皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らし...
皆さま、はじめまして。わたくし、『小説ヨミタイ』編集長の「ふくちい」と申します。夜の森で獲物を見つけるように、わたしの鋭い目で、世に埋もれた素晴らしい物語たちを見つけ出し、皆さまにお届けするのが仕事です。星の数ほどある物語の中から、あなたの心を照らす一編を見つけ出すお手伝いをさせてください。これからどうぞ、よろしくお見知りおきを。
西村賢太(にしむら けんた)は、1967年生まれ、2022年に54歳で急逝した小説家です。 自身の経験を基にした「私小説」というジャンルで、人間のダメさや愚かさを赤裸々に描き出し、「最後の私小説家」とも呼ばれました。 その作品は、暗く破滅的な内容でありながら、どこかユーモアが漂い、多くの読者を惹きつけてやみません。
中学卒業後、日雇い労働などで生計を立てながら小説を書き始め、2011年に代表作『苦役列車』で第144回芥川龍之介賞を受賞しました。 彼の作品の主人公は、ほとんどが作者自身を投影した「北町貫多(きたまち かんた)」という人物で、その壮絶な人生と屈折した内面が、明治の文豪を思わせる硬質な文体で描かれています。 今回は、そんな西村賢太の強烈な魅力に触れられるおすすめの小説をランキング形式でご紹介します。
ここからは、いよいよ西村賢太のおすすめ小説をランキングでご紹介します。芥川賞を受賞したあまりにも有名な代表作から、彼の文学の原点に触れられる初期の作品、そして創作の裏側が垣間見える随筆(エッセイ)まで、幅広く選びました。
どの作品も、人間のどうしようもない部分をえぐり出しながらも、不思議な愛おしさを感じさせるものばかりです。ぜひ、このランキングを参考にして、西村賢太文学という唯一無二の世界に足を踏み入れてみてください。
西村賢太文学の入門書として、まず手に取るべきはやはりこの『苦役列車』でしょう。2011年に第144回芥川賞を受賞した、彼の名を一躍世に知らしめた代表作です。 受賞時の型破りな会見も大きな話題となりました。
物語の舞台は1980年代後半。主人公は19歳の日雇い港湾労働者・北町貫多です。友人もおらず、稼いだ金は酒と風俗に消えていく日々。そんな貫多の唯一の慰めは読書でした。社会の底辺で生きる人間の孤独や苛立ち、そして一瞬の希望が、圧倒的なリアリティをもって描かれています。森山未來さん主演で映画化もされた作品です。
発表年 | 2010年 |
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受賞歴 | 第144回芥川龍之介賞 |
ジャンル | 私小説 |
主人公 | 北町貫多 |
貫多のどうしようもなさに呆れつつも、なぜか目が離せないんだ。この感情は一体なんなんだろう…。
『小銭をかぞえる』は、芥川賞候補にもなった作品です。作中では、主人公が同棲相手の女性の家で自堕落な生活を送りながら、金の無心と暴力を繰り返す、救いようのない日常が描かれています。
西村作品の中でも特に、男女関係のままならなさや、主人公の身勝手さが際立つ一冊です。 「秋恵もの」と呼ばれる、唯一同棲した女性との関係を描いたシリーズの代表作でもあり、壮絶でありながらどこか滑稽な会話劇に引き込まれること間違いなしです。
発表年 | 2008年 |
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収録作品 | 「小銭をかぞえる」「焼却炉行き赤ん坊」 |
ジャンル | 私小説 |
シリーズ | 秋恵もの |
ここまでクズな主人公も珍しいよね。でも、自分の中にもこういう部分があるかもしれないって思わされるんだよ。
西村賢太の出世作ともいえるのが、2007年に野間文芸新人賞を受賞した『暗渠の宿』です。 この作品で彼は文壇に確固たる地位を築きました。収録されているのは、同人誌に発表され、大手文芸誌に転載されたデビュー作「けがれなき酒のへど」と、表題作「暗渠の宿」の2編です。
特に「暗渠の宿」では、主人公・北町貫多が過去に同棲していた女性との日々を回想します。彼の暴力性や自己中心的な姿が赤裸々に描かれており、読む人によっては不快感を覚えるかもしれません。しかし、その徹底した自己暴露こそが西村文学の真骨頂であり、強烈な引力を持っています。
発表年 | 2006年 |
