【2025年最新】秋におすすめの小説ランキングTOP30

はじめに：読書の秋を彩る一冊を見つけよう

涼しい夜風が心地よい季節になると、ゆっくりと本の世界に浸りたくなりませんか？「読書の秋」という言葉があるように、秋は集中して読書をするのにぴったりの季節です。この言葉の由来は、古代中国の詩人が「秋の夜は灯りの下で書物を開くのに良い」と詠んだことにあると言われています。

この記事では、そんな秋の夜長に楽しみたい小説をランキング形式で30作品ご紹介します。心温まる物語から、ページをめくる手が止まらなくなるミステリー、幻想的な世界に引き込まれるファンタジーまで、様々なジャンルの作品を集めました。あなたにとって、この秋を特別なものにする一冊がきっと見つかるはずです。

秋におすすめの小説ランキングTOP30

ここからは、小説専門メディア『小説ヨミタイ』編集部が厳選した、秋におすすめの小説ランキングTOP30を発表します。国内の現代作家から海外の名作、そして時代を超えて愛される文豪の作品まで、幅広いラインナップでお届けします。

それぞれの作品が持つ独特の世界観や、秋に読むからこそ深まる味わいを、あらすじやおすすめポイントと共にご紹介します。気になる作品を見つけて、あなただけの「読書の秋」を存分にお楽しみください。

1位『羊と鋼の森』宮下奈都

『羊と鋼の森』は、ピアノの調律に魅せられた一人の青年が、調律師として成長していく姿を描いた物語です。北海道の静かな森を舞台に、主人公の外村が様々な人々と出会い、ピアノと向き合う中で、自分の音を見つけ出そうと葛藤します。

この小説の魅力は、なんといってもその美しい文章表現にあります。森の風景やピアノの音色が目に浮かぶような繊細な描写は、読む人の心を穏やかにしてくれます。2016年には本屋大賞を受賞し、多くの読者の共感を呼びました。静かで澄んだ秋の空気にぴったりの、心温まる一冊です。

2位『夜のピクニック』恩田陸

高校生活最後のイベント「歩行祭」を舞台に、生徒たちが夜を徹して80kmの道のりを歩く青春小説が『夜のピクニック』です。物語の中心となるのは、ある秘密を抱えた異母兄妹の西脇融と甲田貴子。これまで一度も言葉を交わしたことのなかった二人が、この特別な一夜を通じて、少しずつ距離を縮めていきます。

友人たちとの会話、将来への不安、そして淡い恋心。高校生たちの繊細な感情が、夜の闇の中を歩き続けるという非日常的な状況で丁寧に描かれています。第2回本屋大賞を受賞したこの作品は、青春時代のきらめきと切なさが詰まった物語として、多くの読者に愛され続けています。秋の夜長に、懐かしい青春時代を思い出してみてはいかがでしょうか。

3位『蜜蜂と遠雷』恩田陸

『蜜蜂と遠雷』は、国際ピアノコンクールを舞台に、才能あふれる若きピアニストたちの挑戦と成長を描いた物語です。かつて天才少女と呼ばれた栄伝亜夜、社会人となり妻子を持つ高島明石、そして謎に包まれた少年・風間塵など、個性豊かな登場人物たちがそれぞれの思いを胸にコンクールに挑みます。

この作品の最大の魅力は、音楽が聴こえてくるかのような臨場感あふれる描写です。演奏シーンの迫力はもちろん、コンテスタントたちの心理描写も巧みで、読者はまるで会場で彼らの演奏を聴いているかのような没入感を味わえます。第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞したことでも話題となりました。まさに「芸術の秋」にふさわしい一冊です。

4位『秋の牢獄』恒川光太郎

『秋の牢獄』は、表題作を含む3つの物語が収録された短編集です。表題作「秋の牢獄」では、女子大生の藍が「11月7日」という一日を何度も繰り返す不思議な現象に囚われます。彼女は同じ状況にある「リプレイヤー」たちと出会い、終わりのない一日からの脱出を試みますが、そこには異形の存在「北風伯爵」が影を落とします。

恒川光太郎作品ならではの、美しくもどこか恐ろしい幻想的な世界観が魅力です。SF、ホラー、ファンタジーといった要素が融合し、読者を奇妙で切ない物語へと誘います。少し肌寒くなってきた秋の夜に、不思議な世界に迷い込んでみるのはいかがでしょうか。

5位『錦繍』宮本輝

『錦繍』は、ある事件がきっかけで離婚した元夫婦が、10年後に偶然再会し、手紙を交わすことで過去と向き合っていく物語です。舞台となるのは、紅葉が美しい蔵王。そこで交わされる会話をきっかけに、二人の間で往復書簡が始まります。

