【2025年最新】伊坂幸太郎の小説おすすめランキングTOP37

伊坂幸太郎の小説世界へようこそ！その魅力と作品の選び方

『小説ヨミタイ』編集長のふくちいです。今回は、数々のベストセラーを生み出し、多くの読者を魅了し続ける作家、伊坂幸太郎さんの小説を特集します。1971年生まれ、宮城県仙台市在住の伊坂幸太郎さんは、2000年に『オーデュボンの祈り』でデビューして以来、エンターテインメント性に富んだ作品を次々と発表してきました。 2008年には『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞をダブル受賞するなど、その実力は折り紙付きです。

伊坂作品の最大の魅力は、巧みに張り巡らされた伏線が、終盤に見事に回収される構成美にあります。 軽快でユーモアあふれる会話劇、個性豊かな登場人物たち、そして仙台を舞台にした物語が多いのも特徴で、その独特の世界観は「伊坂ワールド」とも呼ばれています。 また、作品同士がゆるやかにリンクしていることもあり、ファンにとってはたまらない楽しみの一つとなっています。

どの作品から読めばいいか迷ってしまう初心者の方も多いでしょう。そんなときは、映画化された人気作や、読みやすい短編集から手に取るのがおすすめです。 また、爽快な読後感の「陽気なギャング」シリーズや、切ない青春を描いた『砂漠』など、作風で選ぶのも一つの方法です。 この記事のランキングを参考に、あなたにとって最高の「伊坂ワールド」への入り口を見つけてくださいね。

伊坂幸太郎のおすすめ小説ランキングTOP37

さあ、ここからは『小説ヨミタイ』が厳選した伊坂幸太郎のおすすめ小説を、ランキング形式で一挙にご紹介します！

デビュー作から近年の話題作まで、伊坂ワールドの魅力を存分に味わえるラインナップを揃えました。各作品のあらすじや見どころを参考に、あなたの心に響く一冊がきっと見つかるはずです。それでは、ランキングを見ていきましょう！

1位: 『グラスホッパー』

堂々の1位に輝いたのは、伊坂幸太郎さんの名を世に知らしめた殺し屋シリーズの第1弾『グラスホッパー』です。 この作品は、妻をひき逃げで亡くした元教師の鈴木が、復讐のために裏社会へ足を踏み入れるところから物語が始まります。

彼のほかにも、自殺専門の殺し屋「鯨」やナイフ使いの若き殺し屋「蝉」といった、個性的で魅力的な殺し屋たちが登場。 それぞれの視点で物語が進む群像劇のスタイルで、彼らの運命が交錯していく様にページをめくる手が止まらなくなります。 ハードボイルドな展開の中に伊坂作品らしい疾走感とユーモアが光る、エンターテインメント小説の傑作です。 映画化もされており、伊坂ワールドへの入門書としても最適な一冊と言えるでしょう。

2位: 『ゴールデンスランバー』

第2位は、2008年に本屋大賞と山本周五郎賞をダブル受賞した伊坂幸太郎さんの代表作『ゴールデンスランバー』です。 物語は、仙台での凱旋パレード中に首相が暗殺され、元宅配ドライバーの青柳雅春がその犯人として濡れ衣を着せられる場面から始まります。

巨大な陰謀に巻き込まれ、追われる身となった青柳の孤独な逃亡劇が、スリリングに描かれます。 彼を助けようとする大学時代の友人たちとの絆や、元恋人との信頼関係が物語の重要な鍵を握っており、サスペンスフルな展開の中に人間の温かさが光ります。 ビートルズの名曲が効果的に使われ、読後の余韻を一層深いものにしています。堺雅人さん主演で映画化もされた、超弩級のエンターテインメント巨編です。

3位: 『重力ピエロ』

ランキング第3位は、家族の絆と過去の闇をテーマにした感動的なミステリー『重力ピエロ』。伊坂幸太郎さんの名を広く知らしめた作品の一つで、2009年には映画化もされました。 物語は、仙台市で発生する連続放火事件と、現場近くに残される謎のグラフィティアートの謎を、兄弟である泉水と春が追う形で進みます。