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受賞歴 | 第29回野間文芸新人賞 |
収録作品 | 「けがれなき酒のへど」「暗渠の宿」 |
ジャンル | 私小説 |
人間の醜い部分をこれでもかと見せつけられる…。読んでいて辛いのに、なぜかページをめくる手が止まらないんだ。
西村賢太の商業出版デビュー作が、この短編集『どうで死ぬ身の一踊り』です。 表題作は芥川賞と三島由紀夫賞の候補にもなりました。 同人誌時代に発表した処女作「墓前生活」を含む3編が収録されており、彼の作家としての原点に触れることができます。
この作品集で描かれるのは、やはり社会の片隅で生きる男のやるせない日常です。まだ何者でもなかった頃の著者の、文学への初期衝動とほとばしるような才能が感じられます。後の作品に比べて、より荒々しく、切実な叫びが聞こえてくるような一冊です。
発表年 | 2006年 |
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収録作品 | 「どうで死ぬ身の一踊り」「一夜」「墓前生活」 |
ジャンル | 私小説 |
特記事項 | 商業出版デビュー作 |
デビュー作からこの完成度ってすごいよね。彼の文学の根っこにあるものが、この一冊に詰まっている気がするな。
『二度はゆけぬ町の地図』は、4編の中短編を収録した作品集です。ここでも主人公・北町貫多の自堕落で破滅的な日々が、ユーモアを交えて描かれています。特に、同棲相手の秋恵との関係を描いた作品では、彼の身勝手さと、それでも離れられない男女の業のようなものが浮き彫りになります。
貫多の言動は、多くの人が心の奥底に隠しているであろう本音を代弁しているかのようです。 そのため、読者は彼を「どうしようもない男だ」と突き放しながらも、どこかで共感してしまう瞬間があるでしょう。西村作品特有の、笑いと哀愁が絶妙にブレンドされた一冊です。
発表年 | 2008年 |
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収録作品 | 「腋臭風呂」「貧窶の沼」など4編 |
ジャンル | 私小説 |
シリーズ | 秋恵もの |
ダメだとわかっているのにやめられない、みたいな人間の弱さがすごくリアルに描かれているんだ。わたしも気をつけないと…。
『やまいだれの歌』は、西村賢太にとって初の長編小説です。 この作品でも、主人公・北町貫多と同棲相手・秋恵との赤裸々な日常が描かれています。手放したくないはずの彼女に対し、邪推と怒りをぶつけてしまう貫多の姿は、もはや病のようです。
彼のどうしようもない人間性と、男女関係のままならなさが、これでもかというほど詳細に綴られています。 長編だからこそ味わえる、じっくりと西村賢太の世界に浸る読書体験は格別です。彼の作品にいくつか触れた後に読むと、より深く楽しめるかもしれません。
発表年 | 2013年 |
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ジャンル | 私小説(長編) |
テーマ | 同棲生活、男女関係 |
特記事項 | 初の長編作品 |
長編でこのテンションを維持するのがすごいよ。読んでるこっちの精神が削られるけど、それがまた魅力なんだよね。
2019年に発表された短編集『瓦礫の死角』は、西村文学の多様な側面を見せてくれる一冊です。 主人公・北町貫多の物語である表題作「瓦礫の死角」と「病院裏に埋める」に加え、彼が敬愛してやまない作家・藤澤清造の作品をめぐるエッセイ風の小説も収録されています。
特に注目したいのは、これまでの作風とは少し毛色の違う「崩折れるにはまだ早い」です。意外な結末が用意されており、私小説家・西村賢太の新たな一面を発見できます。 彼の作品を読み慣れたファンにとっても、新鮮な驚きがある作品集と言えるでしょう。
発表年 | 2019年 |
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収録作品 | 「瓦礫の死角」「病院裏に埋める」など4編 |
ジャンル | 私小説、短編集 |
特記事項 | 意欲作を含む多彩な内容 |
いつもの西村作品とはちょっと違うテイストの作品もあって面白いよ。こういう引き出しもあるんだって感心しちゃった!