この小説は全編が手紙で構成される「書簡体小説」という形式で書かれており、登場人物たちの心の機微が繊細に、そして深く描かれています。手紙を通して明かされていく過去の真実や、それぞれの現在の生活。秋の美しい情景と、登場人物たちの内面の変化が重なり合い、物語に深い奥行きを与えています。人生の哀愁や人との繋がりの大切さを感じさせてくれる、秋にじっくりと味わいたい一冊です。

6位『月の満ち欠け』佐藤正午

『月の満ち欠け』は、「瑠璃」という名前を持つ女性が、何度も生まれ変わりを繰り返しながら一人の男性を愛し続ける、壮大な愛の物語です。物語は、現代を生きる小山内堅のもとに、瑠璃と名乗る見知らぬ女性が現れるところから始まります。

時代や立場を超えて繋がる魂の物語は、「輪廻転生」というテーマを扱いながらも、奇跡のような愛の軌跡を描き出しています。第157回直木賞を受賞したこの作品は、その構成の巧みさと感動的なストーリーで多くの読者の心を掴みました。月が美しく見える秋の夜に、運命や愛について思いを馳せながら読んでみてはいかがでしょうか。

7位『赤と青とエスキース』青山美智子

『赤と青とエスキース』は、一枚の絵画「エスキース」をめぐる連作短編集です。メルボルンの若き画家とその恋人の物語から始まり、時と場所を超えて、その絵に関わった人々の人生が描かれていきます。

一つ一つの短編は独立した物語として楽しめますが、読み進めるうちにそれぞれの物語が繋がり、最後に大きな感動が訪れる構成が見事です。人から人へと受け継がれていく絵画のように、優しさや愛情が連鎖していく様子が温かく描かれています。読後には心がじんわりと温かくなる、芸術の秋にぴったりの一冊です。

8位『ツナグ』辻村深月

『ツナグ』は、死んだ人との再会を一度だけ仲介する使者「ツナグ」の物語です。主人公は、祖母からその役目を引き継ぐ見習いの高校生・歩美。彼の元には、亡くした人に会いたいと願う様々な人々が訪れます。

亡き母に会いたい娘、親友に聞きたいことがある高校生、プロポーズの返事を伝えたい男性。それぞれの再会を通して、生と死、そして残された人々の思いが深く描かれています。切なくも心温まる物語は、大切な人との繋がりを改めて考えさせてくれます。人恋しくなる秋の夜に、じっくりと味わいたい感動の一冊です。

9位『とんび』重松清

『とんび』は、妻を事故で亡くした不器用な父親・ヤスが、男手一つで息子・アキラを育てる物語です。瀬戸内海に面した町を舞台に、親子の絆と、二人を温かく見守る町の人々との交流が描かれています。

ヤスの破天荒ながらも深い愛情、そしてそれに応えようとするアキラの姿は、多くの読者の涙を誘いました。昭和の時代背景も相まって、どこか懐かしく、心温まる雰囲気に包まれています。家族の愛という普遍的なテーマを描いたこの作品は、秋の夜長にゆっくりと家族に思いを馳せながら読むのにぴったりです。

10位『白夜行』東野圭吾

『白夜行』は、1973年に大阪で起きた質屋殺しから始まる、壮大なミステリー小説です。被害者の息子・桐原亮司と、容疑者の娘・西本雪穂。二人は事件後、全く別の人生を歩みますが、彼らの周囲では不可解な事件が次々と起こります。

物語は、亮司と雪穂の心理描写を一切排し、彼らの周りの人々の視点から描かれていくのが特徴です。19年間にわたる二人の軌跡を追いながら、読者は事件の真相に迫っていきます。緻密な構成と伏線、そして衝撃の結末は、まさに圧巻の一言。800ページを超える長編ですが、一度読み始めると止まらなくなること間違いなし。読書の秋にじっくりと没頭したい一冊です。

11位『博士の愛した数式』小川洋子

『博士の愛した数式』は、記憶が80分しか持たない元数学者の「博士」と、彼の世話をすることになった家政婦の「私」、そしてその息子「ルート」の心温まる交流を描いた物語です。博士が愛する数学の世界を通して、三人の間には特別な絆が生まれていきます。

博士が語る数式の美しさや、世界の真理。それらは、数学が苦手な人でも楽しめるように、詩的で分かりやすく表現されています。静かで穏やかながらも、心に深く残る感動を与えてくれるこの作品は、秋の澄んだ空気の中で読むのにぴったりです。読後には、日常の風景が少し違って見えるかもしれません。

