【2025年最新】車谷長吉のおすすめ小説ランキングTOP12

はじめに：鬼才・車谷長吉の文学世界へ

「反時代的毒虫」と自称し、人間の業や煩悩から逃れられない生の苦しみを赤裸々に描き続けた作家、車谷長吉。広告代理店勤務や料理人など、様々な職業を転々としながら、自身の壮絶な体験を基にした「私小説」を書き続けました。その作品は、読む者の心をえぐるような凄みと、不思議な魅力を放っています。

彼の文学は、単なる身辺雑記ではありません。自身の体験という「事実」を核にしながらも、虚構を巧みに織り交ぜることで、人間のどうしようもない性（さが）や本質をえぐり出しています。今回は、そんな鬼才・車谷長吉の作品の中から、特におすすめの小説をランキング形式でご紹介します。彼の描く唯一無二の世界に、あなたも足を踏み入れてみませんか。

【2025年最新】車谷長吉のおすすめ小説ランキングTOP12

ここからは、いよいよ車谷長吉のおすすめ小説ランキングTOP12を発表します。

直木賞を受賞した代表作から、鬼気迫る私小説、少し変わったテーマの作品まで、幅広く選びました。どの作品から読もうか迷っている方は、ぜひこのランキングを参考に、気になる一冊を見つけてみてください。

1位『赤目四十八瀧心中未遂』

車谷長吉の代表作であり、第119回直木賞を受賞した不朽の名作が『赤目四十八瀧心中未遂』です。この作品は、作者にとって初の長編小説でもあります。

物語は、会社員生活に挫折し、尼崎の場末の街に流れ着いた男が主人公です。彼はそこで、背中に迦陵頻伽（かりょうびんが）の刺青を入れた謎の女と出会い、破滅的な逃避行へと身を投じていきます。人間の業や性を赤裸々に描きながらも、その文章には気骨と品位が感じられ、読後は不思議と爽やかな余韻と生への活力が湧いてくるでしょう。2003年には映画化もされた、まさに車谷文学の金字塔です。

2位『鹽壺の匙』

『鹽壺の匙』は、車谷長吉が世に出るきっかけとなった記念碑的な作品集です。この作品で、芸術選奨文部大臣新人賞と三島由紀夫賞をダブル受賞し、彼の名が文学界に広く知れ渡りました。

収録された6篇の私小説は、作者が20年以上にわたって書き継いできたもので、そのどれもが壮絶な実体験に基づいています。狂人の父との再会を描く表題作をはじめ、家族や故郷、自身の半生を赤裸々に綴っており、その描写は読む者の胸に深く突き刺さります。車谷文学の原点ともいえる一冊であり、彼の作品世界に初めて触れる方にもおすすめです。

3位『忌中』

『忌中』は、死をテーマにした短編集です。なお、車谷長吉の死後、妻である詩人の高橋順子さんが夫の死と向き合ったエッセイ集を刊行しています。

この作品は、人間の生死という重いテーマを扱いながらも、車谷長吉特有の淡々とした筆致で描かれています。その静かな文章からは、かえって深い悲しみや愛情が伝わってきて、読者の心を揺さぶります。死にまつわる物語でありながら、どこか救いも感じさせる作品群は、車谷文学の奥深さを示しています。

4位『金輪際』

人間の欲望、特に金と女にまつわる「業」を強烈に描いた私小説集が『金輪際』です。

表題作をはじめ、収録されている作品はどれも毒気に満ちており、人間の愚かさやどうしようもなさを容赦なく暴き出します。しかし、その一方で、破滅へと向かう登場人物たちの姿には、どこか滑稽さと愛おしさすら感じられるかもしれません。人間の赤裸々な本性に触れたい、強烈な読書体験をしたいという方におすすめの一冊です。

5位『贋世捨人』

『贋世捨人』は、織田作之助賞大賞を受賞した作品で、世捨て人になろうとしながらもなりきれない男の姿を描いています。

車谷長吉の作品には、社会の底辺をさまよった自身の経験が色濃く反映されています。この作品も例外ではなく、俗世から逃れたいと願いながらも、結局は欲望や人間関係から逃れられない主人公の姿が、ユーモアとペーソスを交えて描かれます。車谷流の「世捨て」文学として、独特の味わいを持つ一冊です。

