小説初心者に読みやすい作品の魅力とは
小説初心者が最初に手に取るべき本は、文章が平易で読みやすく、ストーリー展開が早い作品です。初めての小説体験が楽しいものであれば、読書の習慣化につながります。
読書のハードルを下げるためには、自分の興味のあるジャンルや映画化・ドラマ化された作品から選ぶのがおすすめです。そうすることで物語のイメージがつかみやすく、没入感が高まります。
この記事では、文体の特徴や物語の魅力をもとに、小説初心者でも楽しめる作品をランキング形式で紹介します。まずは気軽に読める一冊から、読書の世界への第一歩を踏み出してみましょう。
小説初心者におすすめの作品ランキングTOP30
第1位 『君の膵臓をたべたい』住野よる
余命わずかな少女と主人公の青春を描いた感動作。シンプルな文体ながら深い感情表現が魅力で、読みやすさと奥深さを兼ね備えた傑作です。映画化・アニメ化され、累計300万部を突破した小説界のベストセラー。
物語は偶然、クラスメイトの「共病文庫」という日記を拾ったことから始まります。そこには彼女の秘密—膵臓の病気で余命いくばくもないという事実が記されていました。読み進めるほどに心を打つストーリー展開と、繊細な心情描写が初心者でも読書の魅力を存分に感じられる一冊です。
第2位 『コンビニ人間』村田沙耶香
芥川賞受賞作。コンビニ店員として18年働き続ける36歳の古倉恵子を通して「普通」の意味を問う作品。平易な言葉で現代社会の違和感を描き、読みやすさと共に深い問いを投げかけます。
世界40カ国以上で翻訳され、国内外で高い評価を得ている話題作です。シンプルな文体と短めの文章構成で、読書初心者でも躓くことなく読み進められます。現代社会における「居場所」や「生き方」を考えさせてくれる、読後感の良い一冊です。
第3位 『羊と鋼の森』宮下奈都
ピアノ調律師を目指す青年の成長物語。音や感情の描写が豊かでありながら、丁寧でわかりやすい文体が特徴。本屋大賞受賞作で、初心者でも感情移入しやすい優しい作品です。
主人公の外村は高校生の時にピアノ調律師の板鳥に出会い、その世界に魅了されます。音を通して人と向き合い、成長していく姿が静かに、しかし力強く描かれています。日常の中にある小さな幸せや美しさに気づかせてくれる温かな物語です。
第4位 『かがみの孤城』辻村深月
生きづらさを抱えた中学生たちが鏡の中の不思議な城で出会う物語。現代の思春期を繊細に描写しながら、ファンタジー要素も取り入れた読みやすい傑作。本屋大賞受賞作です。
「学校に行けない」という問題を抱えた主人公こころが、ある日鏡の中に現れた城に迷い込みます。そこで同じような悩みを持つ仲間たちと出会い、様々な試練を乗り越えていく姿が感動的。思春期特有の繊細な心理描写と不思議な世界観が見事に融合した作品です。
第5位 『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和
ある喫茶店で過去に戻れるという設定の物語。4つの物語を通して人間関係や別れ、再会を描いた感動作。短い文章ながら余韻が残るストーリー展開が初心者にもおすすめです。
過去に戻ることのできる不思議な喫茶店「フニクリフニクラ」を舞台に、4人の登場人物の物語が紡がれます。条件付きながらも大切な人との再会や謝罪、告白ができるという設定が読者の心を掴み、何度も読み返したくなる魅力を持っています。
第6位 『また、同じ夢を見ていた』住野よる
世界の見方が変わる連作短編集。読みやすい文体で深いテーマを伝える住野よるの特徴が遺憾なく発揮されています。挫折感を持つ読者に前向きなメッセージを届ける一冊です。
友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生など、様々な「生きづらさ」を抱えた登場人物たちの物語が描かれています。短編集形式なので読み進めやすく、一つひとつの物語が心に響くメッセージを持っています。生きることの意味を静かに問いかける、深みのある作品です。
第7位 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成
IT企業の採用選考に残った6人の大学生が繰り広げる青春ミステリー。青春と就活、そして「嘘」をテーマに展開するスリリングなストーリーが魅力。映画化も決定した話題作です。
最終選考に残った6人の大学生たちに与えられた課題は「チームを作り上げること」でした。しかし、本番直前になって突然ルールが変更され、彼らの関係性は一変します。伏線が巧みに張られ、読者を引き込む展開が魅力の一冊です。就活生だけでなく、幅広い年代が楽しめます。
