【2025年最新】登山小説のおすすめランキングTOP28

なぜ今、登山小説が面白いのか？おすすめの名作から最新作までご紹介

雄大な山の景色、厳しい自然との闘い、そして極限状況で試される人間の精神力。登山小説は、私たちを日常から解き放ち、手に汗握る興奮と深い感動に満ちた世界へと誘ってくれます。

登山という行為そのものが持つ魅力はもちろん、そこに描かれる人間ドラマこそが、多くの読者を惹きつけてやみません。仲間との絆、自らの限界への挑戦、そして自然への畏敬の念。ページをめくるたびに、登場人物たちと共に一歩一歩、困難な道のりを進んでいるかのような感覚を味わえるでしょう。

この記事では、登山小説の金字塔といえる不朽の名作から、新しい視点で山の魅力を描いた近年の話題作まで、編集部が厳選した28作品をランキング形式でご紹介します。あなたの心に深く刻まれる一冊が、きっと見つかるはずです。

登山小説のおすすめランキングTOP28

ここからは、いよいよ登山小説のおすすめランキングを発表します。山に魅せられた人々の熱いドラマが詰まった作品ばかりです。過酷な挑戦を描いたノンフィクションから、山を舞台にしたミステリー、心温まる人間ドラマまで、様々なジャンルの小説がランクインしました。

あなたのお気に入りの一冊を見つけて、壮大な山々の世界に浸ってみませんか？それでは、TOP28を見ていきましょう。

1位『神々の山嶺』 夢枕獏

山岳小説の最高峰として名高い『神々の山嶺』は、なぜ人は山に登るのかという根源的な問いを、圧倒的な熱量で読者に突きつける傑作です。物語は、カメラマンの深町誠がカトマンズで古いカメラを発見したことから始まります。そのカメラは、登山史上最大の謎――ジョージ・マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか――を解く鍵を秘めていました。

深町はカメラの謎を追ううちに、孤高の天才クライマー、羽生丈二の存在に行き着きます。羽生の過去を追う深町は、やがて前人未到とされるエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂という、羽生の壮絶な挑戦に巻き込まれていくのです。読む者の魂を揺さぶる、男たちの執念の物語です。

2位『孤高の人』 新田次郎

実在した登山家、加藤文太郎の生涯をモデルに描かれた、山岳小説の不朽の名作です。社会に馴染めず、ただひたすらに山の魅力に取り憑かれた主人公は、誰ともパーティを組まず単独行を貫き、驚異的なスピードで日本アルプスの山々を踏破していきます。

なぜ彼は一人で山に登り続けるのか。その問いが全編を貫くテーマとなっています。周囲の無理解や嫉妬に晒されながらも、自らの信念を貫き、山と対峙し続けた彼の生き様は、読む者に強烈な印象を残します。登山を愛する人々の間ではバイブル的な一冊とも言われ、多くの読者に影響を与え続けています。

3位『凍』 沢木耕太郎

『深夜特急』で知られる沢木耕太郎が、実在の登山家・山野井泰史とその妻・妙子の壮絶なヒマラヤ登山を描いたノンフィクション小説です。二人が挑んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカン。物語は、雪崩、滑落、そして重度の凍傷といった、想像を絶する極限状況との闘いを克明に記録しています。

生きて帰るため、彼らが下した究極の選択とは何だったのか。圧倒的な臨場感で描かれる奇跡の登山行と、二人を繋ぐ深い絆は、読む者の胸を強く打ちます。本作は講談社ノンフィクション賞を受賞するなど高く評価されており、ノンフィクション文学の金字塔とも言える作品です。

4位『八甲田山死の彷徨』 新田次郎

明治35年に実際に起きた、日本陸軍の八甲田雪中行軍遭難事件を題材にした小説です。日露戦争を目前に控え、寒冷地での戦闘訓練として行われたこの行軍は、記録的な寒波と猛吹雪に遭遇し、参加者210名のうち199名が死亡するという世界最大級の山岳遭難事故となりました。

物語は、悲劇的な結末を迎えた青森第5連隊と、ほぼ同じ行程を無事踏破した弘前第31連隊の二つの部隊を対比的に描いています。本作は自然の猛威だけでなく、指揮系統の混乱や組織の硬直化といった人災の側面にも鋭く切り込み、極限状態における人間の弱さと強さを浮き彫りにしています。実際に起きた悲劇の重みと、迫真の筆致が読む者を圧倒する作品です。