兄の泉水は遺伝子を研究する会社員、そして弟の春は落書き消しを仕事にしています。 彼らには、春の出生に関わる重い過去がありました。 一見バラバラに見える放火事件とグラフィティアート、そして家族の過去が、物語の終盤で見事に一つに収束していく様は圧巻です。 ミステリーでありながら、心温まる家族の物語としても深く胸に響く傑作です。

4位: 『マリアビートル』

第4位は、殺し屋シリーズの第2弾『マリアビートル』です。 『グラスホッパー』の続編にあたり、前作の登場人物も顔を見せるため、シリーズファンにはたまらない一作となっています。 物語の舞台は、東京発盛岡行きの東北新幹線。 この疾走する密室空間に、個性豊かな殺し屋たちがそれぞれの目的を持って乗り合わせます。

幼い息子に重傷を負わせた中学生に復讐を誓う元殺し屋の木村、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」、そしてとにかく運の悪い殺し屋「七尾」。 彼らの思惑が交錯し、予測不能なドタバタ劇が繰り広げられます。 2022年には『ブレット・トレイン』としてハリウッドで映画化もされた、ノンストップエンターテインメントの傑作です。

5位: 『アヒルと鴨のコインロッカー』

第5位は、第25回吉川英治文学新人賞を受賞した名作『アヒルと鴨のコインロッカー』です。 物語は、大学進学のために仙台へ引っ越してきた主人公・椎名が、隣人の河崎と名乗る男から「一緒に本屋を襲わないか」と奇妙な計画を持ちかけられるところから始まります。

彼の目的は、同じアパートに住むブータン人留学生ドルジに広辞苑をプレゼントすること。 物語は、椎名が関わる「現在」と、2年前に起きたある事件を描く「過去」のパートがカットバック形式で進んでいきます。 一見無関係に見える二つの時間軸が、やがて一つの真実へと収束していく構成は見事の一言。ボブ・ディランの「風に吹かれて」が、切ない物語に深い余韻を残します。

6位: 『死神の精度』

ランキング第6位は、クールでどこかズレている死神・千葉を主人公にした連作短編集『死神の精度』です。 千葉の仕事は、調査対象の人間を7日間観察し、その死を「可」とするか「見送り」にするかを判断すること。 彼が仕事で地上にいる間は、決まって雨が降っています。

本作には、メーカーの苦情処理係の女性や、敵討ちを狙うヤクザなど、様々な境遇の6人の人生が描かれています。 死をテーマにしながらも、千葉のユニークなキャラクターと人間との奇妙な交流を通して、物語は重くなりすぎず、むしろ読後には温かい気持ちと爽やかさが残ります。 第57回日本推理作家協会賞（短編部門）を受賞した、伊坂幸太郎さんの魅力が詰まった一冊です。

7位: 『砂漠』

第7位は、大学生活のきらめきとほろ苦さを描いた青春小説の傑作『砂漠』です。 物語は、仙台の大学に入学した主人公・北村が、個性豊かな4人の学友と出会うところから始まります。 何事にも冷めた「鳥瞰型」の北村、軽薄な鳥井、極端な正義感を持つ西嶋、クールな美女・東堂、そして不思議な能力を持つ南。

彼ら5人が麻雀や合コン、通り魔との遭遇といった様々な出来事を通して絆を深め、成長していく4年間が描かれます。 社会という「砂漠」に出る前の、オアシスのような大学時代。 そのかけがえのない時間の光と闇を、パンクロックのビートに乗せて爽快に描き出した長編小説です。 「俺たちがその気になれば、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」という西嶋のセリフが、読者の胸を熱くします。

8位: 『陽気なギャグが地球を回す』

第8位には、痛快なクライム・エンターテインメント「陽気なギャング」シリーズの記念すべき第1作目『陽気なギャングが地球を回す』がランクイン。 この物語の主人公は、それぞれ特殊な才能を持つ4人組の銀行強盗です。

他人の嘘を見抜く名人・成瀬、人を惹きつける演説の達人・響野、天才的なスリの腕を持つ久遠、そして正確な体内時計を持つ女・雪子。 「人を傷つけない」をモットーにする彼らの強盗は、もはや芸術的。 しかし、ある日せっかく手に入れた売上を、別の現金輸送車襲撃犯に横取りされてしまいます。 奪われた金を取り戻すべく、彼らの奇想天外な奪還作戦が始まる、テンポの良い会話と伏線回収が魅力の爽快な一冊です。

