【2025年最新】料理小説のおすすめランキングTOP30

読めばお腹がすいてくる、心も満たされるおすすめ料理小説

ページをめくるたびに、おいしそうな香りが漂ってくるかのような「料理小説」。文章で綴られる丁寧な料理の描写は想像力をかき立て、時には写真よりも鮮明に私たちの食欲を刺激します。物語に登場する料理は、単なる食事ではなく、登場人物たちの心を温め、人と人との関係をつなぐ大切な役割を果たしているのです。

美味しいごはんが、悲しいことや辛いことを乗り越える力をくれることもあります。この記事では、読めばお腹がすくだけでなく、心までじんわりと満たされる、そんな魅力あふれる料理小説の世界へご案内します。あなたにとって特別な一冊がきっと見つかるはずです。

【2025年最新】小説のプロが選ぶ！料理小説おすすめランキングTOP30

お待たせいたしました！私たち『小説ヨミタイ』編集部が、数ある料理小説の中から珠玉の30作品を厳選しました。心温まる人情話から、日常に潜む小さな謎を解き明かすミステリー、そして人生の再出発を描く物語まで、個性豊かなラインナップでお届けします。

食堂やレストラン、カフェ、お弁当屋さんなど、さまざまなお店を舞台に繰り広げられる物語は、きっとあなたの心とお腹を刺激するはずです。さあ、あなたのお気に入りの一冊を見つける旅に出かけましょう。

1位『みをつくし料理帖』髙田郁

栄えある第1位は、髙田郁さんの『みをつくし料理帖』シリーズです。この物語は、少女の頃に水害で天涯孤独の身となった主人公・澪が、江戸の町で料理人として成長していく姿を描いた時代小説。馴染みの薄い上方料理のお店「つる家」で腕を振るう澪が、困難を乗り越えながら人々と心を通わせていく様子が丁寧に描かれています。

なんといっても魅力的なのは、澪が作る数々の料理の美味しそうな描写です。江戸の人々の舌に合うように工夫を凝らした料理は、読んでいるだけでお腹が鳴ってしまいそう。人情味あふれるストーリーと、心温まる料理が織りなす物語は、多くの読者の心を掴んで離しません。

2位『かもめ食堂』群ようこ

第2位は、群ようこさんの『かもめ食堂』。フィンランドのヘルシンキを舞台に、日本人女性サチエが小さな食堂をオープンするところから物語は始まります。看板メニューは、日本人にとってなじみ深い「おにぎり」。最初はなかなかお客さんが入らず苦労しますが、訳ありの日本人女性ミドリやマサコとの出会いをきっかけに、食堂は少しずつ地元の人々の憩いの場となっていきます。

淡々としていながらも、どこかユーモラスで心温まる空気感が本作の魅力です。登場人物たちが、おいしい食事を通してゆっくりと心を通わせていく様子は、読んでいてとても心地よい気持ちにさせてくれます。何気ない日常の愛おしさを感じさせてくれる、優しい物語です。

3位『食堂かたつむり』小川糸

第3位にランクインしたのは、小川糸さんのデビュー作『食堂かたつむり』です。失恋のショックで声を失ってしまった主人公・倫子が、故郷に戻り、一日一組限定の食堂を開く物語。彼女が作る料理は、食べた人の願いが叶うと評判になり、様々な悩みを抱えた人々が食堂を訪れます。

この小説は、イタリアのバンカレッラ賞料理部門や、フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞を受賞するなど、世界的にも評価されています。ファンタジックな世界観の中に、ままならない人間関係やリアルな感情が描かれており、物語に深く引き込まれます。食べることを通して、人が再生していく姿を描いた感動的な一冊です。

4位『ランチのアッコちゃん』柚木麻子

第4位は、柚木麻子さんの『ランチのアッコちゃん』です。派遣社員の三智子が、謎多き上司・黒川敦子（アッコちゃん）との不思議な「ランチのとりかえっこ」をきっかけに、少しずつ成長していく物語。アッコさんが作るお弁当や、指定されたお店で出会う人々との交流を通して、三智子の毎日が輝き始めます。

アッコさんの出す指令は一見すると無茶ぶりのようですが、そこには仕事や人生を豊かにするヒントが隠されています。美味しそうなランチの描写はもちろん、働く女性が前向きな気持ちになれるストーリーが多くの共感を呼んでいます。読めば元気がもらえる、ビタミン剤のような小説です。

5位『鴨川食堂』柏井壽

京都の路地裏にひっそりと佇む「鴨川食堂」が舞台の本作が5位にランクイン。この食堂は、「思い出の食、探します」という一行広告だけを頼りに訪れる客のために、腕利きの料理人である父娘が、客の記憶の中の味を再現する物語です。