5位『劒岳〈点の記〉』 新田次郎

明治時代末期、前人未到とされていた北アルプスの難峰・劒岳への初登頂を目指した、陸軍測量手たちの苦闘を描いた物語です。これは単なる冒険譚ではなく、日本の近代化のために地図を完成させるという国家的な使命を背負った男たちの、誇りと意地をかけた挑戦の記録です。

当時の測量技術や装備の限界、そして立ちはだかる劒岳の険しい自然。絶望的な状況の中、彼らはいかにして困難を乗り越えていったのか。測量官の柴崎芳太郎と、彼を支える山の案内人・宇治長次郎との間に芽生える身分を超えた友情も、物語に深い感動を与えます。山に挑む人間の情熱と、それを支える人々の絆を描いた名作です。

6位『青春を山に賭けて』 植村直己

国民栄誉賞を受賞した世界的な冒険家・植村直己が、自らの青春時代を綴った自伝的ノンフィクションです。無名だった若者が、アルバイトで資金を貯めながら世界中を放浪し、五大陸の最高峰を次々と制覇していく姿が、エネルギッシュな筆致で描かれています。

彼の冒険は、単に山に登るだけではありません。アマゾン川を筏で下るなど、その行動は常に規格外。彼の純粋な好奇心と、夢に向かって突き進む圧倒的な行動力は、読む者に勇気と希望を与えてくれます。「山登りを優劣でみてはいけない」という彼の言葉に象徴されるように、登山への真摯な姿勢が胸を打つ一冊です。

7位『春を背負って』 笹本稜平

奥秩父の山小屋を舞台に、都会での生活に疲れた人々が再生していく姿を描いた心温まる物語です。主人公の長嶺亨は、山小屋を営んでいた父の突然の死をきっかけに、その遺志を継いで小屋の主人となることを決意します。慣れない山での生活に戸惑いながらも、亨は小屋を訪れる様々な事情を抱えた人々と触れ合う中で、生きる意味を見出していきます。

雄大な自然の美しさと、そこで繰り広げられる人間ドラマが巧みに織り交ぜられています。荷物を背負って山を登る「歩荷（ぼっか）」という仕事を通して、登場人物たちがそれぞれの人生の重荷を「背負う」姿が感動的に描かれます。2014年には映画化もされた人気作です。

8位『黒部の山賊』 伊藤正一

北アルプスの最奥部、黒部源流を舞台に、山で生きる人々の暮らしを生き生きと描いた作品です。著者は、三俣山荘や雲ノ平山荘などを築いた伊藤正一氏本人。これは、彼が戦後の混乱期に黒部の山々に入り、山賊と恐れられた猟師たちと交流しながら、山小屋を切り開いていった実話に基づいています。

厳しい自然環境の中で、たくましく生きる山賊たちの知恵やユーモア、そして彼らとの心温まる交流が、魅力的に描かれています。イワナ釣りや山菜採りなど、山での暮らしの描写も豊かで、読者を黒部の雄大な自然へと誘います。山と人間の関わり方を深く考えさせられる、味わい深い一冊です。

9位『氷壁』 井上靖

1955年に実際に起きたナイロンザイル切断事件をモデルに、山に生きる男たちの友情と恋愛、そして死の謎を描いた山岳小説の古典的名作です。物語は、主人公の親友が前穂高岳での登山中に墜落死したことから始まります。切れるはずのないザイルがなぜ切れたのか。その死に疑問を抱いた主人公は、真相の究明に乗り出します。

山岳サスペンスとしての面白さはもちろん、都会と自然、愛と友情といった対照的なテーマを織り交ぜながら、登場人物たちの心の葛藤を深く描いています。厳しい自然と対峙する登山家の孤独や、複雑な人間関係が絡み合うストーリーは、時代を超えて多くの読者を魅了し続けています。

10位『山女日記』 湊かなえ

「イヤミスの女王」として知られる湊かなえが、登山の世界を舞台に女性たちの人生模様を描いた連作短編集です。結婚や仕事、人間関係など、様々な悩みを抱えた女性たちが、それぞれの思いを胸に山に登ります。槍ヶ岳や白馬岳など、実在する名峰が舞台となっており、登山を通して自分自身と向き合い、新たな一歩を踏み出していく姿が描かれます。

各章の主人公は異なりますが、物語が緩やかにつながっており、読み進めるうちに全体像が見えてくる構成も見事です。湊かなえ自身の登山経験が反映されたリアルな山の描写と、女性たちの繊細な心理描写が共感を呼びます。読後、清々しい気持ちになれる一冊です。