9位: 『オーデュボンの祈り』

ランキング第9位は、2000年に第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伊坂幸太郎さんの記念すべきデビュー作『オーデュボンの祈り』です。 物語は、コンビニ強盗に失敗し逃走していた主人公・伊藤が、気づくと外界から150年も鎖国状態にあるという不思議な島「荻島」に流れ着くところから始まります。

その島には、嘘しか言わない画家や、殺人が許可された男、そして未来を予知し人語を操るカカシ「優午」など、奇妙な住人たちが暮らしていました。 しかし、伊藤が島に来た翌日、未来を見通せるはずの優午がバラバラに殺されてしまいます。 なぜカカシは自らの死を防げなかったのか？島の「欠けているもの」とは一体何なのか？ミステリーとファンタジーが融合した、独創的な「伊坂ワールド」の原点ともいえる作品です。

10位: 『ラッシュライフ』

第10位は、複数の物語が交錯する構成で伊坂幸太郎さんの名を知らしめるきっかけとなった『ラッシュライフ』です。 この作品では、泥棒を生業とする男・黒澤、新興宗教の教祖に心酔する青年・河原崎、不倫相手との再婚を企むカウンセラー、そしてリストラされた中年男性・豊田など、一見無関係な人々の人生が並行して描かれます。

それぞれの物語が断片的に進んでいきながら、やがて一つの大きな流れに収束していく様は、まさに圧巻。 登場人物の一人である泥棒の黒澤は、『重力ピエロ』など他の作品にも登場する人気キャラクターです。 巧緻な騙し絵のような構成で、読者を「伊坂ワールド」の迷宮へと誘う、刺激的な一冊です。2009年には映画化もされています。

11位: 『チルドレン』

第11位は、破天荒ながらも憎めない男・陣内をめぐる5つの物語が収められた連作短編集『チルドレン』です。 物語は、家庭裁判所の調査官である陣内とその後輩・武藤の視点や、陣内の大学時代の友人・鴨居の視点から描かれます。 独自の理論を振りかざし、周りを振り回すトラブルメーカーの陣内ですが、その行動の根底には確固たる信念が感じられ、不思議と人を惹きつける魅力があります。

銀行強盗に遭遇したり、万引き少年の調査をしたりと、様々な出来事を通して、彼の型破りな優しさと正義感が浮き彫りになります。 一つ一つの短編が独立しているようでいて、全体として「陣内」という魅力的な人物像を浮かび上がらせる構成は見事。読後には心が温まる、伊坂さんらしいユーモアと優しさに満ちた一冊です。

12位: 『AX アックス』

第12位は、「殺し屋シリーズ」の第3弾『AX アックス』です。 主人公は、文房具メーカーに勤めるサラリーマンでありながら、裏では超一流の殺し屋という二つの顔を持つ男「兜」。 しかし、家庭では妻に頭が上がらない恐妻家で、一人息子の克巳のことも気にかける平凡な父親としての一面も持っています。

この作品は、そんな兜の日常と非日常が交錯する連作短編集です。 家族を思うがゆえに殺し屋稼業から足を洗いたいと願いながらも、次々と舞い込む依頼から逃れられない兜の葛藤が描かれます。 シリーズ作品ですが、各話が独立しているため本作から読んでも楽しめます。 殺し屋の冷徹さと、父親としての優しさが同居する主人公の人間的な魅力が光る、エンターテインメント小説の傑作です。

13位: 『終末のフール』

第13位は、「8年後に小惑星が衝突し地球が滅亡する」と予告された世界を描く連作短編集『終末のフール』です。 物語の舞台は、滅亡まで残り3年となった仙台の団地「ヒルズタウン」。 パニックが過ぎ去り、小康状態にある世界で、人々は残された時間をどのように生きるのか。8つの物語を通して、様々な家族や個人の姿が描かれます。

息子を失った父親、出産を決意する夫婦、復讐を計画する兄弟、黙々と練習を続けるボクサーなど、登場人物たちはそれぞれの形で「終末」と向き合います。 極限状態だからこそ浮かび上がる人間の本質や、日常のささやかな幸福が胸を打つ作品です。 絶望的な状況設定でありながら、読後には不思議と希望の光を感じさせる、伊坂幸太郎さんの筆力が光る一冊です。