依頼人たちが語る思い出の料理には、それぞれの人生のドラマが詰まっています。親子丼、ナポリタン、ハンバーグといった馴染み深い料理から、今はもう食べられない特別な一皿まで、再現される料理は様々。食を通して過去と向き合い、明日への一歩を踏み出す人々を描いた、心温まる連作短編集です。

6位『食堂のおばちゃん』山口恵以子

第6位は、山口恵以子さんの『食堂のおばちゃん』です。昼は定食屋、夜は居酒屋として営業する「はじめ食堂」を舞台に、仲の良い嫁姑が切り盛りする日常を描いた人情物語。焼き魚やコロッケといった家庭的なメニューから、たらこの白滝炒り煮などの気の利いた小鉢まで、登場する料理はどれも素朴で食欲をそそります。

この食堂に集うのは、人情味あふれる魅力的な常連客たち。彼らが織りなす、穏やかでほっこりするストーリーが本作の魅力です。巻末には作中に登場した料理のレシピが掲載されているのも嬉しいポイント。読んでいると、自分も「はじめ食堂」の常連になったような温かい気持ちになれるシリーズ作品です。

7位『パンとスープとネコ日和』群ようこ

『かもめ食堂』の群ようこさんによる、もう一つの名作が7位にランクイン。母の死をきっかけに、長年勤めた出版社を辞めたアキコが、母の店を改装してサンドイッチとスープだけを出すお店を始める物語です。

アキコがマイペースな猫のたろと暮らしながら、新しい人生を歩んでいく姿が淡々と、しかし温かく描かれています。お店に集う人々との何気ない会話や、丁寧に作られるサンドイッチとスープの描写が、心地よい時間を感じさせてくれます。頑張りすぎず、自分らしく生きていくことの大切さを教えてくれるような、優しい一冊です。

8位『あつあつを召し上がれ』小川糸

第8位は、『食堂かたつむり』の小川糸さんが描く、食と人生をテーマにした7つの物語が詰まった短編集です。ポトフ、グラタン、担々麺、バーニャカウダなど、様々な料理を軸に、登場人物たちの心温まるドラマが繰り広げられます。

たとえば、亡くなった恋人が作ってくれた思い出のポトフ。そのレシピを再現することで、悲しみを乗り越えようとする女性の物語など、どの話も「食」が人の心を癒し、前へ進む力を与えてくれることを教えてくれます。読んだ後には、大切な誰かのために温かい料理を作りたくなる、そんな優しい気持ちにさせてくれる作品です。

9位『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』古内一絵

第9位は、心と体に優しいメニューで疲れた人々を迎える深夜カフェ「マカン・マラン」を舞台にした物語です。店主は、派手なメイクと衣装に身を包んだドラァグクイーンのシャールさん。彼の作るポトフやマクロビオティクス料理と、明るく前向きな言葉が、訪れる客たちの心をそっと解きほぐしていきます。

仕事や人間関係に悩み、生きづらさを感じている登場人物たちが、シャールさんとの出会いを通して自分の居場所を見つけていく姿が描かれます。日常に疲れた時に何度も読み返したくなる、優しさに満ちた連作短編集です。

10位『最後の晩ごはん』椹野道流

第10位は、少し不思議な設定が魅力の『最後の晩ごはん』シリーズです。若くして料理人になった五十嵐海里は、ある事情から故郷の芦屋に戻り、定食屋「ばんめし屋」を営むことに。しかし、そこは普通の定食屋ではなく、海里にしか見えない幽霊のお客さんがやってくる場所でした。

海里は、成仏できずにいる幽霊たちが「最後に食べたい」と願う思い出の料理を再現していきます。生前の心残りを抱えた幽霊たちと、彼らに寄り添う海里の交流を描いた、切なくも心温まる物語。料理の描写はもちろん、ミステリー要素も楽しめる作品です。

11位『タルト・タタンの夢』近藤史恵

商店街の小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした、ミステリー仕立てのグルメ小説が11位にランクイン。無口で少し無愛想ながらも、天才的な洞察力を持つシェフ・三舟さんが、客たちが持ち込む日常の謎を、絶品のフランス料理と共に解き明かしていきます。

登場するフランス料理は、気取らないけれど本格的で、読んでいるだけでお腹が空いてきます。ミステリーといっても人が傷つくような事件はなく、心温まる謎解きが中心なので、安心して楽しめます。三舟シェフの作る料理と、彼のさりげない優しさに癒される、上品で心地よい一冊です。