11位『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫

1985年に起きた日航ジャンボ機墜落事故という、世界最大規模の航空事故を題材にした小説です。物語の舞台は、現場となった群馬県の地方新聞社。主人公である遊軍記者の悠木和雅は、事故報道の全権デスクに任命され、未曾有の大事件をめぐる報道の最前線で、極限の興奮状態「クライマーズ・ハイ」に陥りながら奮闘します。

スクープをめぐる記者たちの対立、錯綜する情報、そして報道とは何かという葛藤。新聞社の内部が臨場感たっぷりに描かれ、社会派ドラマとして非常に見ごたえのある作品です。登山そのものを描いた小説ではありませんが、極限状態における人間の心理を『クライマーズ・ハイ』という言葉で巧みに表現した傑作です。

12位『空へ』 ジョン・クラカワー

1996年にエベレストで発生し、日本人女性を含む8人もの登山家が命を落とした大量遭難事故。その惨劇の一部始終を、ジャーナリストであり登山家でもある著者が、当事者として克明に記録したノンフィクションの傑作です。

公募隊のメンバーとして登山に参加した著者自身の視点から、天候の急変、判断のミス、そして商業化されたエベレスト登山の問題点などが、冷静かつ詳細に描かれています。生還した者としての苦悩や葛藤も綴られており、単なる事故の記録にとどまらない、人間の生と死を深く見つめた作品として、世界中で大きな反響を呼びました。

13位『処女峰アンナプルナ』 モーリス・エルゾーグ

1950年、人類が初めて8000メートル峰の登頂に成功した、フランス隊によるアンナプルナ遠征の記録です。著者は、その遠征隊を率い、自ら山頂に立ったモーリス・エルゾーグ本人。これは、登山史における金字塔であり、山岳文学の古典として世界中で読み継がれています。

当時の不十分な地図と装備で、未踏の高峰に挑む隊員たちの苦闘と情熱が、臨場感あふれる筆致で描かれています。登頂の歓喜、そして下山中に襲いかかる雪崩や重度の凍傷との壮絶な闘い。生と死の狭間をさまよう極限の体験記は、読む者に強烈な感動と衝撃を与えます。

14位『黒部の太陽』 木本正次

戦後の日本復興を支えた世紀の大事業、黒部ダム建設。その中でも最大の難関といわれた大町トンネルの掘削工事を、事実に基づいて描いた記録文学です。厳しい自然環境と、頻発する出水や崩落事故。絶望的な状況の中で、ダム建設に情熱を燃やす男たちの、不屈の挑戦を描いています。

この物語は、単なる土木工事の記録ではありません。困難な目標に向かって、知恵と勇気とチームワークで立ち向かう人々の姿を描いた、壮大な人間賛歌です。トンネルが貫通した瞬間の感動は、何物にも代えがたいものがあります。石原裕次郎主演で映画化もされ、多くの人々に感動を与えました。

15位『遥かなる未踏峰』 ジェフリー・アーチャー

「そこに山があるから」という言葉で知られる伝説の登山家、ジョージ・マロリーの生涯を描いた小説です。彼は1924年、エベレスト登頂に挑み、謎の失踪を遂げました。果たして彼は、公式記録よりも29年も早く、山頂に到達していたのか？この登山史上最大のミステリーに、ベストセラー作家ジェフリー・アーチャーが挑みます。

マロリーの情熱的な人生と、彼を支えた妻ルースとの愛の物語を軸に、第一次世界大戦の影や当時のイギリス社会を背景に、壮大なスケールで物語は展開します。史実とフィクションを巧みに織り交ぜながら、マロリーの謎に迫るストーリーは、読者をぐいぐいと引き込みます。

16位『生還者』 下村敦史

冬の北海道、吹雪の山中で起きた遭難事故。たった一人の生存者を除いて、パーティの仲間は全員死亡した。しかし、その唯一の生還者には、仲間を見殺しにしたという疑惑がかけられる。彼は本当に仲間を裏切ったのか、それとも他に真相があるのか。二転三転する展開から目が離せない、本格山岳ミステリーです。

閉ざされた雪山という極限の状況設定が、物語の緊迫感を高めます。登場人物たちの証言が食い違い、何が真実なのか分からなくなる中で、読者は巧みに張り巡らされた伏線に翻弄されます。ミステリーとしての完成度の高さはもちろん、極限状態における人間の心理を鋭く描いた作品としても読み応えがあります。