6位『漂流物』

『漂流物』は、平林たい子文学賞を受賞した短編集です。表題作「漂流物」は芥川賞の候補にもなりました。

この作品集には、人生の様々な局面で感じる虚無感や孤独、やるせなさが色濃く描かれています。まるで人生という大海をあてもなく漂うような、心もとない感覚に陥ったことのある人なら、きっと登場人物たちの姿に共感する部分があるでしょう。車谷長吉の文章の力を存分に味わえる、珠玉の短編が揃っています。

7位『武蔵丸』

表題作「武蔵丸」で第27回川端康成文学賞を受賞した短編集です。この作品集もまた、車谷長吉の真骨頂である私小説が中心となっています。

自身の体験や身近な人々の姿を通して、人間の持つ業や宿命を深く見つめます。彼の作品に一貫して流れるのは、どんな状況でも「生きる」ことから目を逸らさない、厳しいながらも誠実な眼差しです。独特の世界観に引き込まれ、つい次々とページをめくってしまう魅力があります。

8位『飆風』

『飆風』は、作者自身が強迫神経症に苦しんだ壮絶な体験を基に書かれた短編を収録しています。

幻覚や幻聴に襲われ、一日に何百回も手を洗うといった常軌を逸した行動。その狂気ともいえる精神状態が、鬼気迫る筆致で克明に描かれています。人間の精神が崩壊していく様をここまで赤裸々に描いた作品は稀有であり、読者は凄まじい読書体験をすることになるでしょう。この作品がもとになり、妻で詩人の高橋順子さんは詩集『時の雨』を刊行し、読売文学賞を受賞しました。

9位『業柱抱き』

車谷文学の核心的なテーマである「業」をそのタイトルに冠した作品が『業柱抱き』です。

この作品では、人間が生まれながらにして背負わされた宿命や、逃れることのできない業が、様々な登場人物を通して描かれます。なぜ人は苦しみ、過ちを繰り返すのか。その根源にある「業」というものについて、深く考えさせられる一冊です。重厚なテーマでありながら、物語巧者である車谷長吉の筆にかかると、読者はぐいぐいと物語の世界に引き込まれていきます。

10位『妖談』

私小説のイメージが強い車谷長吉ですが、『妖談』は怪談や不思議な話を集めた異色の短編集です。

人間の内面に潜む狂気や闇を描くことに長けた車谷長吉が、「怪談」というテーマに取り組んだ本作は、単なるホラー小説とは一線を画します。じっとりとした恐怖や、人間の心の奥底を覗き込むような不気味さが、独特の文体で描かれています。いつもとは少し違った車谷作品を読んでみたい方や、質の高い怪談を求める方におすすめです。

11位『灘の男』

『灘の男』は、作者の故郷である兵庫県姫路市飾磨区周辺を舞台にした作品を含む短編集です。リズム感のある口語体の文章が特徴で、他の作品とはまた違った読後感を味わえます。

故郷の風景や人々、そして自身の半生が色濃く反映された物語は、まさに車谷長吉の原点ともいえる世界です。地方の風土や人間模様を巧みに描き出す筆致は、まるでその場にいるかのような臨場感を読者にもたらします。私小説家としての車谷長吉の魅力を再確認できる一冊です。

12位『愚か者 畸篇小説集』

『愚か者 畸篇小説集』は、昭和から平成にかけて書かれた31篇もの短編が収められたボリュームのある一冊です。

この作品集のテーマは、その名の通り「人間の愚かさ」。新聞の三面記事のような事件から着想を得た話など、男と女のどうしようもない愚かさが詰まった物語が満載です。私小説から幻想的な恐怖小説まで、幅広い作風の作品が収録されており、車谷長吉という作家の多才さを感じることができます。どの話も短いので、少しずつ読み進めたい方にもぴったりです。

まとめ：車谷長吉の小説を読んで、人間の「業」に触れる

ここまで、鬼才・車谷長吉のおすすめ小説をランキング形式でご紹介してきました。彼の作品は、人間の醜さや弱さ、愚かさを容赦なく描き出します。その内容は決して楽しいものばかりではありませんが、だからこそ私たちの心に深く突き刺さるのです。

人生に悩み、苦しんでいるとき、彼の小説は「それでも生きていく」ための、ある種の覚悟を与えてくれるかもしれません。この記事をきっかけに、ぜひ車谷長吉の文学世界に触れてみてください。きっと、今まで知らなかった人間の奥深い一面を発見できるはずです。