12位『書店主フィクリーのものがたり』ガブリエル・ゼヴィン

舞台はアメリカ東海岸の小さな島にある書店。妻を亡くし、本への情熱も失いかけていた偏屈な店主フィクリーの前に、ある日突然、小さな女の子が置き去りにされます。この出会いが、彼の孤独な人生を大きく変えていくことになります。

物語には実在する様々な小説が登場し、本が人と人とを繋ぎ、人生を豊かにしてくれることを教えてくれます。ミステリーの要素もありながら、心温まるヒューマンドラマとして展開していくストーリーは、本好きにはたまらない魅力に満ちています。まさに「読書の秋」に読むためにあるような一冊です。

13位『汝、星のごとく』凪良ゆう

『汝、星のごとく』は、瀬戸内の島で育った高校生の暁海と、島に転校してきた櫂の15年間にわたる愛の物語です。心に孤独と欠落を抱えた二人は惹かれ合いますが、その関係は時間と共に入れ違い、変化していきます。

この作品は、単なる恋愛小説ではなく、生きることの自由さや不自由さ、そして人生の選択について深く問いかけます。2023年の本屋大賞を受賞し、多くの読者の心を揺さぶりました。切なくも美しい物語は、秋の感傷的な気分に寄り添い、深い余韻を残してくれるでしょう。

14位『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー

ミステリーの女王アガサ・クリスティーの代表作『そして誰もいなくなった』。孤島に集められた年齢も職業も異なる10人の男女。彼らは童謡の歌詞になぞらえて、一人、また一人と殺害されていきます。電話も船もない絶海の孤島で、パニックに陥る登場人物たち。犯人は一体誰なのか、そしてその目的とは。

「クローズド・サークル」というミステリーのジャンルを確立したとも言われる本作は、息もつかせぬ緊張感と、完璧なプロットで読者を魅了します。秋の夜長に、ページをめくる手が止まらなくなるような、本格ミステリーの傑作を味わってみてはいかがでしょうか。

15位『ハロウィーン・パーティ』アガサ・クリスティー

こちらもアガサ・クリスティーの作品で、名探偵ポアロが登場する一作です。物語は、ハロウィーン・パーティの最中に、ある少女が「わたし、殺人を見たことがある」と発言したことから始まります。その後、その少女が何者かによって殺害されてしまいます。

過去の事件と現在の殺人が複雑に絡み合い、ポアロがその謎に挑みます。ハロウィーンという季節感あふれる設定が、物語の不気味な雰囲気を一層引き立てています。秋のイベントに合わせて、ミステリーの世界に浸ってみるのも楽しい読書体験になるでしょう。

16位『贖罪』湊かなえ

『贖罪』は、静かな田舎町で起きた少女殺害事件をめぐる物語です。事件の直前まで被害者と一緒にいた4人の少女たちは、犯人の顔を見たはずなのに思い出せず、事件は迷宮入りとなります。娘を亡くした母親は、彼女たちに「犯人を見つけなさい。それができないのなら、私が納得できる償いをしなさい」と言い放ちます。

15年後、十字架を背負ったまま成長した4人に、次々と悲劇が襲いかかります。物語は4人それぞれの視点から語られ、事件が彼女たちの人生に与えた影響と、それぞれの「贖罪」の形が描かれます。後味の悪さの中に人間の本質を鋭く描く、湊かなえワールド全開の「イヤミス」作品です。物悲しい秋の夜に、人間の心の闇を覗いてみてはいかがでしょうか。

17位『異邦の騎士』島田荘司

日本の本格ミステリーを代表する作家、島田荘司の初期の傑作です。物語は、記憶を失った男が、自分探しの旅に出るところから始まります。彼は自分が何者なのか、なぜ記憶を失ったのか、謎を解き明かそうと奔走します。

そして、彼の過去が明らかになるにつれて、物語は予想もつかない方向へと展開していきます。名探偵・御手洗潔シリーズの一作としても知られていますが、単独の作品としても十分に楽しめます。読書の秋に、じっくりと腰を据えて、巧緻な謎解きに挑戦してみてはいかがでしょうか。

18位『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼

死者の言葉を伝えることができる霊媒師・城塚翡翠が、推理作家の香月史郎と共に難事件に挑むミステリー小説です。翡翠が霊視で犯人を特定し、香月が論理的に推理を組み立てて事件を解決するという、ユニークな設定が特徴です。