17位『銀嶺の人』 新田次郎

女性として世界で初めてマッターホルン北壁の登攀に成功した、二人の日本人女性クライマーをモデルにした物語です。主人公は、女医を目指す勝気な駒井淑子と、鎌倉彫の彫刻家で物静かな若林美佐子。性格は正反対ながらも、山への情熱で固く結ばれた二人が、男性中心だった当時の登山界で、ひたむきに岩壁に挑み続けます。

仕事を持ちながら厳しいトレーニングに励み、世界の高峰を目指す彼女たちの姿は、多くの読者に感動を与えます。華やかな成功の裏にある葛藤や、二人の友情の行方も丁寧に描かれており、読み応えのある長編小説です。実際にモデルとなったのは、今井通子さんと若山美子さんです。

18位『生きるぼくら』 原田マハ

いじめが原因で引きこもりになった24歳の青年、麻生人生が、人生を取り戻していく姿を描いた感動的な物語です。ある日突然、母親が失踪。残された年賀状を手がかりに、人生は祖母が暮らす長野県の蓼科へ向かいます。そこで彼は、豊かな自然や人の温かさに触れ、米作りを通して生きる喜びを見出していきます。

この小説は、厳密な意味での登山小説ではありませんが、八ヶ岳の麓に広がる美しい自然が重要な舞台となっています。傷ついた主人公が、土に触れ、作物を育てるという経験を通じて再生していく過程が丁寧に描かれており、読後は温かい気持ちに包まれます。

19位『山岳捜査』 笹本稜平

北アルプスを舞台に、山岳警備隊の隊員たちが事件の真相に迫る、人気の山岳ミステリーシリーズです。主人公は、元刑事で山岳警備隊に転身した道原伝馬。彼の鋭い推理と、山を知り尽くした隊員たちの活躍が、物語の大きな魅力となっています。

美しい山々の風景描写と、そこで起きる事件の緊迫感のコントラストが絶妙です。登山や山岳救助に関する専門的な知識も豊富に盛り込まれており、リアリティのある描写が読者を引き込みます。山とミステリーが見事に融合した、エンターテインメント性の高い作品です。

20位『淳子のてっぺん』 唯川恵

女性として世界で初めてエベレスト登頂、そして七大陸最高峰登頂を成し遂げた登山家・田部井淳子さんの半生をモデルにした小説です。小柄で華奢な彼女が、いかにして世界の高峰を制覇していったのか。その原動力となったのは、純粋な山への憧れと、決して諦めない強い意志でした。

家庭を持ち、子育てをしながらも、自らの夢を追い続けた彼女の生き方は、多くの女性に勇気を与えます。恋愛小説の名手である唯川恵が、一人の女性としての田部井さんの喜びや葛藤を繊細に描き出しており、共感を呼びます。実話に基づいたストーリーは、力強い感動を与えてくれます。

21位『北壁の死闘』 ボブ・ラングレー

アルプス三大北壁の一つ、アイガー北壁を舞台にしたサスペンス・アクション小説です。元登山家で、今は静かに暮らす大学教授のもとに、ある依頼が舞い込みます。それは、ソ連のスパイが盗み出した機密書類を、アイガー北壁の登攀ルートの途中で回収するという、あまりにも危険な任務でした。

主人公は、かつてのパートナーを殺した男への復讐心を胸に、再びアイガーの岩壁へと挑みます。スパイ組織との駆け引きや、雪崩、落石といった自然の脅威が次々と襲いかかり、息もつかせぬスリリングな展開が繰り広げられます。冒険小説の傑作として、多くの読者を魅了しています。

22位『神去なあなあ日常』 三浦しをん

大学受験に失敗し、彼女にもフラれた主人公・平野勇気が、ひょんなことから三重県の山奥にある神去村で、林業研修を受けることになる物語です。携帯の電波も届かない田舎での生活に戸惑いながらも、勇気は個性的な村人たちや、厳しいながらも魅力的な林業の世界に、次第に惹かれていきます。

この作品は登山小説ではありませんが、山と共に生きる人々の暮らしが、ユーモアたっぷりに描かれています。自然への畏敬の念や、代々受け継げられてきた伝統文化の大切さを感じさせてくれます。三浦しをんらしい軽快な語り口で、読後は爽やかな感動と笑いに包まれることでしょう。映画化もされ、人気を博しました。

23位『残された山靴』 佐瀬稔

植村直己や長谷川恒男など、ヒマラヤやアラスカの難峰に挑み、志半ばで命を落とした8人の日本人登山家の最後を描いたノンフィクション作品です。著者は、長年にわたり登山家たちを取材してきた山岳ジャーナリストの佐瀬稔。彼らの挑戦の軌跡と、なぜ山に命を懸けたのかを、深い共感と冷静な視点で綴っています。