14位: 『アイネクライネナハトムジーク』

第14位は、伊坂幸太郎さん初にして唯一の恋愛小説集（2025年時点）『アイネクライネナハトムジーク』です。 この作品は、シンガーソングライターの斉藤和義さんからの作詞依頼がきっかけで生まれたというユニークな成り立ちを持っています。 6つの短編からなる連作短編集で、ごく普通の人々の「出会い」をテーマにした物語が紡がれます。

街頭アンケートをきっかけに出会う男女、美容師と声しか知らない客、元いじめっ子との再会。 それぞれの物語は独立しているように見えて、登場人物や出来事が思わぬところでリンクし、10年という歳月をかけて一つの大きな奇跡の物語を織りなしていきます。 劇的な事件は起こりませんが、何気ない日常に隠された小さな幸せや運命の連鎖に、心が温かくなる作品です。三浦春馬さん、多部未華子さん主演で映画化もされました。

15位: 『魔王』

第15位は、社会派なテーマに挑んだ意欲作『魔王』です。この作品は、自分が念じた言葉を他人に喋らせる「腹話術」という特殊能力に目覚めた会社員・安藤が主人公の「魔王」と、その5年後を弟・潤也の視点から描いた「呼吸」の二つの中編で構成されています。

物語の背景にあるのは、強烈な言動で国民を扇動し、支持を集める政治家・犬養の存在。 安藤は犬養にファシズムの危険を感じ、自らの能力を使って彼に立ち向かおうと決意します。 「考えろ」という言葉を繰り返し、何気ない日常に流されることの危うさを問う本作は、伊坂作品の中でも特にメッセージ性の強い一作です。 エンターテインメント性を保ちながらも、現代社会が抱える問題について深く考えさせられる作品です。

16位: 『逆ソクラテス』

第16位は、伊坂幸太郎さんのデビュー20周年記念作品であり、第33回柴田錬三郎賞を受賞した『逆ソクラテス』です。 「敵は、先入観」というキャッチコピーの通り、子供たちの視点から大人の持つ固定観念や偏見に立ち向かう5つの物語が収められた短編集です。

カンニングを疑う先生の思い込みを覆そうとする生徒たち（「逆ソクラテス」）、運動音痴ながらリレーの選手に選ばれてしまった少年の奮闘（「スロウではない」）など、子供ならではの純粋な視点とユニークな発想で逆転劇を繰り広げます。 各短編は独立しているようでいて、登場人物がリンクするなど、伊坂作品らしい仕掛けも楽しめます。 読後には爽やかな感動と、明日への活力が湧いてくるような、清々しい一冊です。

17位: 『ホワイトラビット』

第17位は、先の読めない展開が魅力のノンストップ・サスペンス『ホワイトラビット』です。物語は、仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件から始まります。 主人公の兎田孝則は、誘拐をビジネスにする犯罪組織の末端構成員。 ある日、彼の新妻・綿子が何者かに誘拐されてしまいます。

組織のボスは、妻を返す条件として、組織の金を横領した男・折尾を生け捕りにすることを命令。 兎田は折尾を追って仙台に向かいますが、そこで彼を待っていたのは、泥棒の黒澤や、秘密を抱えた一家など、一筋縄ではいかない人々との出会いでした。 複数の視点と時間軸が交錯しながら、一つの事件の真相へと突き進んでいく構成はまさに伊坂マジック。 驚きとスリルに満ちた、ジェットコースターのような物語です。

18位: 『オー！ファーザー』

第18位は、ユニークな家族設定が魅力のサスペンス・コメディ『オー！ファーザー』です。 主人公は、ごく普通の高校生・由紀夫。しかし彼の家族は、母親一人に父親がなんと四人もいるという、とても変わった構成です。

大学教師で博学な「悟」、ギャンブル好きで裏社会にも通じている「鷹」、熱血体育教師の「勲」、そして元ホストで料理上手な「葵」。 個性豊かな4人の父親たちに囲まれ、由紀夫は賑やかな毎日を送っていました。そんなある日、彼は同級生が関わる事件に巻き込まれ、何者かに監禁されてしまいます。 愛する息子を救うため、4人の父親たちがそれぞれの特殊能力（？）を結集して立ち向かう、痛快な物語です。岡田将生さん主演で映画化もされました。