「このミステリーがすごい！」で第1位に輝くなど、数々のミステリーランキングを総なめにした本作の魅力は、なんといっても全ての伏線が回収されるラストの衝撃にあります。読者は必ず最初から読み返したくなるでしょう。秋の夜長に、あっと驚くようなミステリー体験をしたい方におすすめです。

19位『ひと』小野寺史宜

二十歳の秋、母親を急死で亡くし、天涯孤独になった青年・柏木聖輔が主人公の物語です。大学を中退し、途方に暮れていた彼は、偶然立ち寄った総菜屋「おかずの田野倉」で働くことになります。

店主夫婦や同僚、大学時代の仲間など、様々な「ひと」との関わりの中で、聖輔は少しずつ前を向いて歩き始めます。大きな事件が起こるわけではありませんが、日常の中にある人の温かさや優しさが丁寧に描かれており、読後には心がじんわりと温かくなります。2019年の本屋大賞で第2位に選ばれた、秋にじっくりと味わいたい心温まる一冊です。

20位『舟を編む』三浦しをん

『舟を編む』は、新しい辞書「大渡海」を作るために奮闘する、辞書編集部の人々を描いた物語です。出版社の営業部でうまく自分の能力を発揮できずにいた馬締光也が、その真面目さと粘り強さを見出され、辞書編集部に引き抜かれるところから物語は始まります。

気の遠くなるような時間と手間をかけて、一つの辞書を作り上げていく編集者たちの情熱や、言葉への深い愛情が丁寧に描かれています。何か一つのことに打ち込むことの素晴らしさを教えてくれるこの作品は、2012年の本屋大賞を受賞しました。知的好奇心が満たされる、まさに「読書の秋」にふさわしい一冊です。

21位『デッドエンドの思い出』よしもとばなな

表題作を含む5つの短編が収録された、よしもとばななの珠玉のラブストーリー集です。収録されている物語の主人公たちは、失恋や裏切り、大切な人との死別など、心に深い傷を抱えています。しかし、彼らは新たな出会いやささやかな日常の中で、小さな幸せを見つけ、再び力強く生きていこうとします。

婚約者に裏切られ、絶望の淵にいた主人公が、古民家カフェ兼ゲストハウスでの出会いを通して癒されていく表題作「デッドエンドの思い出」。どの物語も、喪失と再生というテーマを優しく描き出しており、読者の心にそっと寄り添ってくれます。秋の少し切ない気分に浸りながら、温かい涙を流したい時におすすめの一冊です。

22位『本と鍵の季節』米澤穂信

男子高校生の堀川次郎と松倉詩門が、図書委員の仕事を通して持ち込まれる「日常の謎」を解き明かしていく連作短編集です。貸し出し記録のない本や、夏目漱石の初版本の行方など、図書室を舞台にしたささやかな謎が、二人の鮮やかな推理によって解かれていきます。

派手な事件は起こりませんが、高校生らしい瑞々しい感性と、論理的な謎解きが心地よい作品です。本好きの心をくすぐる小ネタも散りばめられており、読書好きなら思わずニヤリとしてしまう場面も。秋の放課後のような、少しノスタルジックな雰囲気の中で、穏やかなミステリーを楽しみたい方におすすめです。

23位『明日の記憶』荻原浩

50歳という若さでアルツハイマー病と診断された広告代理店の営業部長・佐伯雅行が主人公の物語です。仕事も家庭も順風満帆だった彼が、徐々に記憶を失っていく恐怖と闘いながら、妻や娘との絆を再確認していく姿が描かれます。

物語は主人公自身の視点から描かれており、記憶が失われていくことへの戸惑いや絶望がリアルに伝わってきます。しかし、これは単なる闘病記ではなく、家族の愛と絆を描いた感動的なヒューマンドラマです。人生の尊さや、人を愛することの意味を深く考えさせられるこの作品は、秋の夜長にじっくりと向き合いたい一冊です。

24位『九月が永遠に続けば』沼田まほかる

『九月が永遠に続けば』は、異常なまでの愛情を持つ女性・瑠璃子の物語です。彼女の歪んだ愛は、周囲の人々を巻き込み、やがて恐ろしい結末へと向かっていきます。沼田まほかる作品特有の、人間の心の闇を抉り出すような作風が存分に発揮された一作です。

読者は瑠璃子の行動に嫌悪感を抱きながらも、なぜか目が離せなくなってしまいます。後味の悪さの中に、人間の業や愛の本質を問いかける、まさに「イヤミス」の真骨頂と言えるでしょう。タイトルが示す通り、秋の気配が深まる季節に、ゾクッとするような読書体験はいかがでしょうか。