12位『東京すみっこごはん』成田璃子

第12位は、東京の片隅にある「共同台所」を舞台にした心温まる物語『東京すみっこごはん』です。年齢も職業もバラバラな人々が、ひょんなことから集まり、料理当番を決めてみんなで食卓を囲むという、少し変わった共同生活を描いています。

参加者たちは、それぞれに悩みや事情を抱えています。しかし、一緒に料理を作り、同じ釜の飯を食べることを通して、少しずつ心を通わせ、家族のような関係を築いていきます。人と人との関わりの中で傷ついた心を癒してくれるのもまた、人との温かい繋がりと美味しいごはんなのだと教えてくれる作品です。

13位『まずはこれ食べて』原田ひ香

第13位は、60代の女性3人が営む総菜屋を舞台にした、原田ひ香さんの『まずはこれ食べて』です。それぞれが悩みを抱えながらも、美味しいお惣菜を通して支え合う彼女たちの関係性が心地よく描かれています。

物語に登場するお惣菜は、どれも家庭的で親しみやすく、読んでいると思わず食べたくなってしまうものばかり。酸いも甘いも噛み分けた大人だからこその悩みや葛藤、そして友情が、美味しい料理と共に丁寧に紡がれます。「食べること」が「生きること」に繋がっていると感じさせてくれる、心にじんわりと染みる物語です。

14位『弁当屋さんのおもてなし』喜多みどり

恋人に裏切られ、傷心で東京から札幌へ転勤してきた主人公・千春。そんな彼女の心を癒したのは、路地裏で見つけた小さな弁当屋「くま弁」でした。店員のユウさんが作る、北海道の美味しい食材をふんだんに使ったお弁当と、彼の優しさに触れるうちに、千春は少しずつ元気を取り戻していきます。

本作の魅力は、なんといっても北海道のグルメが満載なところ。ザンギやスープカレーなど、ご当地グルメが登場するお弁当は、読んでいるだけでよだれが出てきそう。傷ついた心を美味しい手料理が癒していく、ラブコメ要素も楽しめる心温まる物語です。

15位『うしろむき夕食店』冬森灯

第15位は、少し変わった定食屋「うしろむき夕食店」が舞台の物語です。この店の主人は、客の「うしろめたい記憶」を買い取り、その記憶にまつわる料理を再現してくれます。過去の後悔や罪悪感を抱えた人々がこの店を訪れ、思い出の料理を食べることで、過去と向き合い、新たな一歩を踏み出していきます。

タルタルソースたっぷりのエビフライや、マカロニグラタン、ハンバーグなど、登場するのはどこか懐かしい家庭料理の数々。手作りの温かい料理が、登場人物たちの凍った心を優しく溶かしていく様子が感動的に描かれています。読後、心がじんわりと温かくなる一冊です。

16位『彼女のこんだて帖』角田光代

直木賞作家・角田光代さんが描く、食と恋愛をテーマにした連作短編集が16位にランクイン。物語の中心となるのは、料理研究家のアシスタントとして働く主人公・りえ子。彼女の日常や恋愛模様が、日々の食事の描写を通してリアルに描かれます。

恋人と食べる手巻き寿司、一人で食べるインスタントラーメン、仕事仲間と囲む鍋。何気ない食事の風景が、登場人物たちの心情や関係性の変化を巧みに映し出します。派手な事件は起こりませんが、誰もが経験するような日常の機微が丁寧に紡がれており、深い共感を呼びます。食べることの喜びと、誰かと食卓を囲むことの愛おしさを再発見させてくれる作品です。

17位『東京近江寮食堂』渡辺淳子

第17位は、東京にある滋賀県の県人寮「近江寮」の食堂を舞台にした物語です。夫に先立たれ、故郷の滋賀で暮らしていた68歳の主人公・妙子が、ひょんなことから上京し、この寮の賄いさんとして働くことになります。

慣れない土地で、個性豊かな寮生たちのために食事を作る妙子の奮闘ぶりが、温かい筆致で描かれています。故郷の食材を使った料理や、寮生たちのリクエストに応えたメニューなど、登場する料理はどれも愛情たっぷり。食べることを通して、世代の違う人々が心を通わせていく様子に、心がぽかぽかしてきます。「食べること」の大切さがじんわりと伝わってくる、感動的な長編小説です。

18位『居酒屋ぼったくり』秋川滝美

東京下町にひっそりと佇む居酒屋「ぼったくり」。その物騒な店名とは裏腹に、そこは美味しい料理と人情にあふれた温かい場所でした。若き姉妹が切り盛りするこの店を舞台に、常連客たちが織りなす人間模様を描いた人気シリーズが18位です。