19位: 『フーガはユーガ』

第19位は、特別な能力を持つ双子の兄弟の絆を描いた、切なくも力強い物語『フーガはユーガ』です。 主人公は、双子の優我（ユーガ）と風我（フーガ）。彼らには、年に一度、誕生日の日だけ「アレ」が起きるという秘密がありました。それは、2時間おきにお互いの体が入れ替わるという不思議な現象です。

幼い頃、父親からの理不尽な暴力に苦しんでいた彼らは、この能力を使って互いを守り、困難を乗り越えてきました。 やがて成長した二人は、大切な人々を守るため、その特別な力を武器に邪悪な存在へと立ち向かっていきます。 過酷な運命に翻弄されながらも、強く結ばれた兄弟の姿が胸を打つ、感動的な一作です。伊坂作品ならではの鮮やかな伏線回収も光ります。

20位: 『シーソーモンスター』

第20位は、昭和後期と近未来という二つの時代を舞台にした物語が収録されている『シーソーモンスター』です。 表題作の「シーソーモンスター」では、バブル期の日本を舞台に、元凄腕情報員の嫁・宮子と、実は同じく元工作員の姑・セツとの間で繰り広げられる熾烈な嫁姑バトルが描かれます。

一方、「スピンモンスター」では、デジタル化が進んだ近未来を舞台に、フリーの配達人・水戸が人工知能をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれていくSFサスペンスが展開。 一見無関係な二つの物語が、時空を超えて繋がっていく壮大な構成になっています。 嫁姑問題という日常的なテーマとスパイ活劇が融合したユニークな世界観が楽しめる、伊坂幸太郎さんの新たな魅力が詰まった一冊です。

21位: 『モダンタイムス』

第21位は、『魔王』の50年後の世界を舞台にした続編『モダンタイムス』です。 主人公は、恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海。彼が請け負ったある出会い系サイトの仕様変更の仕事が、やがて大きな事件へと発展していきます。 プロジェクトのメンバーが次々と不幸に見舞われる中、彼らに共通していたのは、ある特定のキーワードを検索していたことでした。

「検索から、監視が始まる。」というキャッチフレーズの通り、情報化社会の危うさをテーマにしたサスペンスフルな物語が展開されます。 前作『魔王』の登場人物も関わってくるため、シリーズファンならより深く楽しむことができます。 もちろん、単体の作品としても読み応え十分な、スリリングなエンターテインメント作品です。

22位: 『バイバイ、ブラックバード』

第22位は、太宰治の未完の小説『グッド・バイ』をオマージュして書かれた、ユニークな設定の連作短編集『バイバイ、ブラックバード』です。 主人公の星野一彦は、とある事情で「あのバス」に乗ってどこかへ連れて行かれることが決まっています。 彼は、五股をかけていた5人の恋人たちに、最後の別れを告げるための旅に出ます。

そのお別れ行脚に同行するのは、身長190cm、体重200kgという規格外の体躯を持つ謎の女・繭美。 彼女の監視のもと、星野は個性豊かな恋人たち一人ひとりと対峙していきます。 奇妙なコンビが織りなす会話劇と、どこか切なくもユーモラスな別れの数々。 「ブラックバード（不吉）」に別れを告げ、新たな一歩を踏み出す物語が、おかしみと哀愁の中に描かれます。

23位: 『ペッパーズ・ゴースト』

第23位は、伊坂幸太郎さんの作家生活20年超の集大成ともいわれる長編小説『ペッパーズ・ゴースト』です。 主人公は、他人の「明日」が少しだけ見える〈先行上映〉という不思議な力を持つ中学校の国語教師・檀先生。 ある日、彼は生徒から、猫を虐待する「ネコジゴ」を退治する二人組「ネコジゴハンター」が登場する風変わりな小説の原稿を渡されます。

その些細な出来事をきっかけに、檀先生は過去に起きたテロ事件の被害者グループが企てる、新たな事件に巻き込まれていくことになります。 現実の物語と、生徒が書く小説の中の物語。二つの世界が交錯し、読者を幻惑する巧みな構成が魅力です。 タイトルの「ペッパーズ・ゴースト」とは、舞台などで使われる視覚トリックのことで、その意味が分かったとき、物語は新たな顔を見せます。