第8位 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文
運命的な恋愛を描いたラブストーリー。シンプルな文体で切ない恋を描き、読者の心をつかむ作品。映画化もされた、初心者でも一気読みできる小説です。
京都の美大に通う主人公は、電車で見かけた女性に一目惚れし、意を決して声をかけます。順調に交際に発展しますが、彼女には想像もつかない大きな秘密がありました。先の展開が気になりページをめくる手が止まらなくなる、甘くせつない恋愛小説の傑作です。
第9位 『変な家』雨穴
間取りの不自然さに隠された謎を追う不動産ミステリー。YouTubeの人気シリーズを書籍化した作品で、図面を見ながら読み進める新感覚の読書体験ができます。文章がシンプルで読みやすい点も初心者に最適です。
都内の中古一軒家について相談を受けた主人公は、間取り図の不自然さに気づきます。一見普通に見える住宅の中に隠された謎の空間とは何か?単なるミスなのか、それとも何かの意図があるのか?図面と共に謎を解き明かしていく過程が新鮮で、ミステリーファンも初心者も楽しめる一冊です。
第10位 『博士の愛した数式』小川洋子
80分しか記憶が持たない数学者と家政婦の心温まる交流を描いた物語。数字を通したコミュニケーションが新鮮で、優しい文体が初心者も引き込みます。本屋大賞第1回受賞作です。
交通事故の影響で記憶が80分しか持たない元数学者の「博士」と、彼の家政婦として雇われた「私」と息子の交流を描いた心温まる物語。数式の美しさや、限られた条件の中で育まれる人間関係が静かな感動を呼びます。数学が苦手な方でも十分楽しめる、読みやすい文体が魅力です。
第11位 『桜のような僕の恋人』宇山佳佑
難病を患う少女との切ない恋愛を描いた感動作。ストレートな言葉で紡がれる純愛ストーリーが若い読者を中心に支持を集め、映画化もされました。読みやすい文体で一気に読める作品です。
カメラマンを目指す晴人は美容師の美咲に恋をします。順調に交際を始めた矢先、美咲は人の何十倍もの速さで年を取ってしまう難病を発症します。限られた時間の中での純愛を描いた作品で、シンプルな文体と丁寧な心情描写が初心者にも読みやすい小説です。
第12位 『舟を編む』三浦しをん
辞書編集者の仕事と成長を描いた物語。言葉への愛が感じられる作品でありながら、テンポよく読み進められる文体が特徴です。本屋大賞受賞作で映画化もされました。
営業部から辞書編集部に異動となった馬締光也が、新しい辞書「大渡海」の編纂に携わっていく物語。言葉への深い洞察と登場人物たちの人間模様が見事に描かれています。仕事に打ち込む姿や職場の人間関係など、共感できる要素が多く読みやすい作品です。
第13位 『阪急電車』有川浩
阪急電車の車内で偶然出会う人々の物語。短い乗車時間の中で交差する人生が温かな筆致で描かれています。日常を切り取ったエピソードが共感を呼び、初心者も読みやすい小説です。
阪急今津線の車内を舞台に、乗り合わせた乗客たちの人生が少しずつ交差していきます。わずか15分のローカル線での出来事から広がる優しいドラマに、心温まること間違いなし。有川浩特有の軽やかな文体と日常的な設定が初心者でも読みやすい魅力です。
第14位 『海の見える理髪店』荻原浩
海辺の街にある理髪店を舞台にした連作短編集。日常の中の小さな喪失と希望を描いた心温まる物語で、やさしい文体で読みやすい作品です。直木賞受賞作でもあります。
有名俳優や政財界の大物が通ったという伝説の理髪店を舞台に、様々な人々の物語が展開されます。失った大切なものや人との別れ、そして人生での新たな出会いを繊細に描き出します。父と息子、母と娘など家族の物語が中心で、心に染み入る短編集です。
第15位 『クスノキの番人』東野圭吾
願いが叶うと言われる不思議なクスノキと、その番人となった主人公の物語。サスペンスの名手である東野圭吾の作品の中でも特に読みやすく、前向きなメッセージを持つ作品です。
恩人からクスノキの番人を託された主人公。そのクスノキには「願いを叶える」という不思議な言い伝えがありました。サスペンスの要素を抑え、人間ドラマを中心に描いた温かな作品で、東野圭吾の作品を初めて読む方にもおすすめです。希望に満ちた物語に心が温まります。
第16位 『デッドエンドの思い出』宮西真冬