この店の魅力は、美味しいお酒と、それに合う絶品の家庭料理。そして何より、店主姉妹と常連客たちの温かい心の交流です。日々の疲れや悩みを抱えた人々が、「ぼったくり」に集い、美味しいものを食べ、語り合うことで、また明日への活力を得ていきます。読んでいるだけで、自分もその輪に加わって一杯やりたくなるような、心温まる物語です。

19位『神様の定食屋』中村颯希

第19位は、少し不思議で心温まるファンタジー小説『神様の定食屋』です。料理人の青年・高坂が迷い込んだのは、神様が営む定食屋。そこで彼は、神様の気まぐれで、訪れる客たちの「食べたいもの」を当てるという試練を与えられます。

客が本当に求めているのは、単なる料理ではなく、その料理にまつわる思い出や温かい気持ち。高坂は、客との対話を通して、その心を読み解き、最高の一皿を提供していきます。ファンタジックな設定ながら、描かれるのは人の心の機微や食事が持つ力。読後、優しい涙が流れるような、心癒される物語です。

20位『本日のメニューは。』谷瑞恵

第20位は、小さな洋食屋「ミツバチ」を舞台にした、心温まる連作短編集です。店主の娘である主人公・ぷらちなは、料理上手な父が作る美味しい料理と、店に集う個性的な常連客たちに囲まれて育ちました。

物語は、ぷらちなの視点を通して、常連客たちが抱える悩みや秘密、そして彼らの人生が、美味しい洋食と共に描かれます。ハンバーグ、オムライス、エビフライといった王道の洋食メニューが、登場人物たちの心を繋ぎ、物語を彩ります。どこか懐かしくて優しい味わいの洋食のように、読んだ人の心をほっこりとさせてくれる一冊です。

21位『縁結びカツサンド』蒼井上鷹

第21位は、一風変わった移動販売のサンドイッチ屋さん「ブルー・ベア」の物語。店主の作る絶品カツサンドは、なぜか食べた人に良縁をもたらすと評判です。この不思議なカツサンドを求めて、様々な悩みを抱える人々が店を訪れます。

ミステリー作家でもある著者が描くだけあって、単なる人情話では終わりません。訪れる客たちの悩みや、店主自身の過去にまつわる謎が、物語のスパイスとなっています。サクサクの衣をまとったジューシーなカツサンドの描写は、まさしく飯テロ。美味しい謎解きと心温まるストーリーが楽しめる、ユニークな料理小説です。

22位『村上龍料理小説集』村上龍

数々の衝撃作を世に送り出してきた村上龍さんによる、異色の料理小説集が22位にランクイン。本作に収められているのは、官能的で、どこか退廃的な雰囲気をまとった物語たちです。料理の描写は驚くほど緻密で、五感を激しく揺さぶります。

物語に登場するのは、フォアグラのソテー、キャビア、トリュフといった高級食材から、シンプルなペペロンチーノまで様々。しかし、それらは単なる食事としてではなく、登場人物たちの欲望や孤独、虚無感を象徴するものとして描かれます。一般的な心温まる料理小説とは一線を画す、刺激的で文学的な味わいが楽しめる一冊です。

23位『注文の多い料理小説集』アンソロジー

人気作家たちが「料理」をテーマに腕を振るった、豪華なアンソロジーが23位です。坂木司さん、近藤史恵さん、原田ひ香さんなど、グルメ小説の名手たちが集結。それぞれの作家が持つ個性豊かな味わいを一冊で楽しめる、まさに「美味しいとこどり」の作品集です。

ミステリー、人情話、ファンタジーまで、収録されている物語のジャンルは多岐にわたります。一編一編が短いので、読書が苦手な方や、すきま時間に少しずつ読みたい方にもおすすめです。様々な料理と物語のコースを、心ゆくまでご堪能ください。

24位『とにもかくにもごはん』小野寺史宜

第24位は、ひょんなことから出会った男女が、ただひたすらに美味しいごはんを求めて旅をする物語『とにもかくにもごはん』です。体を壊して失職中の青年・颯太と、大学を休学中の食いしん坊女子・ひより。人生に迷う二人が、颯太の亡き父が遺した食堂の新メニューを探す旅に出ます。

ひよりの食べっぷりがとにかく見事で、読んでいるこちらも幸せな気分になります。旅先で出会う人々の人情や、美味しい料理が、傷ついた二人の心を癒していく様子が温かく描かれています。料理が持つ力と、人との出会いの大切さを改めて感じさせてくれる、読後感の良い一冊です。