24位: 『PK』

第24位は、「PK」「超人」「密使」という3つの中編が収録された作品集『PK』です。 それぞれ独立した物語でありながら、過去・現在・未来という時間軸の中で、登場人物や出来事がゆるやかにリンクし、一つの大きな物語を形成しています。

表題作「PK」では、ワールドカップ予選でPKを蹴ることになったサッカー選手・小津の葛藤と、彼に勇気を与えた過去の出来事が描かれます。 「超人」では、不思議なメールを受け取る男の物語が、「密使」ではタイムトラベルを思わせるSF的な物語が展開。 一つの行動が、時を超えて誰かの未来に影響を与えていくという、伊坂作品らしいテーマが込められています。読み終えた後、もう一度最初から読み返したくなる、仕掛けに満ちた一冊です。

25位: 『首折り男のための協奏曲』

第25位は、7つの物語が収録された連作短編集『首折り男のための協奏曲』です。 物語の軸となるのは、被害者の首を一瞬で折って殺害する謎の殺し屋「首折り男」と、伊坂作品ではおなじみの泥棒・黒澤。 この二人の男を巡って、様々な人々の物語が展開されます。

隣人が首折り男ではないかと疑う老夫婦、いじめに遭う中学生、そして幹事が欠席した合コンの参加者たち。 それぞれの物語で語られる出来事が、別の物語とリンクし、やがて驚きの真相へと繋がっていきます。 恋愛、怪談、復讐劇など、バラエティに富んだ物語を楽しみながら、伊坂幸太郎さんならではの巧妙なプロットを堪能できる、贅沢な一冊です。

26位: 『フィッシュストーリー』

第26位は、4つの物語が収録された短編集『フィッシュストーリー』です。 中でも表題作は、時空を超えた壮大な物語の連鎖を描いた傑作として知られています。1975年、解散を目前にした売れないパンクバンドが、最後のレコーディングで「フィッシュストーリー」という曲を演奏します。 その曲に偶然生まれた1分間の無音部分が、時を超え、様々な人々の運命に影響を与え、最終的には地球の危機を救うことになるのです。

一見すると「ほら話（フィッシュストーリー）」のような物語が、見事な伏線回収によって一つの真実へと繋がっていく展開は爽快そのもの。 他の収録作「サクリファイス」や「ポテチ」には、人気キャラクターの泥棒・黒澤も登場します。 映画化もされた、伊坂ワールドの醍醐味が詰まった作品集です。

27位: 『陽気なギャングの日常と襲撃』

第27位は、「陽気なギャング」シリーズの第2弾『陽気なギャングの日常と襲撃』です。 前作で鮮烈なデビューを飾った、嘘を見抜く名人・成瀬、演説の達人・響野、天才スリ・久遠、正確な体内時計を持つ女・雪子の4人組が再び活躍します。

今作では、4人それぞれの視点から描かれる日常の出来事が、やがて一つの大きな「社長令嬢誘拐事件」へと繋がっていく構成となっています。 刃物男騒動や幻の女探しなど、彼らが日常で巻き込まれる小さな事件が、どのように本筋の襲撃事件に絡んでくるのか。 軽快な会話のテンポとキャラクターの魅力はそのままに、より複雑に練り上げられたプロットが楽しめる一冊です。

28位: 『サブマリン』

第28位は、『チルドレン』の続編にあたる長編小説『サブマリン』です。 前作から12年の時を経て、家庭裁判所調査官となった武藤と、その上司になった陣内が再び登場します。 今作で彼らが向き合うのは、無免許運転で事故を起こした少年や、ネットに犯行予告を書き込む少年など、より複雑な背景を持つ事件です。

破天荒ながらも人間味あふれる陣内と、彼に振り回されながらも成長していく武藤のコンビは健在。 「調査官が頑張れば少年も更生する」という単純な物語ではなく、罪と罰、そして人が再生していくことの難しさと希望を、深く描いています。 読み終えた後、世界が少しだけ輝いて見えるような、心に温かい光を灯してくれる物語です。