『人もいない春』は、主人公・北町貫多の18歳の頃を描いた作品を含む短編集です。 表題作では、貫多が日雇い労働をしながら、文学への憧れと現実の厳しさの間で揺れ動く姿が描かれています。若さゆえの焦燥感や、何者にもなれない自分への苛立ちがひしひしと伝わってきます。
この作品集を読むと、『苦役列車』の19歳の貫多に至るまでの、彼の精神的な遍歴を垣間見ることができます。西村賢太の作品群は、それぞれが独立した物語でありながら、主人公・北町貫多の年代記としても読むことができるのが大きな魅力です。
発表年 | 2010年 |
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収録作品 | 「人もいない春」「廃疾かかえて」など3編 |
ジャンル | 私小説 |
主人公の年齢 | 18歳 |
18歳の頃の貫多か…。『苦役列車』の前日譚として読むと、彼の孤独がより一層胸に迫ってくる感じがするな。
『棺に跨がる』は、西村賢太の私小説の中でも、特に「死」の匂いが色濃く漂う作品集です。表題作では、主人公が自身の死について思いを巡らせる様子が、独特の乾いた筆致で描かれています。
自身の破滅的な生活を描き続けてきた西村賢太が、その先にある「死」というテーマにどう向き合ったのか。彼の作品に一貫して流れる、生への執着と、それと同時に存在する破滅願望が、この作品ではより先鋭化された形で現れています。読者の心にずしりと重く響く一冊です。
発表年 | 2012年 |
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ジャンル | 私小説 |
テーマ | 死、破滅願望 |
特記事項 | 思索的な内容が特徴 |
本作における生と死の描写からは、作者の覚悟をひしひしと感じざるを得ない。その無機質なまでの語り口は、読者の感情を静かに侵食する。
『瘡瘢旅行』(そうはんりょこう)は、西村賢太の作品の中でも特に異彩を放つ一冊です。この作品では、主人公が過去の恋愛の傷跡をなぞるように、かつて恋人と訪れた場所を再訪する旅の様子が描かれています。
「瘡瘢」とは、できもののかさぶたや傷跡を意味する言葉です。そのタイトルの通り、過去の痛みをえぐり出し、再び血を流すかのような痛々しい旅が展開されます。しかし、その痛みの先にかすかな光を見出そうとする主人公の姿に、読者は心を揺さぶられるでしょう。西村文学の持つ、切実な抒情性が際立つ作品です。
発表年 | 2009年 |
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ジャンル | 私小説 |
テーマ | 過去の恋愛、傷跡 |
タイトルの意味 | 瘡瘢(そうはん)は傷跡のこと |
過去の傷跡をたどる旅なんて、切なすぎるよ…。でも、そうしないと前に進めない時ってあるのかもしれないね。
一度聞いたら忘れられない強烈なタイトルが印象的な『蠕動で渉れ、汚泥の川を』。この作品は、西村賢太が芥川賞を受賞する以前に発表された初期の短編集です。タイトルの「蠕動(ぜんどう)」とは、ミミズなどが体をくねらせて進む動きのこと。
まさに、社会の底辺である汚泥の川を、もがき苦しみながらも必死に進んでいこうとする主人公の姿が描かれています。後の作品に見られるユーモアはまだ少なく、より生々しく、切迫感に満ちた文体が特徴です。西村賢太という作家の、文学に対する執念のようなものを感じさせる一冊です。
発表年 | 2009年 |
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ジャンル | 私小説、短編集 |
テーマ | 社会の底辺、もがき |
特記事項 | 初期の作品集 |
タイトルがすごいよね…。でも、このタイトル以上に、内容が心に突き刺さるんだ。生きることの苦しさを感じるよ。
『寒灯』(かんとう)は、西村賢太の没後に刊行された作品集です。生前に雑誌で発表されながらも、単行本に未収録だった短編が集められています。そのため、彼の創作活動の軌跡をたどる上で非常に貴重な一冊と言えるでしょう。