心の傷を抱えた人々の再生を描いた短編集。読みやすい文体でありながら、深い感情描写が読者の胸を打つ作品です。著者自身が「いちばん好きな作品」と語る渾身の一冊です。
商社で働く主人公が、主婦ブロガーの翔子と出会い、意気投合するところから物語が始まります。しかし、うまく距離感がつかめない二人の関係は徐々に変化していきます。現代の人間関係を鋭く描き出しながら、シンプルな文体で読みやすい小説です。
第17位 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈
滋賀県大津市を舞台に、奔放な成瀬あかりが周囲を巻き込んで挑戦する姿を描いた連作短編集。明るく痛快な物語が読者を前向きにし、本屋大賞受賞作でもあります。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」—そう言い出す成瀬あかりと、幼馴染の島崎みゆきを中心に展開するストーリー。M-1に挑戦したり、突拍子もない行動で周囲を振り回したりと、エネルギッシュな成瀬の姿に元気をもらえる作品です。明るく前向きな気持ちになれる一冊。
第18位 『お探し物は図書室まで』青山美智子
小さな図書室を舞台に、本との出会いを通して人生が変わる短編集。読書の魅力を改めて感じさせる作品で、読みやすい文体と心温まるストーリー展開が初心者にもおすすめです。
図書室を訪れる様々な悩みを抱えた人々が、ぶっきらぼうながらも聞き上手な司書との出会いを通して人生の転機を迎えます。本の力と人とのつながりが心を癒し、前に進む勇気を与えてくれる物語です。読書初心者にこそ読んでほしい、本の世界への招待状のような一冊。
第19位 『図書館戦争』有川浩
本を守るために戦う図書隊の物語。アクションとラブコメが絶妙に融合した作品で、テンポのよい文体と魅力的なキャラクターが読者を引き込みます。シリーズ化された人気作です。
舞台は架空の日本。メディア良化法という検閲制度から本を守るために組織された「図書隊」の活躍を描いています。主人公の笠原郁が訓練を受け成長していく姿と、恋愛要素も絶妙に織り交ぜられたストーリー展開が魅力。有川浩らしい軽妙な文体で読みやすく、読書初心者にもおすすめです。
第20位 『夜のピクニック』恩田陸
高校の歩行祭を舞台にした青春小説。一晩中歩き続ける高校生たちの姿を通して、思春期特有の感情や葛藤を繊細に描いています。本屋大賞受賞作で映画化もされました。
80キロを徒歩で巡る一泊二日の「歩行祭」を舞台に、青春の一瞬を切り取った物語。主人公と周囲の友人たちの関係性や、過去に起きた出来事が次第に明らかになっていきます。高校時代の微妙な感情や人間関係が丁寧に描かれ、若い読者だけでなく大人も共感できる作品です。
第21位 『木曜日にはココアを』青山美樹
喫茶店を舞台にした心温まる物語。毎週木曜日にココアを飲む女性客の秘密が徐々に明かされていく展開に引き込まれます。読みやすい文体と優しい世界観が初心者にもおすすめです。
喫茶店で働く主人公が「ココアさん」と呼ぶ常連客の女性。彼女は毎週木曜日に来店し、いつも同じ席で手紙を書いています。ある日、いつもと様子が違うココアさんに気づいた主人公は、その秘密に少しずつ近づいていきます。日常の小さな優しさに焦点を当てた温かい物語です。
第22位 『カラフル』森絵都
自殺した少年の体をホームステイする魂の物語。死後の世界という不思議な設定でありながら、学校生活や家族関係など身近なテーマを扱い、読みやすさと深みのあるストーリーが魅力です。
天使業界の抽選に当たった「僕」は、自殺した中学生・小林真の体に一時的にホームステイすることになります。真の生活を送りながら、彼が抱えていた問題や、自分自身が前世で犯した罪の記憶を探っていきます。不思議な設定でありながら、人間の多面性を描いた深い物語です。
第23位 『しゃばけ』畠中恵
江戸時代を舞台にしたファンタジー小説。病弱な若だんなと妖たちの交流を描いた痛快時代小説で、軽妙な文体と独特の世界観が魅力です。シリーズ化された人気作品です。
江戸の大店「長崎屋」の若だんな・一太郎は生まれつき病弱ですが、彼の周りにはいつも犬神や白沢などの妖たちがいました。ある晩、人殺しを目撃してしまった一太郎は、妖たちの助けを借りて犯人探しを始めます。江戸時代が舞台でありながら、読みやすい現代的な文体で書かれているのが特徴です。
第24位 『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦
小学生の男の子が不思議な現象の謎を追う物語。子どもの視点から見た世界が新鮮で、不思議な出来事と科学への探究心が絶妙に融合した作品です。読みやすい文体でファンタジーを楽しめます。
小学4年生のアオヤマくんが住む町に、突然ペンギンが現れる不思議な事件が発生します。好奇心旺盛な彼は研究を始め、その謎が歯科医院で働く憧れのお姉さんと関係していることを突き止めます。子どもならではの純粋な視点と探究心が魅力の、読みやすいファンタジー作品です。
第25位 『逆ソクラテス』伊坂幸太郎
学校を舞台にした短編集。カンニングから始まる壮大な作戦や、先生と生徒の関係など、独自の視点で描かれた物語が爽快感を与えます。伊坂独特のリズム感ある文体が読みやすく魅力的です。
表題作では、転校生の安斎が主人公に持ちかけるカンニングから始まる壮大な作戦計画が展開されます。学校という身近な舞台でありながら、意外な展開と爽快感のある物語が楽しめます。伊坂幸太郎特有の軽快でリズム感のある文体が初心者でも読みやすく、一気に引き込まれる作品です。
第26位 『汚れた手をそこで拭かない』芦沢央
身近な「お金」をテーマにした短編小説集。平凡な日常から思わぬ事件に巻き込まれていく登場人物たちの姿が鮮烈に描かれています。テンポよく読める文体で初心者も楽しめます。
プールの水を誤って抜いてしまった小学校教師の話や、元彼を見返したい料理研究家の物語など、全5編を収録。どの作品も「お金」をテーマにしており、日常に潜む恐ろしさやお金がもたらす人間の心理の変化が巧みに描かれています。ミステリー要素も含んだ読みやすい作品集です。
第27位 『汝、星のごとく』凪良ゆう
瀬戸内の島を舞台にした恋愛小説。環境の異なる二人の恋を繊細に描写した作品で、美しい文体でありながら読みやすさも兼ね備えています。本屋大賞受賞作です。
瀬戸内の美しい自然が広がる島で生まれ育った高校生・暁海と、家庭の事情で引っ越してきた転校生・櫂の物語。家族に振り回されながらも惹かれ合い成長していく二人の姿が繊細に描かれています。美しい情景描写と心の機微を捉えた描写が魅力で、初心者でも読みやすい文体が特徴です。
第28位 『クジラの彼』有川浩
潜水艦乗りの彼と恋する女性の物語を中心とした短編集。遠距離恋愛の切なさと甘さを描いた作品で、有川浩の軽妙な文体と青春らしい瑞々しさが魅力です。
「浮上したら漁火がきれいだったので送ります」—2カ月ぶりにそんなメールが届きます。潜水艦(クジラ)乗りの彼と主人公の女性との遠距離恋愛を描いた表題作をはじめ、爽やかな青春愛が詰まった短編集。有川浩特有の軽妙な文体と共感性の高いストーリーで読みやすい一冊です。
第29位 『祈りのカルテ』知念実希人
研修医による医療ミステリー短編集。患者が抱える謎を医学的知識と共感力で解き明かす姿が描かれています。現役医師である著者ならではのリアリティと読みやすい文体が特徴です。
純正会医科大学附属病院の研修医・諏訪野良太が、内科・外科・小児科などを回りながら、様々な患者の抱える謎を解き明かしていく物語。医療現場のリアルな描写と人間ドラマが絶妙に絡み合い、読者を引き込みます。医学的な内容も平易な言葉で説明されているため、初心者でも楽しく読める医療ミステリーです。
第30位 『月とコーヒー』角田光代
日常に潜む不思議と美しさを描いた短編集。1編が短く読みやすい構成で、寝る前の読書にもぴったりです。角田光代の繊細な観察眼と柔らかな文体が初心者にも優しい作品です。
喫茶店「ゴーゴリ」の甘くないケーキや、世界の果てのコインランドリーに通うトカゲ男など、日常の中に潜む小さな不思議を描いた24編の短編集。原稿用紙10枚程度と短めの作品が多く、忙しい合間や寝る前のひとときに楽しめます。すべての編が独立しているので、どこから読み始めても構いません。
おわりに:読書の世界への第一歩
小説初心者におすすめの30作品をご紹介しました。文体が平易で読みやすく、ストーリー展開が早い作品を中心に選びました。小説の世界は広く深いですが、まずは自分の興味を引く一冊から始めることが大切です。読書の習慣ができれば、さらに多様なジャンルや文体にも挑戦してみてください。初めの一歩を踏み出せば、素晴らしい物語の海があなたを待っています。
無理をして難解な作品から読み始めるよりも、まずは自分が楽しいと感じる本に出会うことが大事です。読書は他の誰かとの比較ではなく、自分自身の世界を広げるための素晴らしい手段です。今回紹介した作品の中から、あなたの心に響く一冊が見つかれば幸いです。