25位『ときどき旅に出るカフェ』近藤史恵

店主が気まぐれに旅に出てしまうため、「ときどき」しか開いていないカフェ「アーク」。このカフェを営むのは、かつてバリスタとして名を馳せた青年・円。彼が淹れる極上の一杯と、手作りのスイーツが、訪れる人々の心を癒していく物語です。

カフェを訪れる客たちは、それぞれに悩みを抱えています。円は、彼らの話に静かに耳を傾け、その心に寄り添うようなコーヒーを淹れます。コーヒーの豊かな香りと味わいの描写が素晴らしく、読んでいると無性にコーヒーが飲みたくなるはず。日常から少し離れて、心穏やかな時間を過ごしたい時にぴったりの一冊です。

26位『めぐり逢いサンドイッチ』谷瑞恵

公園のそばにあるサンドイッチ専門店「ピクニック・バスケット」を舞台にした、心温まる連作短編集が26位です。店主の作る、具材たっぷりの美味しそうなサンドイッチが、店を訪れる人々の心を繋いでいきます。

登場人物それぞれにスポットを当てた物語が展開され、彼らが抱える悩みや喜びが、サンドイッチを通して描かれます。ベーシックながらも丁寧に作られたサンドイッチの描写は、パン好きにはたまりません。読んだ後には、お気に入りの具材を挟んだサンドイッチを持って、ピクニックに出かけたくなるような、爽やかで優しい物語です。

27位『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下奈都

『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞した宮下奈都さんが描く、結婚と家族をテーマにした物語。結婚式の「引き出物」を作る仕事を辞めた主人公・明日羽が、叔母のロッカさんと共に、結婚しない男女のためのパーティ「結婚しない披露宴」の仕事を始めます。

物語を彩るのは、ロッカさんが作る、温かくて体に優しい料理の数々。太陽の味がするパスタ、滋味深い豆のスープ。それらの料理が、様々な事情を抱える登場人物たちの心をそっと解きほぐしていきます。多様な幸せの形を肯定してくれる、優しさに満ちた一冊です。

28位『キッチン常夜灯』たかはしみき

夜から朝にかけてだけ開店する不思議な店「キッチン常夜灯」。火事をきっかけに住む場所を失った主人公のみもざは、この店と出会い、物静かなシェフが作る温かい料理に心を癒されます。

眠れない夜を過ごす人々が、この店の灯りに引き寄せられるように集まってきます。シェフが丁寧に作るスープや料理には、食べた人を癒し、元気にする不思議な力がありました。みもざは、店に集う人々との関わりを通して、自分の進むべき道を見つめ直していきます。温度まで伝わってきそうなほど魅力的な料理の描写が秀逸で、読んでいるだけで心の芯から温まるような作品です。

29位『おもいでの味』平岩弓枝

時代小説の名手・平岩弓枝さんが描く、江戸の町を舞台にした人情味あふれる料理小説が29位にランクイン。今はもう食べられなくなった思い出の味を再現する料理屋を舞台に、江戸に生きる人々の喜びや悲しみが丁寧に描かれます。

登場するのは、桜湯やたぬき汁といった素朴ながらも心に染みる料理の数々。江戸の風情を感じながら、心温まる人情話を楽しめる、味わい深い一冊です。

30位『星降る宿の恵みごはん』織江邑

ランキングの最後を飾るのは、美しい自然に囲まれた山の宿「ほしふる宿」を舞台にした物語です。都会での生活に疲れ、祖母が遺したこの宿を継ぐことにした主人公の莉緒。彼女が、地元の食材をふんだんに使った「恵みごはん」で、訪れる客たちをもてなします。

満点の星空、澄んだ空気、そして美味しいごはん。宿を訪れる人々は、都会の喧騒で忘れていた大切なものを取り戻していきます。美しい自然描写と、心づくしの料理が、疲れた心を優しく洗い流してくれるような、癒やしに満ちた一冊。読んだ後には、きっと旅に出たくなるはずです。

あなたのお腹と心を満たす、おすすめの料理小説を見つけよう

ここまで、様々な料理小説をランキング形式でご紹介してきましたが、気になる一冊は見つかりましたか？心温まる人情話から、日常の謎を解くミステリー、そして人生の再出発を描く物語まで、料理小説の世界は実に多彩です。

美味しい料理の描写は、私たちのお腹を刺激するだけでなく、登場人物たちの心を癒し、人と人とを繋ぐ架け橋となります。忙しい毎日の中で少し心が疲れたとき、ぜひ料理小説を手に取ってみてください。きっと、美味しい物語があなたの心にもじんわりと栄養を与えてくれるはずです。