日本地人論』として刊行され、1942年に改題されたものです。佐藤得二が学者として、日本の文化や国民性について考察した一冊であり、彼の幅広い教養と知見がうかがえます。
小説作品ではありませんが、彼がどのような視点で日本という国や人々を見つめていたのかを知ることができます。作家・佐藤得二を形作った思想的背景に興味がある方におすすめです。



ちょっと難しいテーマかもだけど、佐藤得二っていう人が何を考えていたか知れるのが面白いんだ。わたしは興味津々だよ。
佐藤得二の代表作であり、彼を一夜にして人気作家へと押し上げた『女のいくさ』。64歳の「老新人」が描いたこの物語は、なぜ多くの人々の心を打ち、直木賞という栄誉に輝いたのでしょうか。
その魅力は、一人の女性の壮絶な人生を通して、近代日本の歩みそのものを描ききった点にあります。ここからは、この不朽の名作のあらすじと読みどころを、さらに詳しく解説していきます。
『女のいくさ』は、明治初期から現代(刊行当時)に至るまでを、一人の女性の視点から描いた物語です。主人公は、髪結いとして身を立て、その腕一本で成功を収めます。しかし、売れない台本作家と結婚したことから、彼女の人生は大きく揺れ動いていきます。
夫に裏切られながらも、決して屈することなく自らの人生を切り拓いていく主人公の姿は、まさに「いくさ」そのもの。激動の時代背景とともに、女性の持つたくましさや情の深さ、そして哀しみが鮮やかに描き出されています。
この作品が絶賛された最大の理由は、その圧倒的なリアリティにあります。佐藤得二は、親戚の女性から聞いた実話を基にこの物語を構築しました。そのため、作中のエピソードや人物描写には、作り物ではない「事実の持つ力」がみなぎっています。
直木賞の選考委員であった大佛次郎は、「今の時代からはもう失われて来た根気とあくの強い、しかも自己の存分のものである庶民の生活の根性の深さを面白しとする」と評しました。また、別の選考委員も「本当の話の持っている押して来る力に圧倒的なものがあった」と述べており、多くのプロの作家たちがその事実に裏打ちされた物語の力に感嘆したことがわかります。
仏教学者から64歳で華々しく作家デビューを果たした、異色の経歴の持ち主・佐藤得二。彼の作品は、深い学識と波乱に満ちた人生経験に裏打ちされた、独特の魅力を持っています。
その世界に初めて触れるなら、やはり直木賞を受賞したデビュー作『女のいくさ』が最適です。一人の女性の壮絶な一代記を通して、時代を生き抜くことの力強さと人間の業の深さを感じ取ることができるでしょう。この一冊を入り口に、佐藤得二の奥深い文学の世界を旅してみてはいかがでしょうか。