25位『星落ちて、なお』澤田瞳子

『星落ちて、なお』は、明治時代に活躍した絵師・河鍋暁斎の娘である、とよの生涯を描いた歴史小説です。父という偉大な才能の影で、自身の絵と向き合い続けた女性の生き様が、力強く描かれています。

父の死後、彼女は「暁翠」と名乗り、父の画業を守りながら自らの道を模索します。明治という激動の時代を背景に、芸術家の苦悩や家族への思い、そして一人の女性としての自立がテーマとなっています。第165回直木賞を受賞したこの作品は、芸術の秋にぴったりの、骨太な物語を読みたい方におすすめです。

26位『傲慢と善良』辻村深月

婚約者が突然姿を消した。主人公の西澤架は、彼女の行方を追ううちに、これまで知らなかった彼女の過去や本性に触れていくことになります。物語は、現代の婚活事情や恋愛における「傲慢さ」と「善良さ」を鋭く描き出します。

自分は相手を正しく見ていたのか、そして自分自身はどう見られていたのか。恋愛や結婚における無意識の価値観を突きつけられるようなストーリーは、多くの読者の共感を呼びました。ミステリー要素も楽しみながら、自分自身の内面と向き合わされるような深い読書体験ができます。秋の夜長に、じっくりと考えさせられる一冊です。

27位『風立ちぬ』堀辰雄

『風立ちぬ』は、昭和初期の作家・堀辰雄の代表作の一つです。物語は、結核を患う婚約者・節子と、富士見高原のサナトリウムで過ごす「私」の日々を描いています。美しい自然に囲まれながらも、そこには常に死の影が寄り添っています。

フランスの詩人ポール・ヴァレリーの詩の一節「風立ちぬ、いざ生きめやも（風が立った、生きようと試みなければならない）」が、作品全体のテーマを象徴しています。生と死、愛と喪失という普遍的なテーマを、日本の情緒あふれる美しい文章で綴ったこの作品は、時代を超えて多くの人々に読み継がれています。秋の澄んだ空気の中で、静かに命の輝きを感じられる一冊です。

28位『ムーミン谷の十一月』トーベ・ヤンソン

ムーミンシリーズの中でも、少し異色の作品として知られるのが『ムーミン谷の十一月』です。物語は、ムーミン一家が旅に出て不在のムーミン屋敷に、スナフキンやフィリフヨンカ、ヘムレンさんなど、おなじみのキャラクターたちが集まってくるところから始まります。

彼らはそれぞれが心に何かを抱え、ムーミン一家に会うためにやってきます。しかし、会いたい相手は不在。彼らは戸惑いながらも、屋敷で共同生活を送るうちに、自分自身と向き合っていくことになります。晩秋の物悲しい雰囲気の中で、自己探求という哲学的なテーマが描かれる、大人向けのムーミンです。

29位『秋』芥川龍之介

文豪・芥川龍之介が描く、繊細な心理描写が光る短編小説です。物語の中心となるのは、一人の男性をめぐる姉妹の三角関係。お互いを思いやりながらも、嫉妬や諦めといった複雑な感情に揺れ動く二人の心が、巧みに描かれています。

華やかな結婚式の裏で、妹が抱える姉への劣等感と、姉が密かに抱える自己犠牲の思い。芥川龍之介ならではの鋭い人間観察と、洗練された文章が、物語に深い陰影を与えています。タイトル通り、秋という季節の持つどこか物寂しい雰囲気にぴったりの、文学の香りに浸れる一作です。

30位『草祭』恒川光太郎

『草祭』は、不思議な力を持つ一族と、彼らを取り巻く人々の物語を描いた幻想小説です。物語は、主人公の青年が、奇妙な儀式「草祭」が行われるという謎めいた村を訪れるところから始まります。

この作品もまた、恒川光太郎ならではの和風ホラーとファンタジーが融合した独特の世界観が魅力です。どこか懐かしくも不気味な村の雰囲気や、そこで行われる儀式の謎が、読者を物語の世界にぐいぐいと引き込みます。秋祭りのような、少しざわついた、それでいて神聖な空気感の中で、奇妙な物語に浸ってみてはいかがでしょうか。

おわりに：あなただけの「読書の秋」を

秋におすすめの小説ランキングTOP30、いかがでしたでしょうか。気になる一冊、読んでみたい一冊は見つかりましたか？

今回ご紹介した作品以外にも、世の中には素晴らしい小説がたくさんあります。大切なのは、今の自分の気持ちにぴったりの本と出会うことです。ぜひこのランキングを参考に、あなただけの特別な一冊を見つけて、素敵な「読書の秋」をお過ごしください。