表題作「寒灯」をはじめ、どの作品にも西村賢太らしい、ダメな人間の哀愁と可笑しみが詰まっています。彼の死を惜しむ多くのファンにとって待望の一冊であり、これから西村作品を読み進めていきたいという読者にとっても、彼の文学世界の奥深さに触れる良い機会となるはずです。
発表年 | 2023年 |
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ジャンル | 私小説、短編集 |
特記事項 | 単行本未収録作品を集成 |
刊行経緯 | 没後刊行 |
亡くなった後もこうして新しい本が読めるのは嬉しいな。彼の言葉は、これからもずっと生き続けるんだね。
『雨滴は続く』は、西村賢太が亡くなる直前まで雑誌で連載していた、未完の遺作です。 彼が同人誌で活動していた37歳の頃、自身の作品が大手出版社の文芸誌に転載されたことをきっかけに、作家として歩み出す過程が克明に描かれています。
作家としての成功を夢見ながらも、女性関係や金銭問題で絶望と高揚を繰り返す主人公の姿は、まさに西村賢太そのものです。 未完ではありますが、1000枚にも及ぶこの大作は、一人の作家がどのようにして誕生したのかを知る上で、非常に重要な作品と言えるでしょう。
発表年 | 2022年 |
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ジャンル | 私小説(長編) |
特記事項 | 未完の遺作 |
内容 | 作家として歩み出す過程を描く |
これが最後の作品なんて…。書ききれなかった彼の思いを想像すると、胸が締め付けられるよ。
『蝙蝠か燕か』(こうもりかつばめか)は、西村賢太の創作の裏側を垣間見ることができる貴重な作品集です。この本には、小説作品に加えて、創作にまつわるエッセイや対談などが収録されています。
普段、作品の中では自堕落で破滅的な姿を見せる彼が、文学に対してどれほど真摯に向き合っていたかが伝わってきます。特に、彼が「師」と仰ぎ、没後弟子を自称する作家・藤澤清造への熱い思いは、読む者の胸を打ちます。 小説と合わせて読むことで、西村賢太という作家をより立体的に理解することができるでしょう。
発表年 | 2015年 |
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ジャンル | 小説、エッセイ、対談 |
テーマ | 創作論、藤澤清造 |
特記事項 | 作家の素顔に迫る一冊 |
作品の裏側を知ると、また小説の読み方が変わってくるよね。彼がどれだけ本気で文学と向き合っていたかがわかるよ。
西村賢太の人柄や日常をより深く知りたいなら、随筆集(エッセイ)である「日乗」シリーズがおすすめです。 その第一作目である『一私小説書きの日乗』では、芥川賞受賞直後からの約1年間の日々が、数行の日記形式で淡々と綴られています。
日々の食事や行動が記されているだけなのに、なぜか引き込まれてしまうのは、彼特有のユーモアあふれる文体だからでしょう。 小説で描かれる壮絶な世界とはまた違う、西村賢太の日常の可笑しみや哀愁に触れることができます。多くの作家も魅了された人気シリーズです。
発表年 | 2013年 |
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ジャンル | 随筆(日記) |
シリーズ | 日乗シリーズ |
内容 | 芥川賞受賞後の日常 |
日記がこんなに面白いなんてびっくりだよ!彼の日常をこっそり覗き見してるみたいで、なんだかドキドキしちゃうな。
ここまで、西村賢太のおすすめ小説をランキング形式でご紹介してきました。彼の作品は、露悪的で、時には目を背けたくなるような人間の醜さが描かれています。 しかし、その根底には常に、どうしようもない人間への、そして自分自身への、悲しくも優しい眼差しがありました。
コンプライアンスが重視される現代において、彼の作品のように人間の業を真正面から描くことは、ますます難しくなっていくかもしれません。だからこそ、今、西村賢太の文学を読むことには大きな意味があるのではないでしょうか。彼の作品に触れることで、私たちは自分の中に潜む弱さや孤独と向き合い、許しを与えられるような感覚を覚えるのかもしれません。 2022年に彼はこの世を去りましたが、その魂の叫びともいえる作品群は、これからも多くの読者の心を揺さぶり続けることでしょう。