この本は、単なる遭難の記録ではありません。極限の世界に身を投じたクライマーたちの純粋な情熱と、その栄光と孤独を描いた鎮魂歌です。残された家族や仲間たちの思いも描かれており、胸に迫るものがあります。山に魅せられた人々の生き様を深く知ることができる、貴重な一冊です。

24位『K2 嵐の夏』 クルト・ディームベルガー

1986年の夏、世界第2位の高峰K2で起きた大量遭難事故。その渦中にいた登山家、クルト・ディームベルガー自身が書き記した、壮絶な生還の記録です。この夏、K2では27人の登山家が登頂に成功しましたが、そのうち13人が嵐によって命を落とすという大惨事に見舞われました。

著者は、登頂の喜びから一転、猛烈な嵐に巻き込まれ、食料も燃料も尽きた極限状況の中で、仲間たちが次々と倒れていく地獄を経験します。生と死の境界線をさまよいながらも、奇跡的に生還した彼の記録は、自然の非情さと、人間の生命力の不可思議さを、まざまざと見せつけます。

25位『富士山噴火』 高嶋哲夫

もし、日本の象徴である富士山が噴火したらどうなるのか。その恐怖をリアルなシミュレーションに基づいて描いたパニック小説です。物語は、富士山の火山活動が活発化し、気象庁の火山噴火予知連絡会が緊急の会見を開くところから始まります。

刻一刻と迫る危機に対し、政府や研究者、そして一般市民はどう立ち向かうのか。火砕流や火山灰による被害の描写は非常に具体的で、読者はまるで現実の出来事のような緊迫感を味わうことになります。登山小説とは少し毛色が異なりますが、山の持つ恐ろしい側面を強烈に意識させられる一冊です。

26位『6days 遭難者たち』 安田夏菜

気軽な日帰り登山のつもりが、計画の変更によって道に迷い、遭難してしまった3人の女子高生。電波は途絶え、食料も尽きていく中で、彼女たちは生と死の狭間をさまよいます。現代の若者たちが、過酷な自然の中でいかにして生き抜こうとするのかを描いた、青春山岳小説です。

スマートフォンに頼りがちな現代の登山スタイルに警鐘を鳴らしつつ、極限状況に置かれた少女たちの繊細な心理描写が巧みです。それぞれが抱える悩みや葛藤が、遭難という体験を通して変化していく姿が描かれます。自然の厳しさと、人との絆の大切さを教えてくれる、感動的な物語です。

27位『聖域』 大倉崇裕

北アルプスの山中で、連続殺人事件が発生。犯人の目的は一体何なのか。そして、なぜ山を犯行の舞台に選んだのか。山岳パトロール隊員と所轄の刑事がコンビを組み、難事件の解決に挑む山岳ミステリーです。

雄大な山々の美しい描写と、そこで繰り広げられる猟奇的な殺人事件というギャップが、読者の恐怖を煽ります。犯人によって山が「聖域」として見立てられていく不気味な展開は、最後まで目が離せません。山の知識を活かした捜査や、犯人とのスリリングな攻防など、ミステリーとしての面白さが詰まった一冊です。

28位『ほま高登山部ダイアリー』 細音啓

高校の登山部を舞台にした、爽やかな青春小説です。主人公は、登山初心者の倉上ひかり。彼女が個性豊かな仲間たちと出会い、登山の魅力に目覚めていく姿が、生き生きと描かれています。

本格的な登山小説のような過酷な描写は少ないものの、登山計画の立て方や装備の選び方、山でのマナーなどがストーリーの中に自然に盛り込まれており、これから登山を始めたいと思っている人にもおすすめです。仲間たちとの友情や、目標に向かって努力することの素晴らしさを教えてくれる、心温まる物語です。

お気に入りの登山小説と共に、新たな世界の扉を開こう

ここまで、28作品もの魅力的な登山小説をご紹介してきましたが、気になる一冊は見つかりましたでしょうか。手に汗握る冒険譚、心揺さぶる人間ドラマ、そして息をのむほど美しい自然の描写。登山小説は、私たちに様々な感動と体験を与えてくれます。

一冊の本が、あなたの世界を広げ、まだ見ぬ景色を見せてくれるかもしれません。遥かなる山の頂に思いを馳せ、登場人物たちの熱い生き様に心を重ねる。そんな豊かな読書の時間をお楽しみください。さあ、お気に入りの登山小説を手に取り、壮大な物語の世界へ旅立ちましょう。