29位: 『死神の浮力』

第29位は、『死神の精度』の続編となる長編小説『死神の浮力』です。 あのクールで音楽好きの死神・千葉が、8年ぶりに帰ってきました。 前作が連作短編集だったのに対し、今作は一つの事件をじっくりと追う長編となっています。

千葉の今回の調査対象は、娘を殺害された小説家の山野辺。 犯人とされる男・本城は、裁判で無罪判決を受け、世間から身を隠しています。 娘の復讐を計画する山野辺夫妻の前に現れた千葉は、なぜか彼らの復讐計画に同行することに。 良心を持たない冷酷な殺人犯と、娘を思う両親、そしてどこかズレている死神。三者の思惑が絡み合う、緊迫感あふれるサスペンスが展開されます。

30位: 『777』

第30位は、「殺し屋シリーズ」の第4作目となる『777（トリプルセブン）』です。 この物語の主人公は、『マリアビートル』にも登場した、とにかくツイていない殺し屋「天道虫」こと七尾。 彼が請け負ったのは、東京の超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという、簡単で安全なはずの仕事でした。

しかし、彼の不運は健在。 簡単なはずの仕事は思わぬトラブルを呼び、彼はホテルから出られなくなってしまいます。 さらにそのホテルには、驚異的な記憶力を持つ女性・紙野が身を潜めており、彼女を狙う殺し屋たちが次々と集結。 七尾は、またしても物騒な連中がうごめく騒動の渦中に巻き込まれていくのです。 限られた空間で繰り広げられる、ハラハラドキドキの展開が魅力の一冊です。

31位: 『火星に住むつもりかい？』

第31位は、ディストピア的な世界設定が特徴の『火星に住むつもりかい？』です。物語の舞台は、犯罪を未然に防ぐという名目で「安全地区」に指定された仙台。 そこでは「平和警察」と呼ばれる組織が市民を厳しく監視し、危険人物とみなした者を密告や冤罪によって公開処刑しています。

この理不尽な体制に、人々は絶望し、無力感に苛まれていました。そんな中、突如として現れたのが、全身黒ずくめの「正義の味方」。 彼は強力な磁石を武器に、平和警察に立ち向かっていきます。 このヒーローは一体何者なのか？市民たちは彼に希望を見出しますが、物語は単純な勧善懲悪では終わりません。正義とは何か、平和とは何かを読者に問いかける、伊坂幸太郎さんらしい深みのあるエンターテインメント作品です。

32位: 『ガソリン生活』

第32位は、なんと車が主人公というユニークな視点で描かれる物語『ガソリン生活』です。 物語の語り手は、望月家に愛車として迎えられた緑色のデミオ、通称「緑デミ」。 彼ら車は、人間には聞こえない排気ガスを通じてお互いに会話をすることができるのです。

緑デミは、持ち主である望月家の長男・良夫や次男・享たちの日常を見守りながら、近所の車たちとの会話を楽しんでいました。 そんなある日、良夫が運転する緑デミに、引退した有名女優・荒木翠が突然乗り込んできます。 この出来事をきっかけに、望月家は謎めいた事件に巻き込まれていくことに。車ならではの視点から描かれる家族の絆と冒険が、ユーモアたっぷりに綴られた心温まる一冊です。

33位: 『ジャイロスコープ』

第33位は、伊坂幸太郎さんの作家生活15周年を記念して刊行された、初の文庫オリジナル短編集『ジャイロスコープ』です。 書き下ろしを含む、バラエティ豊かな7つの物語が収録されています。 スーパーの駐車場で「相談屋」を営む男と青年の奇妙な一週間を描く「浜田青年ホントスカ」、バスジャック事件の“もしも”を描く「if」、謎の生物「セミンゴ」が登場する「ギア」など、伊坂ワールドの魅力が凝縮されています。

洒脱な会話、独特のユーモア、そして現実と非現実が交錯する不思議な世界観。 それぞれの短編が独立していながらも、どこかでゆるやかにつながりを感じさせる構成も健在です。伊坂幸太郎さんの多彩な魅力を一度に味わえる、ファンにはたまらない一冊と言えるでしょう。

34位: 『陽気なギャングは三つ数えろ』

第34位は、「陽気なギャング」シリーズの第3弾『陽気なギャングは三つ数えろ』です。 前作から9年ぶりとなる待望の新作で、あの伝説の4人組銀行強盗が帰ってきました。 嘘を見抜く名人・成瀬、演説の達人・響野、天才スリ・久遠、そして正確な体内時計を持つ女・雪子。彼らの軽快なチームワークは今作でも健在です。

物語は、久遠がひょんなことから助けた週刊誌記者の火尻に正体を知られてしまうところから始まります。 プライバシーをネタにするハイエナ記者の火尻は、4人を脅迫し、彼らはシリーズ最大のピンチに追い込まれます。 蛇蝎のごとき強敵を相手に、4人はどう立ち向かうのか。スリリングな展開と、読者の予想を裏切る痛快な結末が待っています。

35位: 『クジラアタマの王様』

第35位は、会社員のリアルな日常と壮大なファンタジーが融合した異色作『クジラアタマの王様』です。 主人公は、製菓会社に勤めるサラリーマンの岸。 彼が商品への異物混入クレームの対応に追われる中、不思議な夢を見るようになります。それは、自分が何かと戦っている夢でした。

ある日、彼の前に現れた一人の国会議員が「夢の中で会ったことがある」と語りかけたことから、岸の日常は非日常へと転がり始めます。 現実世界で起こるトラブルと、夢の中で繰り広げられる戦い。二つの世界がリンクし、物語は予想外の方向へ。 随所に挿入されるバンド・デシネ風のイラストも、この物語の不思議な世界観を際立たせています。 伊坂マジックの新境地ともいえる、ユニークな作品です。

36位: 『SOSの猿』

第36位は、漫画家・五十嵐大介さんとの競作企画から生まれた意欲作『SOSの猿』です。 この作品は、二人の主人公の物語が交互に語られる形で進んでいきます。一人は、副業で悪魔祓い（エクソシスト）をしている家電量販店の店員・遠藤二郎。 もう一人は、株の誤発注事件の調査中に奇妙な幻覚を見るようになるシステム会社の社員・五十嵐真。

ひきこもりの少年・眞人の悪魔祓いを依頼された二郎と、事件の謎を追う五十嵐。 一見、全く接点のない二つの物語が、『西遊記』の孫悟空をキーワードに、やがて不思議な形で交錯していきます。 「本当に悪いのは誰か？」という問いを投げかけながら、現実と幻想の境界線が曖昧になっていく独特の世界観が魅力。伊坂幸太郎さんの新たな挑戦が感じられる一冊です。

37位: 『あるキング』

ランキングの最後を飾るのは、プロ野球の天才打者の数奇な運命を描いた、寓話的な物語『あるキング』です。 舞台は、弱小プロ野球チーム「仙醍キングス」。 その熱狂的なファンである両親のもとに生まれた山田王求（おうく）は、「王が求め、王に求められる」運命を背負い、超人的な野球の才能を開花させます。

しかし、彼の才能は時として周囲との軋轢を生み、父親の過去の犯罪が彼のキャリアに影を落とします。 シェイクスピアの『マクベス』を下敷きにしており、物語には3人の魔女が登場するなど、幻想的な要素が色濃いのが特徴です。 伊坂作品の中でも特に異色作とされ、爽快な伏線回収よりも、天才の孤独や運命の皮肉といったテーマを深く掘り下げています。 新潮文庫の「完全版」では、雑誌版、単行本版、文庫版の3バージョンを一度に楽しむことができます。

ランキングを参考に、お気に入りの伊坂幸太郎小説を見つけよう

ここまで、伊坂幸太郎さんのおすすめ小説ランキングTOP37をご紹介してきましたが、いかがでしたか？

殺し屋たちが躍動するエンターテインメントから、心温まる家族の物語、そして社会のあり方を問う深遠な作品まで、その作風は実に多彩です。どの作品にも共通しているのは、魅力的なキャラクター、軽快な会話劇、そして読者の予想を鮮やかに裏切るストーリーテリングの巧みさでしょう。

このランキングはあくまで一つの指標です。あらすじや「ふくちい」の感想を読んでみて、「これだ！」と感じた作品から手に取ってみるのが一番です。あなたにとって最高の伊坂幸太郎作品との出会いがあることを願っています。